1回照らしたら「I」、2回つづけて照らしたら「LOVE」、3回つづけて照らしたら「YOU」。これが「アイ ラブ ユー」のコード。光で愛のメッセージを送りましょうと、ヨーコがスクリーンの前で、デモンストレーションをすると、映画館の会場の暗い空間に、豆粒のような赤い光が、無数の星のように一斉にまたたいた。
胸に下げた巻たばこサイズのハンデイなフラッシュライトで、満席の観客がそれぞれコード通りにメッセージを発信したのだ。「ONOCHORD」の文字の入ったフラッシュライトによる愛の一斉射撃。
壇上にいるヨーコも、観客に向けてコードを発信している。
この夜、開催中のレイキャビック映画祭で、ドキュメンタリー映画「ONOCHORD DOCUMENTARY」と「US vs. John
Lennon」が上映された。
映画では、ジョン・レノンとオノ・ヨーコが、ベトナム戦争の続いた60年代から70年代にかけて行った反戦イベントや、危険な反戦活動家として二人の入国を拒んだ当時のアメリカ政府との闘いが、生々しい記録フィルム、関係者たちのインタビューにジョンのサウンドを絡めて編集されている。
ロングヘアのジョンと花を持ったヨーコ。当時の反戦ポップ文化に与えた二人のインパクトは大きかった。反戦といっても、ジョンは愛を歌い、弱い者をいたわる、平和を求める音楽家だったし、ヨーコは想像力で世の中に平和革命をもたらそうというコンセプチュアル・アーテイストだ。二人の才能が若者たちの心を捉え、当時その影響でベトナム戦争を失敗させる可能性もあったことがよく分る。
興奮の最中に、突然起こる暗転と耳を突く続けざまのピストルの音。誰もが深い暗い記憶の穴を覗いた瞬間だった。ジョンの死。何日も続く追悼の大集会。
「はい、アイ ラブ ユー、アイ ラブ ユー」。
パッ、パパツ、パパパツ・・暗い映画館の空間で気ままに点滅する小さな光は、ジョンの死に誰よりも衝撃を受けたヨーコが到達した、ジョンとのコミュニケーション手段になのかも知れない。
新しい形の平和アート
ジョンもどこかでオノコード
不信と憎しみが蔓延し、欲にからんだ取り引きが横行して、感動することがめったにない。希望のなくなったこの時代に、ヨーコのアートが生んだ新しい平和アート。
オノコード。ジョンもどこかで一緒に赤い光で愛のコードを発しているようだった。
「私たちがこの時代に生まれているのは、偶然ではありません。穏やかな愛に満ちた平和な地球の実現という使命があるからです。その使命はまだ達成されていません。ジョンのスピリットも今このレイキャビックに来ていて、みんなを励ましてくれています。ここに来られなかった人たちにも、この使命を伝えて、早く達成しましょう。さあ、オノコードで、アイ ラブ ユー」。
ベレー帽を斜めにかぶったヨーコは、平和運動の闘士としてはあまりにもかわいらしい。しかし、平和は、猛々しい戦いでは得られない。北風と太陽の話のように。
白地に黒い文字で「IMAGINE PEACE」のボタンも配られた。60年代ポップの再来だ。イマジンは、ヨーコのアートの大事なコンセプト。「みんなが平和をイメージするだけで、現実世界が全部変わる。革命が起こるでしょう」
「WAR IS OVER, if you want it.」は、有名なヨーコのコンセプト。とてもシンプルだ。停戦に手続きはいらない。