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よみタイムVol.235 2014年8月1日号掲載

書家
風間 敞子(かざま・しょうこ)

御伽草子に透けて見える神話の世界
書家・風間敞子さん、今年3月まで18年間にわたり鎌倉の臨済宗建長寺派の大本山建長寺で筆耕を務めてきた。風間さんが担当した「筆耕」の仕事とは、本山が管轄する全国の末寺に発行する公式文書を代筆する仕事で僧侶が携わるようなものとは一線を画したものだった。が、一方、現在も東京、横須賀、横浜、相模原などで建長寺派の禅僧たちに書を教える仕事は継続中という。

 NYでは初の個展となる今回の「御伽草子ー墨彩」展(8月7日まで)は、これまで多くの個展で取り上げてきたテーマ「禅の風」や「大地・聲」など、自然・禅というカテゴリーから抜け出し、新たな挑戦を仕掛けている。
 会場のレゾボックスに展示された作品は、御伽草子の教訓ものや出世物などの中から「酒呑童子」「一寸法師」「浦島太郎」の三つの物語を選んで下敷きとし、物語の奥にひそむ不可視なものの表現を躍動的な筆致で縦横無尽に書き分けている。
 風間さんはこれまで日本各地で個展多数、海外ではカリフォルニア州サラトガの「箱根ガーデン」で開催している。
 「一寸法師=写真左=という誰でも知っている昔話がありますね。このお話は原型が各地にあるんです。『小さ子ものがたり』という形で、海岸に流れ着いた子どもを救って育てたという話が神社に伝承として残っています。どれも神話に基づいているんですね。例えばこの書の場合、私は木という文字を大きく書きました。木は鎮守の森といわれるように神社を象徴しています。その木と木という文字の間に、一寸法師の原文を散りばめています」と風間さんは展示されている作品のひとつを指差しながら丁寧に解説してくれる。
 作品「酒呑童子」はさらに躍動感があり、タイトルの大きな4文字の合い間にお話のクライマックスが跳ねるように力強く和紙の白い空間を埋めている。「墨によって、また墨のすり方によっても色が違います。同じ黒でもたくさんの黒がある。和紙もそうです。紙の漉き方ひとつで色も質感も変わる」
 今回のテーマの「墨彩」とは、白の紙の中で見せる墨の表情の豊かさそのものなのだ。
 変わったところでは、トンパ(東巴)文字を使って「風」を表現した書がユニークで可愛らしい。トンパ文字とは、中国のチベット東部や雲南省北部に住む少数民族の一つナシ族に伝わる、象形文字の一種だそうで、まるで文字が風にたなびいているかのようだ。所々で、つむじ風が巻き起こっている様も面白い。作品の題材に合った墨の色を選び、和紙の種類を変えているのは言うまでもない。

 創作ものを手がけるようになったのは約20年前からという。
 「それまでは漢字を厳格に書いていました。創作と基礎を並行して勉強していますが、創作は連綿(つづき文字)ではなく漢字や言葉の持つ意味から書体を選びイメージをわかせ、さらに、余分な線をどんどん削ぎ落としていきました。というのも、従来の書作品は『漢文が連綿で書かかれていて読めない、解らない』という声を聞きます。それでは書道自体の需要も衰退の傾向に陥ってしまいますからね」
 このままでは書道が狭い世界だけのものになってしまう。
 「なんとか一般の人から楽しいとか気持ちいいという感想が引き出せないか」
 風間さんの新たな「書道」の模索が始まった。

 書を本格的に始めたのは、大学生になってからのこと。小学校時代にも書道教室には通ったもののそれほど真剣に取り組んではいなかった。大学時代に再開したキッカケを、風間さんは「ヒマだったんですよ。何か始めなくてはという気がして」と笑う。
 大学の専攻は理系ではなかったが、卒業後は癌センターに勤務。やがて東海大学に移ったあとも研究者として発ガン実験に取り組んだ。やがて、明治生まれの厳格な書の師、阿部翠竹(大日本書芸院主宰)から「少し身を入れて書をやれ」と内弟子に取り立てられ癌研究から離れた。30歳を過ぎた頃だった。しかし昔かたぎの、「徒弟制度そのままの毎日」が延々と続く。労働ばかりでもう駄目だ身体が続かないと内弟子を卒業したのはすでに3年が経過したあとだった。「師と差し向かいで指導を受けたのは3年間で数えるほど」というから現代の若い世代にはとても理解できないかも知れない。
 それでも阿部翠竹門下として内弟子を終了する頃までに、書道では最高位の「審査員」資格を取得。その後、石川九楊にも師事。自分の世界をもとめて独立してから15年ほどがたつ。「いま自分では書を見て歩くより、絵画を見ることのほうが刺激的」とNY滞在中はもっぱら美術館で過ごすことが多い風間さん。
 「芸術に厳しいNYでの今回の個展、私をこれから進むべき方向に導いてくれるものと信じています。たくさんの人たちからご意見やアドバイスがいただけたら嬉しい」と目を輝かせた。
(塩田眞実)

風間敞子展「御伽草子 - 墨彩」
■8月7日(木)まで
■会場:RESOBOX Gallery
 41- 26 27th St. LIC
 Tel: 718-784-3680
resobox.com/bokusai