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よみタイムVol.61 2007年3月23日発行
号掲載

13人の日本人メジャーたち

いよいよ待望の大リーグのシーズンがやってきた。9月末までのペナントレース、そのあとのポストシーズン、ワールドシリーズと10月20日過ぎまでの長丁場だ。今季の目玉は何といってもボストン・レッドソックスに入団した松坂大輔投手。アメリカのメディアも「今季最も注目に価する選手」と連日松坂報道を続けている。その他、マリナーズ・イチロー選手の7年連続200本安打、ヤンキースの松井外野手の全試合出場など話題に事欠かない。がんばれ!13人の日本人メジャーたち。(吉澤信政記者)

ヤンキース・松井秀喜外野手
欠場の間にフォーム改造
3割、30本、110打点目指す


 昨年の9月12日、ヤンキースタジアムで行われたタンパベイ・デビルレイズ戦はすごい盛り上がり方だった。8番・指名打者で先発出場した松井に観客総立ちのスタンディング・オベーションが沸き起こった。5月11日の対レッドソックス戦でスライディングキャッチしようとした際手首を骨折、途中欠場してから実に124日ぶりの出場だった。それだけ多くのファンから広く支持されている証拠だろう。
 その試合で4打数4安打を放つなど、復帰後は3割9分6厘と打ちまくった。もう完全に骨折による後遺症はない。それどころか、124日の欠場の間に打撃フォームの改造に取り組んだ。スタンスをもっと広く、ボールを呼び込むことで内角でも引っ張ったり、左に流したりできる。スタンスを広くすることは下半身がしっかりしていないとボールについていけない。松井は欠場している間、下半身の強化を徹底した。復帰後の好成績はその効果が十分出ていたようだ。
 今季はロビンソン・カノの急成長で打順は6番か7番になりそう。しかし、チーム内での松井に対する信頼度は計り知れない。友人のジーターなども「マツイがいないと優勝できない」とまでいっているという。オープン戦も順調に仕上がっている。キャンプ地での人気も相当なもの。サイン攻めはジーターに匹敵するほど多い。
 05年はメジャーで自己最高となる打率3割5厘、23本塁打、116打点をあげた。今年の目標はやはり2年ぶりの3割復活と、30本塁打、110打点だろう。この成績を残せばおのずから宿敵・レッドソックスを破ることになる。
レッドソックス・松坂大輔投手
他球団のスカウトも二重丸
期待は17勝以上でエースの座を


 今年のメジャーで日米のファンや関係者にとって最もホットな選手だ。何しろ、昨年レッドソックスが5100万ドルで独占交渉権を獲得。そして、契約金は6年総額5200万ドル。それだけ価値の高い投手という評価なのだ。
 確かに昨年春のワールド・ベースボールクラシックで強豪キューバを力でねじ伏せ、MVPを獲得、注目を集めたが、レッドソックスは横浜高校で甲子園出場の時から注目していたという。
 チームのスカウトがいろんな角度からデータを集め、どの選手が今年どれだけの成績を残すかをまとめているが、松坂は17勝9敗、防御率3・29、投球イニング数は211回と3分の2となっている。この数字は昨年16勝したエースのベケット、同じく昨年15勝のベテランのシリングよりも高い。チームも「今年のエースは松坂」と見ている。
 キャンプ地では日米の報道陣300人が連日押しかけ、松坂の一挙手一投足に注目している。さる11日のオリオールズ戦に先発し、4回を6安打3三振4失点、2本塁打を喫して敗戦投手となったが「ホームランを打たれたことは全く気にしていない。抑えることもあれば、点を取られることもある。精神的には普通だった。どこを投げたら打たれ、どこなら抑えられるかの確認を絶対にしたかった」と話していた。
 ネット裏に陣取った他球団のスカウトは「どの球もとても鋭い。最も大切な直球の両サイドの制球力もある。かなり勝つだろう」と感嘆の声を上げた。
 ところで最近、新聞紙上で「ジャイロボール」という用語がよく使われている。彼の持ち味のひとつである90マイルを超える高速スライダーのことであるらしい。一般的な直球に比べて空気抵抗が少なく、リリースから捕手が捕球するまでの、初速と終速の差(空気抵抗による減速の程度)が非常に少ない。かつ空気抵抗が少なく打者の予測より早くホームベース上に到達するため、打者はタイミングが掴みづらい。ボールが浮き上がるような錯覚が生じるという。何かにつけ注目度の高い投手である。
ホワイトソックス・井口資仁二塁手
安定感ある2番打者

