
短い女優歴だが、今回の舞台は自分自身の女優として見極めるのに、大きな賭けでもあった。
「どこまでやれるかわからなかった」という。「緊張はしなかった」が客の反応に驚いた、初日と2日目は友人、知人も多く駆けつけ最初から、笑いの渦。ところが3日目はアメリカ人などが多く「あれ?笑いがない。どうしたんだろう」と首をひねったそうだ。でも、2場、3場で笑いが起き「ああ、よかった」と胸をなで下ろす。初めて経験するライブは、毎日が初日みたいなものなのだ。
「毎日、反省の連続でしたが、インプルーブしているのがわかった」という。「テクニカル的には初日よりも数段最終日の方が良かったが、観ている方の感じ方は別ですから」。
終わってみれば、多くの人から「英語のセリフもほぼ完璧」「物おじしていない」など高い評価を得た。これまで、何度もオーディションを受けては落ち、落ちては受けの連続だっただけに「大きな手応え」を掴んだ舞台だったようだ。
池端家の次女として78年3月28日に東京・世田谷区で生まれた。本名は池端絵美子。芸能人ファミリーで育ったが、子どものころから「女の子の遊びはイヤ」と屋外で男の子と泥んこになって遊んでいた。
慶應幼稚舎から慶應女子高校と超エリート学校で学んだ。といっても習い事はクラシック・バレエを「反強制的にやらされた」程度で芸能に結びつくものは何もなかった。そのバレエも3年間の約束で止めた。時々テレビ番組で家族と一緒の出演依頼がきたが「私はイヤ」とはねつけていたほど。
「親は私をなだめるのに大変だったみたい」と笑う。小学校の時の夢は英語の先生になることだった。作文で「将来の夢」にも「英語の先生」と書いている。
これまで、夏休みなどアメリカのサマーキャンプに参加してアメリカ人との生活にも親しんでいた。わずか3週間のキャンプだったが、終わるころには友だちと英語で会話出来るくらい上達していた。そんな環境体験もあって高校を卒業する時、「大学はアメリカで」と心に決めていた。しかし両親から「大学だけは出て」と説得されたという。
慶應義塾大学では文学部哲学科に籍を置き、倫理学を学んだ。
大きな転機は大学3年で
自主制作映画に主演
大きな転機になったのは、大学3年の時。仲の良い友人が自主制作で映画を作ることになり「オーディションに参加して」と頼まれた。恋愛ものの長篇映画「ひわまりのぬり絵」という映画だったが、いきなり主役に抜てきされた。
「最初はカメラの前に立つののもイヤで恥ずかしかったけど、やっていくうちに、段々おもしろくなり、快感になってきたんですよ」。この作品は2回上映され、話題となった。友人たちも「いいじゃない。やってみたら」と女優の道を後押ししてくれた。
アメリカにも行きたいが、はっきりした進路を決めていなかった。「心理学やアートも勉強したし、中途半端な気持ちでアメリカに行っても危険」と女優の道を選んだ。
「テアトル・ド・ポッシュ」というプロダクションに所属した。三浦友和、佐藤浩市、吉行和子、それに山村美智などがいた。最初の仕事は、00年フジテレビの連続ドラマ「涙をふいて」(江口洋介主演)だった。小学校の先生役だったが「もう、へたくそで2度と見たくないって感じ」と笑う。
その後、武田真治と共演した「SFホイップクリーム」でフィリピンで撮影、話題の一作になった。3年間、日本で仕事をしていたが、以前は漠然としていた女優業を「本当のものにしたい」と04年、思いきってニューヨークにやってきた。
コネなく自ら道を開く
父・加山雄三から激励の電話が
別に親のコネクションがあったわけでもない。ニューヨーク・フィルムアカデミーやアクティング・スタジオなどで演技を学ぶなど、全てが自分から、道を開いた。
友人の紹介で「ケン・パーク」というエージェントを探し、所属した。しかし、仕事は日本と違ってすぐ入ってくるわけではない。アジア人など100人ほど所属しているエージェント。たまに入ってくる仕事は広告関係などだ。テレビや映画の仕事はオーディション情報誌などを見て、自ら応募する。何十回と受けては落ちる。「根比べですね」とクスクスと笑う。
今回の舞台は、大きなステップになった。自分自身「自信がついた」という。母親は数回観に来たが、父親は、日本での仕事があって観ることができなかった。
初日の前日に加山さんから携帯に留守番電話が残っていた。
「えみ、おめでとう。行けなくてごめんね。前の日に電話すると緊張しているからと思って、初日が終わったあとに電話しました」という内容だ。ところが、日本とは14時間の時差があるから、加山さんの電話はニューヨーク時間で初日の前日だった。すぐコールバックして「初日はあしたよ」というと「あれー、そうか。時差あったんだよね」と楽しそうに話す。
目標としている女優は?と聞くと「大きなこといっていいですか?」と口に手をあてがいながら恥ずかしそうに「どんな演技でもこなせるメリル・ストリープです」。
えみさんは、これからもオーディションを受けまくり、アメリカで「日本人女優」として大きな花を咲かせてくれるかも知れない。