2015年7月10日号 Vol.257

異端のスーパーアーティスト
迫真求める剥製師
ドクター山田武司


Photo by Leslie van Stelten



Battle of Coney Islad (Holly War of New Millenium)
(写真下)Photo by Village Voice


異端剥製のキングとも呼ばれている。トレードマークの山高帽に蝶ネクタイやループタイ、ビンテージタキシードに身を包んで出歩くからどこにいても目立つ。ブルックリン地区コニーアイランドの住人、アーティスト山田武司は本人自身がまるでミュージアムのようで、ひと言では語れないマルチなスーパーアーティストなのだ。
絵画、版画、彫刻、宝石などなど、ジャンルを超えて気の向くまま、絶え間なく制作活動を続ける山田さんだがその名を最も世界的に押し上げたのは、剥製師(Taxidermist)としての一面である。簡単に言うと「化け物作家」。これまでに6フィートの人魚のミイラ、脚8本のクモ犬、顔はウサギ下半身は鴨とアシカの尾をもった得体の知れぬ代表作のひとつ「シー・ラビット」など、生み出したモンスターは数知れない。

我々日本人には、「見世物小屋」というと、その昔の浅草や江戸川乱歩の怪しげな雰囲気を連想させるが、このアメリカではサーカスの隣にあって「サイドショー」の名の元、一世を風靡した大エンターテインメントだった。山田さんは、「空中ブランコや玉乗りなど軽業がサーカスの表芸。一方、サイドショーというのはおどろおどろしい奇怪な展示物で溢れた言わば闇の部分、けれどこれもまた人間が本来持つ好奇心を満たし、ワクワクさせてくれるものなんです」。「本物と見まごうような人魚のミイラ、南米先住民の干し首、そうかと思うとゴッホの耳とかね、もう分けが分からないのもいっぱいあります」と笑う。
テントを張る見世物小屋は時勢に押され衰退しているが、決して消滅したわけではなく、意外にもアメリカでは現代でも各地のフェスティバルやテレビ番組の中で形を変え根強い人気に支えられている。
例えば山田さん、2013年に名画放映で定評のあるAMCテレビ局制作のリアリティー番組「IMMORTALIZED」に出演。料理番組で言えば「アイアンシェフ」に当たる剥製の『鉄人』として登場し他のプロたちの挑戦を受けた。与えられたお題はギリシャの長編詩「オデッセー」。2週間でイメージを練り実際に作品を作りあげ、それを3人の審査員が採点して勝敗を決める。山田さんが出品したのは5つの頭を持ち牙を剥くドラゴンのような凄まじい怪獣。2つ目のお題は「Heaven & Hell(天国と地獄)」。山田さんは、魚の尾、6つ目、7本の角という神話の怪獣「カプリコン」を出品、抜群の出来栄えで最高点を得、12人の剥製師の中で「剥製の鉄人(Immortalizer)グランドチャンピオン」の座に輝いた。さらに、ブルックリンのベルハウスで2014年に開催された「剥製芸術展」(Taxidermy Contest)では2度目の最優秀賞を受賞している。
この異端のスーパーアーティストの過去の業績はざっと見ても、これまで世界7ヵ国で600回以上の展覧会(うち個展は50回を超える)、YouTubeにも500本以上に登場という活躍ぶりだ。

10歳で油絵を始め、16歳の時にアーティストの道を志した。1983年、大阪芸術大学の交換留学生として来米、各地でアートを学び、1987年ミシガン大学アナーバーで修士号を取得している。その後、各地で絵画を中心にアート活動を続ける。「私の絵は、2種類あってひとつはスーパーリアルな都市風景画、もうひとつは幻想や神話、錬金術などをモチーフに克明に描いていますが、絵というのはどんなに細かく描いても、写真みたいですね、という感想が戻ってくるくらい。だけど彫刻とか化け物制作では、ホンモノですか? と聞かれる。痛快ですね(笑)」
子供の頃から昆虫採集に夢中になる一方で、死んだ生き物を見つけると自分の部屋に持ち帰ってコレクションとした、というから風変わりなのは生まれつきか。が、「普通の人は生きているものは良いけど、死んだものは怖い汚いと嫌う。どちらも同じ世界なんですよ、私にとっては」。また、こうも言う。「陽の当たる好奇心と夜の好奇心と言えばいい。人間誰にもあるものだし現代アートでも、ジェフ・クーンズの『生』に対して、ダミアン・ハーストの『死』のような対比があります」
作品の中で、ひと際目立つのが東海岸に生息する生きた化石と呼ばれるカブトガニを使った「オブジェ」である。30センチ以上の甲羅にすべて人の顔を描く。「描くんじゃないんです。他人には見えなくとも僕には甲羅の上に顔が見える。作品を見てくれる人に『見えやすいように』手を加えるだけです。寿司職人が作るのではなく、素材の味を引き出すようなものです。芸術作品は真実の在り方や方向性を伝えるためのウソでしかない。芸術家の本当の仕事は人間の本源的な驚きを引き起こすことなのです」。
筆者は、力説する山田さんとサルバドール・ダリが少しダブり、軽いめまいを感じた。(塩田眞実)

ドクター山田武司オフィシャルサイト
takeshiyamada.weebly.com

「剥製の鉄人」AMCテレビ
(YOUTUBE)(参考)
https://www.youtube.com/watch?v=2iLUTs-KSXI



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