 オールラウンドプレーヤーとしてチームから高評価を受けている。安定した守備、俊足、長打力のある2番打者でここ2年間定着している。05年入団していきなりワールドシリーズ出場、「ワールドリング」を手にしている。その年新人ながら135試合に出場、打率2割7分8厘、15本塁打、71打点、15盗塁をマーク、チームのワールドチャンピオンに貢献した。メジャーのプレーヤーにとってワールドチャンピオンになってリングを手にするのは夢。それが日本から来てたった1年で獲得するラッキーマン。
 オープン戦では精彩を欠いているが、ケガさえなければ昨年(打率2割8分1厘、18本塁打、67打点、11盗塁)並みかそれ以上は期待できる。昨年はインターリーグ(対ナ・リーグ)で3割5分5厘、5本塁打、19打点と大活躍した。
ヤンキース・井川慶投手
制球力克服すれば15勝も

 キャンプ地タンパのロッカールームでのひととき。井川は読書にふけっていた。英語本、将棋本など勉強家だ。酒を飲まないので、食事のあとは自室で、読書三昧だ。
 昨年年11月、ポスティングシステムでニューヨーク・ヤンキースが2600万ドルで独占交渉権を落札した。チームにとって井川は貴重な左腕。先発陣は王建民、ムシーナの両右腕に、3年前までヤンキースに在籍していた左腕ペティットが復帰。4番手の投手として井川を狙っていた。「確実にローテーションを守り、10勝以上あげることのできる投手」が条件だったからだ。90マイルを超す速球、チェンジアップ、クロスファイア、マウンド度胸の良さなど阪神時代のデータをしっかり研究している。
 オープン戦でも何度か本塁打を打たれてもトーリ監督は、無四球に抑えた安定感のある投球を賞賛した。もともと肩の強い投手で、毎年200イニングスは問題ない。難点は四死球が多いこと。ストライクを取るために甘いチェンジアップを狙い打ちされている。投球幅ができれば、15勝も夢ではない。ケガから復帰したパバーノの信頼が今ひとつだけに、チームの井川にかける期待度は予想以上に高い。今年2月結婚も発表しており、公私とも充実した年になりそうだ。
マリナーズ・イチロー外野手
今季から中堅をまかされることになった。広い守備範囲、たびたび見せている本塁への絶妙な送球。どれをとっても球界ナンバー1の外野手だ。イチローが中堅に入ることによって、左翼イバネス、右翼ギーエンの外野手トリオは、リーグでも屈指の守備力を誇ることになる。
 今年34歳になるが、俊足、巧打は冴えわたる。オリックスで7年連続首位打者の偉業を引っさげ、01年メジャーへの挑戦。ポスティング制度を利用してメジャーリーグ・シアトル・マリナーズに移籍する。
 当時は「3割は打てない。内野ゴロが多い」「長丁場のフル出場はムリ」など否定的な評論家もいたが、開幕戦からマルチヒットを放ち、その年には242本の最多安打、3割5分で首位打者、50盗塁で盗塁王と「三冠」を達成してしまった。以後6年間全て3割以上、200本安打、首位打者2回と記録を重ねる。
 特に圧巻は04年。年間262安打は、84年間破られることのなかったジョージ・シスラーの257安打を5本上回る大記録。同時に打率3割7分2厘で2度目の首位打者にも輝いた。
 昨年春はワールドベースボールの牽引者として日本を金メダルに導いた。今季も7年連続200本安打はもちろん、3度目の首位打者、3割5分以上の成績を睨んでいる。幸い、チームも今オフ、投手ではミゲル・バティスタをFAで、打者ではナショナルズからホセ・ビドロを獲得するなど投打に新戦力を補強、地区優勝を狙える戦力になってきた。イチローもチームの牽引者として燃えることだろう。
ブルージェイズ・大家友和投手
ケガさえなければ15勝の期待も

