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Vol.222:2014年1月24日号
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よみタイムVol.222 2014年1月24日発行
 
NYセントラルパークで(All photos by Tokio Kuniyoshi)
シンガー
麻衣 / うたうまい
ハリポタに採用された時、
何かの間違いじゃないかと(笑)

宮崎駿監督の映画「風の谷のナウシカ」(1984年)で印象的な挿入歌「ナウシカ・レクイエム」。「ラン・ラン・ラ〜ララ」と、澄んだ歌声で賛美歌のように歌い上げた藤澤麻衣(ふじさわ・まい)さんは当時4歳の少女。音楽家・久石譲の娘であり、現在は「麻衣」と「うたうまい」という2つの名前を持つシンガーとして活動している。
 「父は最初、ナウシカ・レクイエムを歌えるボーイソプラノを探していました。たまたま私は音感が良かったので『ちょっと麻衣で試してみようかな』と、思いついたそうです」
 当時はまだカセットテープの時代。久石氏が自宅で録音したテープを宮崎監督に渡したところ「これは素晴らしい!」と採用が決定した。
 「本番録音の時、訳もわからずスタジオに連れて行かれました。録音ブースも小さくて、周りは大人ばかりだし…怖くて泣いちゃいました」
 バレンタインあたりのとても寒い日だった。
 「スタッフの皆さんに、チョコレートを配ってから歌ったことは覚えています。母からのアドバイスですけどネ」と笑う。

 映画「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2」(2011年)でも麻衣さんの神秘的な歌声が響いている。きっかけは、フランス人作曲家のアレクサンドル・デスプラ氏との出会いだった。
 「父とフランスの映画祭に行った時、初めてアレクサンドルさんにお会いしたのですが、『私、歌手なんです』と、いきなり営業したんです(笑)。そこから仲良くなりました」
 日本に帰ってからも、麻衣さんは新曲を出す度、彼に歌を送っていた。麻衣さんの歌声を気に入っていたアレクサンドル氏は、何度かフランス映画とマッチングしようとしたが、なかなか実現しなかった。
 「ハリーポッターの曲を担当していた彼は、当時、ケルティック・ボイスをイメージした声を探していたようです。でも適任者が中々見つからず、『そうだ! 麻衣はどうだろう』と思い出してくれたんです」
 何の曲かも知らされず、アレクサンドル氏から「ちょっとコレを歌ってみてくれない?」と連絡を受けた麻衣さん。日本で歌って録音したものを彼に送ったところ、デヴィッド・イェーツ監督が「これだ!」と決定。
 「ハリーポッターのオーディションだなんて知りませんでしたから、採用されたと聞いた時は、何かの間違いじゃないかと(笑)」
 ロンドンでの録音は、ビートルズが使ったという有名なアビーロードスタジオ。
 「ナウシカの時もハリーポッターの時も、棚からぼたもち。ラッキーでした」と謙遜するが、彼女の神秘的な美声が世界の大舞台を掴み取ったことに変わりはない。

 「でも実は、ビブラートがかけられないことが悩みなんです」と打ち明ける。
 5歳からNHKの合唱団で活動していた彼女は、ノンビブラート唱法。繊細な雰囲気や素朴さ、荘厳なイメージは正に「麻衣の歌声」だと思うのだが、「年を重ね、自分の年齢にあった歌が歌えるかどうかが鍵だと思っています。私にとって今が『変化』の時。自分の中では、今のままでは駄目だと感じています」
 歌に対する真摯な姿勢が窺える。

 「『うたうまい』という名前を考えたのは兄です。ダジャレなんですけど、最初に聞いた時、あ、いいな〜と思って」
 普段の活動は「麻衣」で、童謡を歌う際に「うたうまい」にしようと思ったと話す。
 「皆さんから、『歌う麻衣(うたう・まい)』、ですか? それとも、『歌上手い(うた・うまい)』ですか? と訊かれるのですが、どちらでも(笑)。この名前だけで会話が出来るというのも面白いでしょ?」

 ジブリ作品のみならず、ポップスやドラマ、映画の主題歌、CM曲、DJダイシダンスとのコラボでクラブイベントにも参加。作詞・作曲なども手掛け「オファーが来たものは、何でも挑戦したい」と精力的だ。
 2012年には、ニューヨーク国連本部の職員で結成された「UNシンガーズ(国連合唱団)」の日本ツアー「平和と慰霊のコンサート」に参加。広島・長崎・沖縄を回り、その歌声を披露した。
 麻衣さんは好きな歌があると、その歌が生まれたバックグラウンドが知りたくなると言う。
 「日本語はとても情緒があり、奥が深いと思います。例えば童謡の『小さい秋みつけた』で、秋が『小さい』だなんて、どう考えたのかなと思うと、その背景がもっと知りたくなって…」
 しかし、日本の童謡を歌っている若い世代がいない、日本文化が置き去りにされているようだ、と続ける。
 「学校の教科書から日本の良い歌がどんどん無くなっています。『花(滝廉太郎)』を知らない子どもたちが多いのには驚きました」
 2013年に発表した童謡アルバム「うたうまい〜童謡うたう〜」。東日本大震災で親を亡くした子どもたちが、不安で寝付けなくなっていると聞き、「何か自分に出来ることを」と考え、制作したという。
 「歌の良さ、というのはその内容だと思います。歌詞があるということは『伝えること』があり、それをどう伝えることが出来るか…それが歌の持つ魅力であり、力ではないでしょうか」
 メロディーと歌詞がマッチした歌に思わず感動してしまった、という経験は誰にでもあるだろう。笑い、怒り、癒し、安らぎなど、歌が紡ぎ出す表現力は無限だ。
 「こんな風になりたいな、逆にこんな風にはなりたくないなと、日々思い、感じることを大切にしています」  
 自分が実際に体験したことでなければ、深い部分で他人には伝えられない。
 「20代の頃は、父の仕事を手伝ったり、スウェーデンの作家たちとポップスを作ったりしていました。1日に3曲ペースで作っていた時期もあって、仕事はメロディやアレンジを含めた『音』を作ることでした。そんなことを3年ほどやりましたが、そのうち自分の中で『これは違うぞ』と思うようになって…」
 作った曲が売れればいいが、それでも麻衣さんは、「歌を通して『言葉』を伝えたい」と、強く願うようになった。
 「以前は中々歌うチャンスがありませんでしたが、去年から歌うための環境が整い始め、コンサートが出来るようになりました。自分がやりたいと思っていたことが、実際に形になること…今はそれが一番楽しい」
 歌が大好きだと宣言する麻衣さん。
 「まだまだ、これからなんです。これから、もっともっと自分の世界を広げていきたい」
 歌姫の真っ直ぐな想いが溢れた。