2016年12月23日号 Vol.292

いにしえの悪魔が棲む「和の国の迷路」
時を超え、迷い込んだ子供を救い出せ
「ハカイナの迷路」

いにしえの日本には、武士に課された残虐なしきたりがあった。それは、悪魔が棲む迷路に挑み、己の勇知を証明すること。無事出られればよし、出られなければそこに棲む悪魔の餌食となり、二度と「この世」に戻ることはなかった…。
 これは日本を題材にした脱出ゲーム「Maze of Hakaina(ハカイナの迷路)」のイントロだ。プロデュースするのは、「KOMNATA・クエスト」というロシア系の参加型エンタメ創作団体。シナリオを書いたアラ・アリキーナさんもロシア人。数年前に京都を旅行し、伏見稲荷を訪れた際の超自然的・神秘的な感覚を忘れることができず、その時のゾクゾク感をこの脱出ゲームで再現したのだという。もちろん全てフィクションだ。
「ハカイナ」とは、悪魔が棲む迷路を支配する女帝の名前。この際、それらしく「破戒奈」とでも当て字をしようではないか。
この迷路にはその昔、小さな男の子が迷い込み、出てこられなくなっていた。ゲームに参加する者の使命は、いにしえの武士のごとく迷路に挑み、いくつもある密室の謎を解きながら迷路を進み、悪魔と対峙し、失われた男の子の肉体と魂を救い出すことだ。
女帝・破戒奈は、日没とともに迷路に棲む悪魔を目覚めさせるという言い伝えがある。夜の闇に目覚めた悪魔は、迷い込む人間をからかいながら追い詰め、拷問にかける。迷路脱出のために、挑戦者に与えられた時間は1時間。さあ、あなたは男の子を救い出し、無事「この世」に戻ってこられるか。
(ささききん)


「脱出クエスト・Maze of Hakaina(破戒奈の迷路)」(注・「破戒奈」は本紙の当て字)。題名からはさっぱり分からないが、テーマは日本。よみタイムとしては無視できない。2016年の本紙正月号で、同じ「KOMNATA・クエスト」による「脱出クエスト・サンタンジェロ城」に挑戦し、我々は見事脱出に失敗している。今度こそはと、同じメンツ(M、K、S)で挑んだのだが、果たして…。

この脱出ゲームをプロデュースする「KOMNATA・クエスト」の「KOMNATA」とは、ロシア語で「部屋」の意味。参加者は、いくつもの密室を謎解きしながら抜け出さなければならない。ニューヨーク市内各所で、異なるテーマの脱出クエストが展開されている。
「破戒奈の迷路」の基本ルールは、参加者は14歳以上、2〜5人のグループであること。一人では参加できないし、実際しない方がいい。このゲームは、チームで協力してこそのものだ。ぶっちゃけ、途中でケンカする可能性も高いことを前もって警告しておく。