  昨シーズンはケガに泣かされ約2か月故障者リスト入りするなど4勝5敗に終わった。もともと力のある投手で、フルに先発できれば13勝から15勝可能。02年にはエクスポス(現ナショナルズ)で13勝8敗という好成績をあげローテーション投手として活躍、翌03年にも10勝(12敗)をあげた。
 04年には、ライナーを腕に受けて骨折、シーズンの半分近くを棒に振っているなど、不運になシーズンを送った。ケガから復活した05年はローテーションの一角として活躍が期待されたが、投手交代をめぐってフランク・ロビンソン監督との確執が報じられた。その後、ブルワーズに放出された。しかし移籍後初マウンドをメジャー初完封で飾るなど、新天地でも先発要員として働き続け、2年ぶりの2けた勝利となる11勝(9敗)をあげた。
 今季はトロント・ブルージェイズと一年契約(年俸は150万ドル)した。オープン戦では安定した投球を見せている。三振の山を築くタイプではないが、バッターの手元で変化するボールと自慢のシンカーで打者を打ち取る。捕手のゾーンは「手元で変化するボールで打者の意表を突いているんだ」と早くも新戦力の実力を認めていた。自信をつければ、ローテーションの一角に組み込み、15勝の期待も十分できる。
デビルレイズ・岩村明憲内野手
球団の高い評価に応えたい

 強打の内野手としてヤクルトからポスティンググ制度を利用して3年770ドル契約で入団。30球団中、最も総年俸額の低いデビルレイズが450万ドルもかけて交渉権を獲得したのは、いかに彼にかける期待が高いかが伺える。昨年はワールドベースボールの主軸として活躍したこともチームにとって好印象だった。しかし、オープン戦ではまだ、実力を出し切れない。三塁手で再三エラーをするなど評価は芳しくない。首脳陣は「そのうち打ち出すさ」とはいっているもののこのままでは、開幕からファーム落ちもありうる。「1球1球自分の課題に取り組んでいく」と前向きな姿勢を見せている。ライバルが少ないだけにチャンスを大事にしたい。
マリナーズ・城島健司捕手
言葉の壁克服で高い評価

 05年のシーズンオフ、メジャーリーグシアトル・マリナーズと契約。捕手として日本人選手史上初のメジャーリーガーとなる。捕手という立場から、言葉の壁や戦略の違いなどで最も難しいといわれていたポジションだが、積極的なインサイドワークと豪快な打撃でレギュラーの座を見事に獲得した。座ったまま投げて盗塁を刺す、脅威の強肩が武器。イチローが右翼からダイレクトでホームへ投げたボールをしっかりキャッチ、三塁走者から激突されながらもボールを離さなかったシーンは記憶に新しい。
 魅力は打撃。開幕戦の第2打席で初本塁打を放ち、次の試合でも2試合連続本塁打。捕手として144試合に出場、打率2割9分1厘、18本塁打、76打点の成績は十分新人王の資格もあったが、惜しくも獲得できなかった。心配された言葉の壁も何とか身ぶり手ぶりでコミニュケーションを図っている。投手陣も「ケンジの英語はよく解るし、問題はない」と太鼓判を押している。
 2年目今年は、お互い気心も知れており「捕手は城島で決まり」と首脳陣も高い評価をしている。今季は3割に挑戦してもらいものだ。
レンジャース・大塚晶則投手
ダブル抑えの可能性も十分

