2017年06月09日号 Vol.303

M・ペリーとJ・モリソン共演
人生の目的探求する中年4人
オフ・ブロ「エンド・オブ・ロンギング」


Jennifer Morrison and Matthew Perry. All photos by Joan Marcus


(l to r) Sue Jean Kim, Jennifer Morrison, Matthew Perry, and Quincy Dunn-Baker


大人気テレビドラマ「フレンズ」のチャンドラー役だったマシュー・ペリーが、ついにニューヨークの舞台デビューです。しかも主演だけでなく脚本も書いています。そういう意味では、話題のタネに一見の価値はある新作です。
実はこの「エンド・オブ・ロンギング」、ちょうど1年前にロンドンのウエストエンドで上演ずみ。ロンドンでは「シカゴの性倒錯」に続いて2回目の出演でしたが、終演後にはサイン待ちのファンが道路の向かい側にまであふれる人気ぶり。放送が終わって13年も経つのに、やっぱり「フレンズ」人気ってすごいなぁと再認識させられました。
今回も、オフ・ブロードウェイ作品にもかかわらず、すごい出待ちの人。観ていた人全員がいたのでは、と疑うくらいでした。
これはマシュー人気だけでなく、テレビドラマ「ワンス・アポン・ア・タイム」の主人公・白雪姫の娘役を演じているジェニファー・モリソンも出演しているからです。キャパ200人にも満たない劇場で、2人のスターを間近に見られてしまう贅沢さ。これぞオフ・ブロードウェイの魅力。出演料を気にしないスターたちもすごい。しかも、マシューはニューヨーク用に脚本を書き直していました。

「エンド・オブ・ロンギング」は、人生の意味と目的を探求し続ける40代の4人の物語。マシュー演じる主人公のジャックは、アル中で、40歳を過ぎて結婚もせず、性欲の処理はもっぱら売春婦。ある日、ジャックはたった1人の親友でカメラマンのジェフリーと待ち合わせていたバーで、彼が来るまで待ち切れず、美女2人組をナンパ。それがジェニファー演じるステファニーと、友人の製薬会社に勤めるスティービー。そこへひと足遅れて現れたジェフリー。実はスティービーから逃げ回っている彼女の恋人が、ジェフリーだったのです。
ぐでんぐでんに酔い、ステファニーの部屋で目を覚ますジャック。彼女がコールガールだとわかったジャックは金を払うと言い、ステファニーは喜んでそれを受け入れます。
ジャックは、酒が入っていない時間がないと言ってもいいほどの酒びたり。ジャックを心配したステファニーは、セラピストを予約したり、何とか彼を支えようとし始めます。しかし、ジャックはそれを拒絶するのです――。

実は、これはマシュー・ペリー自身の話。彼はアルコールやドラッグ依存症は誰にでも起き得る問題だと警告し、自分自身の当時の心の闇を告白しているのです。
01年の「フレンズ」と映画「隣のヒットマン」の撮影時の症状は、撮影中断を余儀なくされるほど深刻なものでした。無理やり再開した「フレンズ」の収録初日には、椅子から立てないほどひどい体調だったといいます。「お金持ちだからドラッグにハマれるのよ」と、思う人もいるかもしれません。でも、マシューがハマったのはドラッグストアで普通に売っている鎮痛剤でした。劇中でも、ウソをついて何とか処方箋なしに店員から薬を売ってもらおうとするシーンが出てきます。自身が経験したことですから、セリフにもウソがありません。経験者が演じているため、些細な言動にも説得力があります。
共演のジェニファーは、「ワンス・アポン・ア・タイム」の次回作・シーズン7にも登場が決まっていますが、出演は冒頭の数話だけ。あとは降板を表明しました。6年間の人気シリーズを降りて次に何をするのかというと、演劇方面にまっしぐら。来年には自身の劇団の新作「サン・ドッグズ」で演出家デビューを目指すそうです。

同劇のラスト、「粋」な終わり方にも、マシュー・ペリーのセンスの良さを感じます。ちょっと嬉しくなる、心から拍手を送ってしまう、そんなハート・ウォーミングな結末。
「壊れてしまった人」は、自分が社会不適合者だ、という自覚があります。しかし、それ以上ひどくならないよう努力しようとしても、自分の意志が働かない。人間が立ち直るためには他者の支えが必須であることを、この物語は示唆しています。
みなさんも、等身大に生きる幸せを改めて考えてみてください。(佐藤博之)

The End of Longing
■7月1日(土)まで
■会場:Lucille Lortel Theatre
 121 Christopher St.
■$30〜
www.mcctheater.org



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