迷路に入る時は3人
出てくる時は4人

この和の国の迷路、金融街の一角にある。M、K、Sの編集部トリオは二度目の脱出クエストとあって、ルールは熟知していた。持ち物は全てフロントにある「海賊風宝箱」に入れてロックし、携帯電話も財布も迷路には持って入れない。持って入っていいのはメガネだけ。スタッフが常に中の様子を見ていて、要所要所でヒントをくれる。
そして、このクエストでは3人それぞれキツネのお面をかぶる。これ、特に脱出に必要な道具ではない。シナリオを書いたアラさん曰く、「京都伏見稲荷で見た狐地蔵の姿が、今も脳裏に焼きついている」と。
我々の手前、薄気味悪かったとは言わなかったが、きっとさぞ薄気味悪かったのだろう。「不思議空間を盛り上げる要素」として、参加者にお面をつけてもらうことにしたのだそうだ。確かに狐憑きみたいで多少気味悪い。
さて、アラさんに導かれて薄暗い迷路の扉を開ける。真っ暗。次の瞬間、ほのかな灯りが灯されると、そこにはキツネのお面をかぶったアラさんの顔が。ここでまずは3人「ぞーっ」となる。そして、先ほどまでの陽気なアラさんはどこへやら、まるで経文でも唱えるような調子で次のようなことを語り出した。
「あなたがたの使命は、その昔ここに迷い込んだ男の子の肉体、またはその一部、または魂を救い出すことです。長い年月が経っています。男の子が今どんな姿になっているかはわかりません。あなたがたは、この迷路に入る時は3人。でも、出てくる時は4人です…」
最後の「3人が4人」の下りがいやに薄気味悪い。Mが途端にビビり出すと同時に、アラさんは振り返って外に出てしまい、我々3人が迷路に残された。ビビるわりに嬉しそうなM。
薄暗い部屋の壁は、漢字や仮名で床から天井まで埋め尽くされていた。
S「漢字に意味はないんやったな」
M「そ。読まなくていいって言ってた」
S「でもなぁ、私ら下手に読めるしなあ、なんか気になるんやけどなぁ」
K「せやから読まんでエエて!」
ロシア人制作スタッフにとって漢字はハードルが高かったらしく、迷路に入る前に「意味はないから読むな」と釘を刺されていたのだ。が、1時間のクエストを通してSは愚かにも何度読もうとしたことか。


花か、カケラか?
仲間割れも興のうち

最初の部屋を出るのにどのくらい時間がかかったのだろう。
M「ぎゃー、鬼の顔!」
K「こっちにも別の鬼がおるで」
S「げ、こわー。でっかい顔やなあ」
2つの鬼(悪魔か?)の間を行ったり来たりと立ち往生状態の3人。この段階で3人の脳裏には「また脱出失敗に終わるかも」という不安の影が。
すると、待ってました!These demons are
フンニャラカンニャラ〜
と、ついにヒントが聞こえた。悪魔の呪文にしか聞こえないのだが、これをちゃんと聞いて理解するかどうかに脱出の成功がかかっている。
1つ目のヒントではらちがあかず、確か2つ目のヒントをもらい、それを何度か繰り返されたと記憶している。ネタバレしない程度にいうと、英語でのヒントに「花」と「カケラ」という単語が含まれているのだが、焦った状態で聞くとこの2つの単語が似たように聞こえるのだ。
K「花をどないせいうねん」
S「花ちゃうで、カケラやいうてへんか?」
ここでまた同じヒントが聞こえてくる。
S「ほら、カケラやで。花ちゃうで」
K「やかましい。ヒントが終わる前に喋るな」
S「ヒント終わってから喋ったやろ」
M「あんたたちうるさい」
……ったく。つい小競り合いになるのがこのクエストの面白いところだが、喧嘩している暇はないのだ。試行錯誤の末、3人はなんとかこの部屋を出た。
回転式の扉を開け、次の部屋に入るか入らないかのとき、突然Mが「ギャー!」。闇を切り裂く叫び声。ついに出たか、男の子の幽霊!と思いきや、Mが扉のあっち側にいるKの顔を見て叫んでいたのだった。
S「びっくりさせんといてや……」
さて、この部屋ではなぜか3人は思い思いに行動し始め、それぞれに脱出への糸口を見つける。が、やはりヒントなしでは難しかった。オロオロしているとまた悪魔の呪文(ヒント)が聞こえてきた。何度か繰り返してくれるのだが、わからん。
M「今なんて言った?」
S「ウィ・ドント・アンダスタンド・イングリッシュウ〜〜〜」
K「キャン・ユー・リピート・プリーズ?」
ああ、情けなや。3人とも英語はそこそこできるはずなのに、少しくぐもった声の呪文ヒントは聞き取りづらい。しかも、部屋にある英語のヒントも、句読点がない文章に加えて、薄暗くて読みにくい。
でも、この悪魔の呪文は意外と優しく、辛抱強く繰り返してくれるからご安心あれ。言葉のハンデもご愛嬌なのがこのクエストなのだ。