 昨年オフにサンディエゴ・パドレスからトレードでレンジャーズに移籍。当初は守護神フランシスコ・コーデロ投手(現ミルウォーキー・ブリュワーズ)につなぐセットアッパーだったが、コーデロの不振により4月末にクローザーに昇格。63試合に登板、32セーブ、防御率2・11の好成績で抑えとしての役割をきっちりとこなした。
 オフにはその活躍が認められて、レンジャーズの地元記者による投票で選ばれる昨年のチーム最優秀投手に選出された。
 今シーズンはチームがオフに通算161セーブのエリック・ガニエ投手をドジャースから獲得したことで再びセットアッパーが予定されているが、実績があるだけにガニエとのダブルストッパーの可能性が高い。
カージナルス・田口壮外野手
勝負強さ抜群、定位置も

 昨年10月27日のワールドシリーズ。対デトロイト・タイガースとの戦いで8番左翼で先発出場、7回から右翼に移り、勝利を収めた。日本人として初めて世界一が決まった瞬間、フィールドに立った選手となった。
 05年には、自己最多の143試合に出場、打率2割8分8厘、11盗塁、得点圏打率はチームトップと勝負強さを見せて打撃面でアピール。そしてメジャー5年目の昨年は開幕スタメンを果たしたもののレギュラーの座を奪われ交代要員となった。しかしポストシーズンのナ・リーグ優勝決定シリーズでメッツの守護神、ワグナーから起死回生の決勝アーチを放つなど2本塁打の活躍。ワールドシリーズで存在感を見せつけた。
 監督好みで、ここ一番に勝負い打者だ。
ロッキーズ・松井稼頭央内野手
新天地で信頼回復

 4年前、大きな期待を寄せられながらメッツに入団。開幕戦でいきなり初打席で本塁打を放ち、話題をまいた。翌年も同じく開幕戦(対シンシナティ・レッズ)でも初打席本塁打、昨年はメジャー昇格初戦(対サンディエゴ・パドレス)の初打席で日本人初のランニングホームランを放つなど、ハデにアピール。しかし、あとが続かない。ケガなどの理由でシーズン途中からロッキーズにトレードされた。新天地ではシーズン終盤から主として二塁手として先発出場。32試合の出場ながら、打率3割4分5厘、2本塁打、19打点、8盗塁と好調を維持した。今年も、首脳陣は開幕から「2番二塁松井」を構想に入れている。
レッドソックス・岡島秀樹投手
貴重な左腕で
登板数増加も


 FAで入団。2年で250万ドルの契約。昨年は日本ハムファイターズで55試合に登板、防御率2・14と貴重な左の中継ぎとしてチームの日本一に貢献した。制球重視のフォームに改造したのが功を奏した。武器は変則ファームから投げおろす速球と大きく曲がるカーブと横揺れするカーブ。チェンジアップも低めに決まるとメジャーの打者でもなかなか打てない。大舞台でも動じない性格。オープン戦の登板では、何度か本塁打を打たれているが、後をきちんと抑えている。守護神だったパペルボン投手が先発に回り、苦しい中継ぎ、抑え陣。そんな中、岡島の活躍次第では、クローザーを任せられる可能性も十分だ。
ドジャース・斎藤隆
完全に信頼感つかんだ

 横浜ベイスターズを引退してメジャーに挑戦したのは昨年だった。キャンプの招待選手として参加。3Aラスベカスに所属。ところが、球団に異変が起こった。球界を代表するクローザー、エリック・ガニエが故障したため、メジャーに昇格。最初はセットアッパーだったが、他の投手が不調という幸運にも恵まれ、クローザーに指名される。持ち前の切れのある速球とスライダーで打者を圧倒。72試合に登板して6勝2敗、防御率2・07、セーブポイントは24と素晴らしい成績を残した。奪三振107はメジャーのリリーフ陣で最多。被本塁打も78回でわずか3本と安定していた。他球団のスカウトの目も変わってきた。
 「サイトーは要注意。あの切れの鋭いスライダーは打てない。今年も手こずりそうだ」と さじを投げたかっこうだ。
 今年のキャンプは、日本での自主トレ中にふくらはぎを痛めた影響で出遅れていたが、除々に調子を上げてきた。昨年の実績と自信が打者に威圧感を与えている。球団は40セーブを期待している。