2017年07月07日号 Vol.305

等身大のドラマとユーモア
小島郷史
アートの反骨精神渦巻く
D・マイケルズ


Satoshi Kojima, Last Dance, 2016
Both images © Satoshi Kojima, courtesy the artist and Bridget Donahue, NYC


Satoshi Kojima, DJ Box, 2017


Duane Michals, Rusky Business (detail), 2017. Both images Courtesy of OSMOS


Duane Michals, Zeus Strikes Trump, 2017


見れば見るほど不思議な絵。場所はどこだろう。人物は誰? 何よりもトロンとした色合いが気になる。ブルーやピンク、若草色の薄い塗り。まるで絵画表面にへばりついた膜のようだが、近づけばさまざまな細部が見て取れる。ガキガキとした直線的な人物表現。独特の影の使い方。そして、建物や人物の背景にある抽象のパターン。何やらオップアートのよう。
やっぱり不思議だ。広いロフト空間を埋める10点の油彩画。これらユニークな絵画を生み出したのは、1979年東京生まれの小島郷史(こじま・さとし)だ。初個展となったニューヨーク、そしておそらく日本でも、まだ無名のアーティストだろう。というのも、東京造形大学を卒業後、ドイツの国立デュッセルドルフ芸術アカデミーに学んだ彼。以来、14年間の異国生活が続いている。
アカデミーで師事したのが、世界トップの具象画家の一人、イギリス出身のピーター・ドイグだった。ドイグは、今展のリリースに文章を寄せ、オープニングにも駆けつけて「サトシはオーセンティック!」と太鼓判を押していた。「サトシは本物だ」という、この表現に勝る褒め言葉はないだろう。シュールな感じはキリコのよう。が、スタイルとしての郷愁や喪失のイメージではなく、どこか等身大の人物像が、時にユーモラスに、時に危うく描かれている。
例えば、アダムとイブならぬ「二人のアダム」や、いかにも女々しいポーズの若者像「ONO(オーノー)」など、性的なアイデンティティの表現なのか。あるいは、鉄道線路の枕木の上で、手を上げて別れを告げる二人の男。タイトルが「最後のダンス」と分かるや、今生の別れを超えてこの世の最後を連想してしまう。線路は確かに行き止まりだ。タイトルを含め、それぞれにドラマがある。
今展は、いま注目の若手画廊ブリジット・ドナヒューを会場に、小島の作品を扱うロンドンの画廊との共催で実現した。折しも「コンド・ニューヨーク」なる新種の試みが登場し、LESやチェルシーの画廊16軒が揃ってヨーロッパの画廊に夏の間一ヵ月、スペースを貸し出している。ブリジット・ドナヒューも貸与側の一人で、奥の部屋では、ベテラン山口はるみのイラスト展が開催中。静謐な小島の絵画に対し、こちらはどピンクの部屋と、その対比も面白い。

一方、シークエンス写真のパイオニア、ドゥエイン・マイケルズの展覧会は、アンチ・トランプを掲げたそのタイトルが興味津々。展示には、メラニアの顔ハメ看板や、レリーフ、コラージュが並び、写真以外は、仲間のアーティストの作品かと思いきや、何とすべてがマイケルズによる新作と分かって二度びっくり。そう、写真に絵の具を塗った作品はあっても、立体作品の制作は今回が初めてだという。中には、開幕1週間前に完成したスピード作品もあったようだが、85歳を迎えての新たな創作のエネルギーは、ひとえにトランプ政権登場以来の怒り、嘆き、焦燥感にあるようだ。
とはいえ、マイケルズといえば、コマ漫画のように展開する、ユーモアと機知に溢れた写真イメージが身上。とぼけた味わいの人生哲学は、同様に笑いを誘う自筆のキャプションにも現れている。特徴ある書体で書かれたそのト書きは、さながら昨今の呟きのアート。今展では、トランプに扮した本人とプーチンを思わせる男性との寸劇風の写真連作「ラスキー・ビジネス」ほか、多くの作品に生かされている。
会場のオスモス・アドレスは、雑誌「オスモス」や書籍の出版オフィスを兼ねた展示スペースで、作家を囲んでのイベント開催も活発だ。ゲイの活動家としても知られるマイケルズは、常日頃、アートと政治の関係は無意味と語っていたが、今展を巡るトークでは、フォトモンタージュの創始者で反ナチの活動で知られるベルリンのダダイスト、ジョン・ハートフィールドへの熱い想いを吐露。過激なジェスチャーと緩やかな笑いの中に、マイケルズならではのアートの反骨精神が渦巻いていた。(藤森愛実)

Satoshi Kojima
■8月4日(金)まで
■会場:Bridget Donahue
 99 Bowery, 2nd Fl.
■入場無料
www.bridgetdonahue.nyc

Duane Michals: Anti-Trump Agitprop
■8月1日(火)まで
■会場:OSMOS Address
 50 E. First St.
■入場無料
■Tel: 646-559-5347



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