破戒奈の拷問だ!
死ぬかと思った一瞬

さて、いよいよ大詰め。何番目の部屋だったろうか。ついに我々は男の子の亡骸を発見する。何が怖いって、この男の子だ。鬼や悪魔どころの話じゃない。
M「ちょっと、これキモイわぁ」
S「この子、今晩夢に出てきそう」
キモイ、キモイと言いながら、男の子を救い出して最後の部屋へ。ここでは危うく拷問にかけられて殺されそうになったとだけ言っておこう。インディアナ・ジョーンズ魔宮の伝説か! まさか本当に殺されるとは思わなかったが、それなりの危機感を煽られたのは確か。スリルまんてーん。
K「お、これが破戒奈やな」
S「☆☆☆そっくりやな」
殺されそうになって命拾いした安堵感もあって、ここでちょっと笑いが起こる。そう、女帝・破戒奈は、みんなが知っている誰かにそっくりなのだ。誰かは言わない。このクエストに行って、自分の目で見てちょーだい。

お忘れなくは
男の子の救出

最後の謎解きでも、我々は老眼で苦労した。それまでとりあえず殊勲賞だったKは、力尽きたか「もう知らん」状態。MとSが床に座り込んでああでもない、こうでもないを繰り返した。そのうちに聞こえてくる日本の童謡が背筋を冷たくする。
そして、なんと我々は所用時間5分を残して脱出に成功したのだ! しかも、あの一番怖かった男の子の肉体(と魂も)をちゃんと一緒に連れてきた。これはMの手柄。前の部屋を出るときに、「この子も連れて行ってあげよう」と、連れてきたのだ。アラさんは言う。
「8割の挑戦者は脱出に成功しますが、皆さんの使命は脱出だけではありません。男の子の救出なんです。その点で、よみタイムさんは優秀でした」
めでたし、めでたし。
ついでに言えば、アラさんは宮崎駿の大ファン。そいえばこのクエストの迷路デザイン、ちょっと「千と千尋の神隠し」っぽいかもしれない。

よみタイム読者・割引プロモーション!
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★インターネット予約の場合
komnataquest.com/newyork
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※割引プロモーションが適用されるのは「KOMNATA Quest」のNY市内ロケーションのみ(2016年12月19日現在)

KOMNATA Quest
●Maze of Hakaina
■会場:160 Pearl St., suite 202
(bet. Wall & Pine Sts.)
■地下鉄:2、3番 Wall St.駅
■料金:一人$28
■14歳以上 2〜5人のグループ参加
※他の注意事項はウェブサイト参照
komnataquest.com/newyork

★他ロケーション(2016年12月19日現在)
●Saint Angelo's Castle
■会場:44-02 23rd St, LIC
■料金:一人$28 ■16歳+ 3〜6人

●Christmas Thieves(120分)
■会場:160 Pearl St., suite 202
■料金:一人$100 ■16歳+ 2〜7人

●The Robbery, That Changed the World
■会場:52 Kent St., Brooklyn
■料金:一人$28 ■14歳+ 2〜6人

●The Impossible Murder Mystery
■会場:52 Kent St., Brooklyn
■料金:一人$28 ■16歳+ 3〜6人

●Chinese Jewelry Box
■会場:52 Kent St., Brooklyn
■料金:一人$28 ■10歳+ 2〜6人

●Boxed Up(45分)
■会場:52 Kent St., Brooklyn
■料金:一人$32 ■16歳+ 2〜2人

●Doctor Frankenstein
■会場:52 Kent St., Brooklyn
■料金:一人$28 ■12歳+ 2〜6人

●Suicide Hotel
■会場:52 Kent St., Brooklyn
■料金:一人$28 ■16歳+ 3〜6人

●7 sinful pleasures
■会場:52 Kent St., Brooklyn
■料金:一人$28 ■18歳+ 2〜6人


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