2017年11月3日号 Vol.313

豪華なキャスティング
大がかりなセットに度肝!
「タイム・アンド・ザ・コンウェイ」


(1)The Final Year, 2017. Director: Greg Barker


(2)Eric Clapton: Life In 12 Bars, 2017. Director: LILI FINI ZANUCK


芝居が始まって、あれ? これって英BBCドラマ「ダウントン・アビー」なの? という錯覚に陥りました。それほど、「タイム・アンド・ザ・コンウェイ」の印象は、「ダウントン・アビー」そっくり。
主役のコンウェイ夫人は、ドラマの母親の伯爵夫人役、エリザベス・マクガヴァーンその人だし、時代設定の第一次世界大戦も、英国であることもドラマと同じ。きっとドラマのスタッフがこの芝居を大いに参考にしたのでしょう。
シーズン6まで続いた世界中で大人気のドラマにも大きな影響を与えたに違いない演劇作品が、80年前にロンドンで初演されたこの「タイム・アンド・ザ・コンウェイ」なのです。
作品は、2幕3場構成。3場であることが、この作品の重要なカギとなっています。
第1幕第1場は、1919年の設定。第一次世界大戦の戦勝に沸く英国。物語は幸せの絶頂で始まります。未亡人のコンウェイ夫人には6人の子供があります。その長女・ケイの21歳の誕生日を一家で祝うため、ヨークシャーの別荘にゲストを招きます。古い衣裳箱を引っ張り出し、仮装用の衣裳をおのおのが好きに選んで、隣室でジェスチャー・ゲームを楽しんでいます。陽気で美しい40代のコンウェイ夫人もカルメンに仮装して参加、その場を盛り上げます。
そこへ夫人が一番可愛がっている、出征していた長男・ロビンが「英雄」として帰ってきます。明るく浪費家な母・コンウェイ夫人の歓びようは、半端ではありません。ハンサムなロビンは、家族の誰からも愛され、自慢の的。誰もが彼の将来に期待を寄せています。
6人の兄弟と友人、使用人たちの間には、恋愛模様も生まれています。使用人が密かに心を寄せていることになどまったく気づきもせずに、友人と激しい恋に落ちる兄弟がいたり、狭い家の中で繰り広げられる恋愛は、身分制度があった当時の英国社会の縮図そのもの。
その18年後を描く第2場では、一家の構図に思いも寄らない変化が及んでいるのです。
実は、この第1場から第2場へのセット転換そのものが、この芝居最大の見どころ。幸せの象徴として存在していたコンウェイ家別荘の居間には、末娘のキャロルが残されたまま、舞台後方にセットごと下がっていきます。
そして、舞台の幅とまったく同じ大きさと間取りの巨大な重々しいセットが、なんと天井から降りて来るのです! こんな大がかりなセット転換は、95年・初演時の「サンセット大通り」と、フランコ・ゼッフィレリ演出のオペラ「椿姫」や「アイーダ」の幕切れでしか見たことがありません。
新たなセットは、18年の年月が染みつき、壁紙は張替えられているものの色は褪せ、ソファやコンソールなどの家具もハゲて傷つき、シャンデリアは輝きを失って、すべてが一家の「没落」を物語っています。
背後の壁は透ける布地で、その裏には、豪奢だった18年前の別荘の様子が対比的に浮かび上がっています。1人、昔のセットに残されたキャロルは、幽霊のごとくセットの中をゆっくりとうろついています。つまり、キャロルはこの18年の間に亡くなってしまったという演出です。
第2場、家族たちは18年前同様、ケイの誕生日に別荘に集まってきます。しかし、母親の浪費により、一家は没落。財産の「ざ」の字も残っていません。
「人生はすばらしい!」と、第1場で感嘆していた長女・ケイは職業婦人として独立はしましたが、独身のまま、39歳になっても作家になる夢を果たせていません。結婚にいちばん楽観的だった次女・ヘイゼルは、友人で裕福なアーネストと結婚しています。だが、夫はサディスト。彼の一挙手一投足にビクつく生活を送っています。三女・マッジも、社会主義者になる夢をあきらめ、家族みんなのお気に入りだった長男・ロビンは、妻はいるものの、地方回りのセールスマンをして生計を立てている始末です。変わらないのは、第1場でも平静さを保っていた次男・アランだけ。どうしてこのような道程をたどることになってしまったのか。その種明かしになるのが、続く第2幕なのです。
第2幕は、第1幕第1場が終わった、同じ場所、1919年直後から始まります。もちろん、死んだキャロルも再び登場。すべての始まりは、あの夜。現実から目を背け、夢見ることをやめない母親を鏡にして育った子供と、反面教師にして育った子供がたどった人生。観客全員が納得せざるを得ないエピソードが展開していきます。
物語りを彩るのは、マクガヴァーン以外にも、長男を「ピピン」の主役マシュー・ジェームス・トーマス、次男を「マチルダ」でトニー賞を受賞したガブリエル・エバート、次女の夫・アーネストに「ハンズ・オブ・ゴッド」主役のスティーブン・ボイヤーなど、ブロードウェイの主役がズラリ。四女のアナ・バリシニコフも、映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」でアカデミー賞にノミネート。本作でブロードウェイ・デビューと、ある意味、今一番豪華な舞台になっています。
ブロードウェイでしか実現できない贅沢な舞台を観に、あなたも出かけてみませんか?(佐藤博之)

Time and the Conways
■11月26日(日)まで
■会場:American Airline Theatre
 227 W. 42nd St.
■$39〜
■上演時間2時間15分
www.roundabouttheatre.org



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