2015年12月19日号 Vol.268

牢獄・サンタンジェロ城から
脱出せよ!
「KOMNATA・クエスト」


イタリアはローマのテヴェレ川右岸にある城塞、サンタンジェロ城(聖天使城)。すぐ近くにあるバチカンのサン・ピエトロ大聖堂と、秘密の通路でつながっているといわれる。この城は西暦135年に建築が開始され、139年完成の頑丈な石造りの建物。400年代には軍事施設となり、14世紀以降は牢獄として使われていた。何千もの人が冤罪で投獄され、極刑判決を食らっていたと伝えられる。著名な彫刻家・ベンヴェヌート・チェリーニ(1500〜71年)も、1538年から2年間ここに幽閉されていた。
 一説に、これら無罪の死刑囚たちは、一人ひとり謎の地下牢に閉じ込められ、部屋のあちこちに隠された謎と暗号を1時間以内に解けば、脱獄が許されたという。皆、ことごとく失敗し極刑に処される中、唯一脱獄に成功したのが、チェリーニだった。
 この「脱出クエスト:サンタンジェロ城」は、まさにその牢獄時代のチェリーニの実話(多分)に、フィクションを加えて再現した脱出ゲームだ。プロデュースするのは、「KOMNATA・クエスト」という、新手の参加型エンタメ創作集団。参加者は囚人となり、鍵を探し、暗号を解き、ドアを開け、脱獄を試みる。最低3人からのグループ参加で協力して脱獄する。与えられた時間はきっちり1時間。さあ、君たちは脱獄して自由を勝ち取るか、それとも極刑に処されるか・・・。(ささききん)
よみタイム突撃隊
見事に脱獄「大成功?」「大失敗?」の巻!


「脱出クエスト:サンタンジェロ城」。要は、閉じ込められた牢獄から、暗号を解読しながら何とかして脱出するというアクション・ゲームだ。最低3人で参加。よし、じゃぁ行くぞ! と、よみタイム編集部突撃隊としてK、M、そして筆者の3人が挑戦した。与えられた1時間で、果たして我々は脱獄できたのか・・・。

えええ〜怖いよぉ!
だって真っ暗だし・・・

 ロングアイランドシティーの一角にあるアートセンター/スクールの地下に、我々が脱獄すべき牢獄・サンタンジェロ城はあった。
 このテの脱出クエスト・ゲームは比較的新しいエンターテインメントだ。皆、「部屋をなんとかして出ればいいんでしょう?」くらいの理解しかしていない。もちろん、よみタイム突撃隊も例にもれず。
 我々のすぐ前に体験したラテン系のグループが、「最初は怖いけど、でも面白いわよ」と、ネタバレを気遣いながら忠告してくれた。「え、怖いの?」とすでに半分ビビっているM。正直、何が起こるのかさっぱり分からないので、「あのぉ〜、何をすればいいんでしょうか…」と、あとの2人も実は恐る恐る。迎えてくれたナイスなスタッフと我々の会話ときたら、こんな調子だった。
スタッフ「サンタンジェロ城が牢獄として使われていたのはご存じですか?」
3人「・・・知りません・・・」
スタッフ「使われていたんです。あなた方は今日は囚人です。脱獄してください。カメラやスマホなどの機械類、その他荷物はすべてお預かりします」
K「財布も?」
スタッフ「財布を持って入っても買うものないですよ」
K「・・・・・・」
筆者「老眼鏡は?」
スタッフ「・・・どうぞお持ちください」
M「出られなかったら?」
スタッフ「みなさんの様子はモニターで見ています。必要に応じて、こちらからヒントを出します」
3人「ヒントってどんな?」
スタッフ「だからヒントです。注意して聞いてください」

コスプレ+目隠し
「ゲ、ナニコレ?」

 そして、ドンゴロスのような囚人服まで着せられた。まさかコスプレまでするとは思っていなかったので、ここらで3人は「ガハハ!」となるも、頭からフードを被せられ、目隠し状態になると一気に不安に。だって何も見えない! 3人が1列に並び、前の人の肩に両手を乗せて、導かれるままムカデのように真っ暗な中を歩いた。空気で、狭い部屋の中に進み入ったのは分かった。この時点では漆黒の闇である。

ギギギギ〜ガシャ〜ン・・・

 我々を導いたスタッフが背後の扉を閉めると、ゲームが始まった。
 まずは本能で、フードを頭から外す。すると薄暗いその空間は@%#$!!
 「ゲゲゲ!」
 「?、どうすんのこれ?」
 「オレ、動けへんでぇ〜」
 これ以上はネタバレするので書かないが、とにかくまず皆で「協力」しなければならない。Mの機転と、Kの入れ知恵、筆者の姑息な棒さばき(?)で、この最初の関門は割とスムーズにいったと思う。所要時間約5、6分か。これで、3人が一応自由な状態で、一つの部屋に一緒に閉じ込められた形になった。
 何しろ薄暗い。全員老眼が入っているのもあって、部屋の中がよく見えない。いろいろ壁に書いてあるのだが…見えない! 
 「暗すぎる!」
 「なんも見えんやんか・・・」
 「電気プリ〜ズ」
などと悪態をつきながら、何とか周囲の様子を探る3人。ここで突然、闇の中から、「ワット・イズ・イット・ザッツ・キーピング・ユー・ふんにゃらかんにゃら〜」と、くぐもった声が響いた!
 「え?え?何?何?何?」
 「何か言った?」
 「もう一回プリ〜ズ」

・・・シーン・・・


 「え〜〜わかんなぁ〜い」
 「結構、難しいな」
 「暗すぎる!」

「ワット・イズ・イット・ザッツ・キーピング・ユー・ふんにゃらかんにゃら〜」


再び幽霊のような声が聞こえて…ゾゾ〜〜ッ。

闇から響く幽霊の声
ヒントをよく聞け!

