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Vol.236:2014年8月15日号
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よみタイムVol.236 2014年8月15日発行

見る者と写真との関わり
アナログ時代へのオマージュ
写真家:クリストファー・ウィリアムズ


Bergische Bauernscheune, Junkersholz / Leichlingen, September 29th, 2009. 2010. Pigmented inkjet print. Courtesy of the artist; David Zwirner, New York/London; and Galerie Gisela Capitain, Cologne © Christopher Williams

Sri Lanka, 1989 / Blaschka Model 694, 1903 / Genus no. 1318 / Family, Musaceae / Musa rosacea Jacq. /(from Angola to Vietnam*). 1989. Courtesy of the artist; David Zwirner, New York/London; and Galerie Gisela Capitain, Cologne (C) Christopher Williams

Cutaway model Nikon EM. Shutter: / Electronically governed Seiko metal blade shutter vertical travel with speeds from 1/1000 to 1 second with a manual speed of 1/90th. / Meter: Center-weighted Silicon Photo Diode, ASA 25-1600 / EV2-18 (with ASA film and 1.8 lens) / Aperture Priority automatic exposure / Lens Mount: Nikon F mount, AI coupling (and later) only / Flash: Synchronization at 1/90 via hot shoe / Flash automation with Nikon SB-E or SB-10 flash units / Focusing: K type focusing screen, not user interchangeable, with 3mm diagonal split image rangefinder / Batteries: Two PX-76 or equivalent / Photography by the Douglas M. Parker Studio, Glendale, California / September 9, 2007− September 13, 2007. 2008. Courtesy of the artist; David Zwirner, New York/London; and Galerie Gisela Capitain, Cologne (C) Christopher Williams

好きか嫌いか、分かるか分からないか、評価が大きく分かれている写真展がMoMAで開催中だ。 アメリカ人写真家クリストファー・ウィリアムズ(1956年生まれ)の回顧展である。

 6階の特別展会場に広がる展示は、草花の標本のような一連のモノクロ写真に始まり、ヨーロッパかどこかのダムとおぼしき風景写真や、明らかに雑誌の表紙をそのまま額に収めた作品もある。展示の後半では、カメラの機種やレンズの断面、あるいはカメラを操作する手指にフォーカスしたイメージが増え、何やら宣伝文句抜きの広告写真のようだ。
 中でも、赤い林檎、重ねたチョコレートの断面など、あまりにクリスプな色やリアルな表面に思わず見入ってしまうが、イメージの背後にある意味となると何とも不可解だ。何よりも、写真家にあるべきスタイルといったものが見あたらない。独特のカメラアングルや、鋭い社会的視点といったもの。
 実際、80年代から活躍する一連の写真家の中で、ウィリアムズは名前が出ているほどには特徴がなく、イメージの複雑さや物語性より、写真撮影や編集に付随するコンセプチュアルな側面を強調した作家といっていいだろう。
 今展も、真っ赤に塗られた壁、過去の展示やカタログに言及した壁面の設置など、デザイン的に面白い展開となっている。その一つが、洒落た赤の三つ折りのパンフレットだ。中には展示マップと詳細なキャプションが記されている。
 このキャプションによれば、赤いソックスの写真のタイトルは「赤の習作」であり、黄色のバスタオル姿のモデルの写真では、「コダック・カラーセパレーションガイド」がタイトルの一部となっている。この情報のあるなしで、見え方は違ってくる。
 例えば、草花の標本風の写真は、ハーバード大学自然史博物館にあるガラスの花、かの有名なブラシュカ親子の手作りによるガラスの植物模型を撮影したものだった。あらためて眺めると、最初は気づかなかった造花の部分がくっきりと目に入って来る。このように、人の目は必ずしもすべてを見ない。脳に廻った情報とともに、いわばその情報を確認しながら見ているわけだ。
 この作品にはさらに別の背景がある。4000点もある植物模型の中から選ばれた27点は、過去に国家的規模の人民殺戮が行われた国を原産地とする草花ばかり。タイトルも「アンゴラからベトナムへ」となっている。

 ところで、ウィリアムズはこうした写真を自分で撮っているわけではない。広告写真風の作品を含め、どれも商業フォトのスタジオに撮影させている。このスタジオ名や撮影日付も長いタイトルの中に含まれ、作家本人はディレクター、フォトエディターの役割を果たしている。
 こうしたアプローチは、80年代初頭の動きにあった「ピクチャー・ジェネレーション」の作家たちを思い出させる。マールボロ煙草の広告イメージを流用したリチャード・プリンスや、ウォーカー・エヴァンスの大恐慌時代の写真を再撮したシェリー・レヴィンら。が、いずれも作家自身がカメラを向けていた。その意味では、ウィリアムズの仕事はいっそうラディカルだ。
 「写真について語る場合、常に『決定的瞬間』というものが重要視されますが、僕に興味があるのは、見る人と写真との関わりなのです。僕自身が撮ることにはない」と、ウィリアムズは最近の雑誌インタヴューの中で述べている。
 父も祖父も映画産業に関わるロスの家庭に生まれ育った彼は、「ディレクター的な仕事が好きなんです。最初は記録写真の拡大などを試みていたけれど、イメージを流用するより、イメージの製造過程そのものを流用する方が面白いと思った」とも語っている。
 35年というキャリアを諦観する回顧展にしては、展示数は60余点と少ないが、その分、写真とは何かを考えさせる余白ある構成となっている。ある意味で、アナログ時代の写真制作へのオマージュと言えるかも知れない。
(藤森愛実/Manami Fujimori)

Christopher Williams:
The Production Line of Happiness
■11月2日(日)まで
■会場:The Museum of Modern Art
 11 W. 53rd St.
■大人$25、65歳以上$18、学生$14、6歳以下無料
www.moma.org