よみタイムVol.12 2005年9月23日号掲載


  ブロンクス動物園 クリエイティブディレクター 本田公夫

バタフライガーデンの生みの親

今年夏オープンした、ブロンクス動物園の「バタフライ・ガーデン」は、連日大勢の見学客が訪れている。ただ蝶を見せるだけではなく、昆虫の世界の自然サイクルにまで目を向けて、展示内容が構成されている。

実は、この展示構想を一から練り、デザインを考え、今のバタフライ・ガーデンを完成させたのは、同動物園勤務の日本人クリエイティブディレクター、本田公夫さんだ。夏のある暑い日、自分がデザインしたバタフライ・ガーデンを来場客と一緒に歩きながら「みんなが見に来てくれると、やっぱりうれしいですね」と顔をほころばせた。

小さいころから動物と動物園が大好きで、中学のころから動物園の解説不足を不満に思い、それが動機で大学からボランティア活動を始めた。「せいぜい種名のラベルが貼ってあるくらいで、これでいいのかと思っていたんです」。

「本来野生にいるべき動物を、人工環境に置いて、都会の人に見てもらうということは、それなりのメッセージを伝えないと、動物園の存在意義を社会的に説明できないんです」と話す。

本田さんが言うメッセージとは、必ずしも「知識」という形でなくてもいいという。「感動するとか、びっくりするとか、いろんな形でメッセージが伝わる可能性があるわけです」。メッセージを考えるスタッフは別にいるので、本田さんの仕事は、彼らが考えたメッセージをどういうふうに来場者に伝えるかを、建築部門やアーティストなどと一緒に、実現していくことだ。

「来場者に立ち止まって考えてもらうにはサインを置けばいいのか、ではどういうサインを置くのか、巨大な芋虫の彫刻を置いた方がいいのか、そんな具体的な展示構造を考えるのが私の仕事なんです」。

「環境に対する昆虫の重要性を伝える」――これがバタフライ・ガーデンの大きな目的だ。蝶が変態する様子や、蝶が食物連鎖の1部であることを示す展示など、思わず足を止めてみたくなる、そんな展示に出来上がっている。

蝶が見られるのは10月いっぱい。ぜひブロンクス動物園にバタフライ・ガーデンを訪ね、本田さんの力作を見学しよう。

(か)


プロフィール:本田公夫(ほんだ・きみお)=東京都出身、慶應義塾大学商学部卒。大日本印刷海外事業部からNYへ赴任。同社退社後シンシナティ動植物園グラフィック・展示担当キュレーターを経て、現在ブロンクス動物園の展示、グラフィックアート部門ディレクター。