実はこの「幽霊の声」が、外でモニターしてくれているスタッフからの「ヒント」。慣れてしまえば薄気味悪さはなくなるのだが、初めて聞いた時は身の毛がよだった。
 さて、ヒントを貰った我々はサクサクと謎を解き…とはいかなかった。実は、この部屋だけでタイムリミット1時間の半分は無駄にした。次の部屋に通じているだろう扉を発見しても、それを開ける方法が分からない。あっちに行き、こっちに行き、あーだ、こーだと知恵を絞るが、解決の糸口が見つからない。
 「マジでこの部屋から出られないかも・・・」
 「もっと簡単だと思ってた」
 「もう飽きた〜」
 予想以上に手強い。反省点は(ネタバレにならない範囲で書けば)部屋のあちこちに置いてあった「電池式ろうそく」に気付かなかったこと。壁に書かれた文字が「暗くて読めない!」と延々と苦しんだのだ。最終的にKが「お、こんなもんあったわ」と持ってきたその「電池式ろうそく」。
 「何よ、見えるじゃん!」
 「何でこれに気がつかないかなぁ〜」と、3人で地団駄踏んで悔しがっても後の祭りだった。だが、よく見えるようなった後も、あの幽霊のような声のヒントが延々と繰り返されなければ、我々はこの部屋を出ることができなかった。

 そしてついに2番目の部屋へ。ほっとすると同時に、この辺になると制限時間が気になって焦ってくる。
「ふんにゃらかんにゃら〜」
 モニターしているスタッフも我々を助けようと「幽霊ボイス」でヒントをくれる。が、これがまた英語の上に聞き取りにくい・・・。
 「何て言った?」
 「わからへん・・・」
 「Say Again Please」
「ふんにゃらかんにゃら〜」
 リクエストにはちゃんと応えてくれる優しい「幽霊ボイス」。
「ふんにゃらかんにゃら〜」
 「Say Again〜」
「ふんにゃらかんにゃら〜」
 「わかった!」
 「あれや!」
 なんとか必要な一言を聞き分け、扉を開けて最後の部屋へ。いよいよ最終出口も近い?!

 この時点で、残り時間は多分10分くらいしかなかっただろう。我々が部屋に入った途端、「幽霊ボイス」もヒントを連発。
「はにゃくしゅないと〜〜てれにゃ〜にゃら〜」
 とにかく、皆で聞き耳を立て分析を試みる。しかしどう考えても、最後の暗号はキリスト教の知識が必要だ。我ら3人は揃って宗教が苦手な不信心者。Kと筆者がオロオロする中、Mは水を汲んで、何かにぶっかけてと奮闘するも、ついに時間切れ。
 その通り! よみタイム突撃隊は見事、脱獄に失敗したのだった。

これはハマる!
クセになる面白さ

 終了後、スタッフのお姉さんが種明かしをしてくれたのだが、我々は最後のドアが開くまで、まだまだ遠い道のりだったことに気付かされただけだった。
 「お姉さん、この暗号は我々みたいな不信心者にはわからんわ」とお手上げし、みんなで豪快に笑ってこのクエストは幕を閉じた。「いろんな人が来るけど、あんたたち面白かったわ!」と変に感心されたが、実は我々3人もチョー満喫したクエストだった。
 「今回の反省点を生かして、次は殺人の謎解き密室脱出クエストに挑戦しよう!」と、Mは早くも次に向けて鼻息も荒い。確かに、クセになりそうな面白さがある。
 後から聞くと、脱獄に成功するグループと失敗するグループの割合は半々だそうだ。そして、最初の独房を出られないグループがたま〜にいるという。独房を出ても、我々3人が苦労した最初の部屋から一歩も出られないグループもいるそうだ。

 この脱出クエストをプロデュースする「KOMNATA・クエスト」は、この他にも全く異なるテーマとトリックの脱出ゲームを市内で展開中。「KOMNATA」は、ロシア語で「部屋」という意味。いずれのクエストも、いくつもの密室を抜ける、スリリングなゲームだ。友達とワイワイ協力してできるので、決して孤独なゲームではない。自分の意外な本質を発見できる、自分発見体験にもなるはずだ。

 総論。このクエストは「人間は協力し合ってこそ生きのびることができる!」という格言を含んだ奥のふか〜いゲームだ。「新年号にふさわしい高尚なテーマだ!」と大満足の、よみタイム突撃隊だった。


KOMNATA Quest
「Saint Angelo's Castle」
■会場:44-02 23rd St.
 Long Island City, NY
※ 会場入り口はビル正面左手から
■$30(1人)
■参加人数3〜5人
※16歳以上。12〜15歳は親または保護者の合意書が必要。この他の注意事項はウェブサイト参照
■予約:オンラインまたは電話
 komnataquest.com/newyork
 TEL: 347-551-4808
■最寄り駅:Court Sq.駅
 地下鉄E/M/G/7番線



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