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 よみタイムについて
 
 
よみタイムVol.174 2012年1月27日号掲載

カタログ表紙(Mie 2010 Alex Katz)
モデル、キュレーター
岩月 美江 さん
ユニークなポートレート展「MIE: ポートレート 」
新たに確立した3角関係
アーティスト+鑑賞者+モデル

June Leaf「MIE, 2012.」
(11X14 inches. Galvanized tin and
acrylic medium with paper)

チェルシーにある「フレイト+ボリューム・ギャラリー」で、1月21日(土)から2月25日(土)まで、ユニークな展覧会「MIE:ポートレート」展が開かれている。
 この展覧会は35人の世界中から集まった巨匠や新進気鋭のアーティストたちが、それぞれバラエティーに富んだ表現方法で、共通のモデルを対象にポートレートを制作するという画期的な試みだ。全アーティストのモデルを務めた「MIE」(岩月美江さん)は、モデルとしての「第3の観点」から、フルカラーの展覧会カタログに、それぞれのアーティストとのポートレート・セッションでの体験を「モデルの声」として緻密な文章で記述している。
 参加アーティストは、岩月美江が2005年からモデルを務めている、巨匠アレックス・カッツ(Alex Katz)を始め、写真家のロバート・フランク(Robert Frank)と妻で著名女性作家のジューン・リーフ(June Leaf)、ポール・ミラー(aka DJスプーキー)、日本人作家3人、平川典俊(写真)、三宅一樹(彫刻)、久野ギル (ビデオ/サウンド)、中国から参加の3人の著名作家、さらにニューヨークで活躍中の気鋭の若手が多数参加している。
 どうユニークか、展覧会のコンセプトについて、実際に共同キュレーターの一人で、展示される全作品のモデルを務めたMieこと岩月美江さんに話を聞いた。
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 企画が持ち上がったのは1年前。美江さんが、ある企画展を控え、アーティストやキュレーター、ギャラリー関係者たちと会食していた時のこと。同席していたギャラリストで同じキュレーターのニック・ローレンス氏から声がかかった。
 「美江が、キューレーションの仕事とは別に、画家のアレックス・カッツや写真家のロバート・フランクのモデルを長年務めているということは知ってるよ。どうだろう、彼ら巨匠も含め、気鋭の若手アーチストも入れて総勢35人くらいが別々のアプローチで同じモデル、つまりMIEを描くっていう展覧会をやらないか?」
 美江さんは即座に「面白い!」と感じた。
同時に「でも私はあくまでもキュレーター。企画にはテーマが必要だし、単純に35人のアーティストのモデルを務めるだけではなく、アートヒストリーにとっても意味ある企画にしたい。さらにみんなで東日本大震災に貢献したい」と考えた。
 ポートレート=肖像画、「人が人を描く」という表現方法の歴史は古い。が、どの時代にあってもポートレートは、アーティストによって描かれた作品=人物像を介して、鑑賞する者とアーティストとの直線関係だけで成り立ってきた。
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 「そこに『第3の声』=モデルの声を入れてはどうか」と美江さんはひらめく。「作品と鑑賞者」という伝統的な2者間対話の形に、「モデルからの第3の声」を追加することで、作品ストーリーに鑑賞者を、より深くエンゲージさせることができるのではないか。「アーティスト+モデル+鑑賞者」、3者間の対話が成り立てば、鑑賞者の心理に何が起こる?かを追求し、従来からあるポートレートの解釈に、新たな問いを投げかけることもできるのではないか、との思いだった。
 ポートレートというジャンルで「全く新しい三角関係」の図式が出来上がった瞬間だった。これまで長年モデルとして縁のあった巨匠たちに加え、アメリカばかりでなく日本や中国のアーティストたちにも声をかけると快い賛同を得た。もっとも現代アート界の多様性を反映して、総勢35人のアーティストたちの表現方法は、ペインティング、スカルプチュア、ビデオ、写真など、実に様々。それぞれのアーティストが同じサブジェクト「MIEを表現する」で一致。丸1年、美江さんはアメリカ国内はもとより、日本、中国、とアーティストたちのスタジオを駆け回った。
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 美江さんは言う。「モデルはアーチストの制作プロセスを知る上で、一番近い存在なんです。私の場合、自分もかつてアーティストを目指したこともある上、アートヒストリーも勉強してきた。キュレーターとして作家を理解できているので、現場ではアートシーンについて話し込んだり、時には冗談を交えての会話もはずみ、人間同士の精神的なつながりがそこにあるんです。だから彼らがどういうことを見ようとしているか、何を探しているか、というようなことも私にはインスピレーションのように分かるんですよ」と笑う。「モデルとアーティストという至近距離でのみ得られる作品制作にまつわる逸話、対話などを声として発信することで、ポートレート=肖像画の分野に人間味を取り戻すことが出来る。ヒューマニズム的なロマンティシズムへの回帰を試みるテーマ」であり、「新たな形として定着してくれるといいな」と自信をのぞかせた。
 会場では、ニック・ローレンス、岩月美江、ピーター・フランク、ジョン・ヤウ、そしてアンソニー・ハーデンーガスト執筆によるフルカラー展覧会カタログが販売(25ドル)されている。売り上げの一部は東日本大震災救済基金に寄付される。
(塩田眞実)

2月25日(土)まで
Freight +Volume Gallery
530 W. 24th St. NYC
212-691-7700
www.freightandvolume.com