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よみタイムVol.95 8月15日発行号
連載:VOL.17
 

中東旅日記

NY在住ソーシャルワーカー 澤田 美希子


タメルザの土産屋のマルワン少年
無料で案内、お昼もごちそうに

【06年チュニジアを訪ねて(七)】

【前回までのお話】チュニジア一大きなオアシスで有名なドゥーズは、サハラ砂漠の玄関口。ラクダツアーに参加した後は、またドゥーズに戻って来た。
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 ドゥーズを訪れた後は、トゼールに。ドゥーズから100キロほど西にあり、ルアージュ(乗合タクシー)でキブリという町を経由して行くことに。キブリでトゼール行きのルアージュが満席になるまでかなり待つことになったが、このころには地元の人々の生活リズムにも馴染んで来て、ルアージュの待ちゲームにもすっかり慣れっこになっていた。
 しばらく待った後、ルアージュはトゼールに向けて出発。車の振動が心地よくウトウトしてしまうが、気付けば辺り一面は塩湖の景色に変わっていた。
 チョット・エル・ジェリッドという名の付くこの塩湖は、時季によって色が変わり、赤色になったりもするそうだが、私が見た時は全体的に白っぽい色だった。この塩湖は一年のうち9〜10か月は乾燥しているそうだ。
 トゼールに着くころには日も沈みかけていた。何軒かの土産屋はまだ開いており、中に入ると、ベドウィン出身の店員が、砂漠生活についていろいろと語ってくれた。
 彼の家族は数か月ごとに移動しながら、今でも砂漠で生活しているそうだ。彼はトゼールに出稼ぎに来て、妹が作ったというベドウィンの民族衣装や、アクセサリーなどを売って、生計を助けていると言う。
 トゼール到着翌日は、ルアージュに乗ってタメルザへ足を運んでみることにした。到着したものの、これと言ってめぼしいものがなく、観光客用と思われる標示に従って歩くことに。
 本当にこちらの方で良いのかなと思いながら歩いていくと、数軒の土産屋が目に入ってくる。一軒の土産屋から15、16歳と思われる少年が出て来て「この先に滝がある」と教えてくれた。しばらく行くと小さな滝が見えてくる。小さいと言っても5、6メートルの高さはあっただろうか。
 先ほどの少年も一緒に来て、頼んでもいないのに道案内をし始める。マルワンと言う名のこの少年は、滝の先にある渓谷をどんどん進んで行く。
 後で法外な金額を請求してくる自称ガイドかもしれないと用心しながらも、いつものごとく好奇心に負けて、少年についていくことにした。渓谷と言えども乾季なのか水は流れていない。タメルザ付近にはこのような渓谷が多くある。
 さて、マルワン少年はひょいと崖の上に上がって、白い石を見付けて「これはクリスタルだよ」と言って原石を私にくれる。続いて少年はどんどん先へ進んで行く。
 しばらく行くと、開けた高台のようなところへたどり着く。そこからは遠方の山々や青々としたオアシスが見渡せる。高台をしばらく進んで行くと、何と出発地点の土産屋に戻るではないか。
 土産屋で働くマルワン少年は、私たちが土産屋に着くと今度は「皆で昼ご飯を一緒に食べよう。今すぐ戻るからちょっと待ってて」と言ってどこかへ行ってしまう。
 その間、土産屋に隣接した眺めの良いテラスで休息。他の店員と話をしたり、お茶をごちそうになっていると、マルワン少年は大きな鍋を抱えて帰って来るではないか。鍋の中には、彼の家族が用意したと思われる、野菜と鶏肉のシチューのようなものが入っていた。
 ごちそうになっていると、小さな猫もおこぼれをもらおうと近寄って来る。食後は、マルワン少年と他の店員が太鼓や笛を演奏して、現地の音楽やリズムを即興で披露してくれた。
 私の予想に反して、ガイド料をマルワン少年から請求されることも、土産屋で押し売りをされることも一切なく、何の見返りも期待せず、もてなしてくれたことに、心が温まった。
(つづく)