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よみタイムVol.68 2007年7月6日発行
号掲載

真夏のNYでクラシック
音楽シーズンオフの夏もリンカーンセンターでは、恒例リンカーンセンター・フェスティヴァルとモーストリー・モーツアルト、野外無料コンサートで盛り上がる。またセントラル・パークでは、NYフィルが7月11、17日に野外無料コンサートを行う。海外や郊外の音楽祭まで足を運ばなくても、ニューヨークに居ながらクラシックを楽しもう!(文:針ケ谷郁)
Summer at Lincoln Center 2007
リンカーン・センター・フェスティヴァル2007
7月10日(火)〜29日(日)

中村勘三郎@NY記者会見(撮影:針ケ谷郁)

キーロフ・オペラ「ニーベルンの指輪」より
 世界各国の様々なパフォーマンスがニューヨークに集結する恒例のリンカーン・センター・フェスティヴァル。今夏は14カ国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、フランス、ドイツ、イギリス、日本、メキシコ、モンゴル、ロシア、スペイン、台湾、アメリカ)が参加して、15演目のアメリカ初演を含む93演目が披露される。
 中でも注目は歌舞伎「平成中村座」の再来米。3月6日の記者会見には座長を務める18代中村勘三郎が出向き、抱負を語ってくれた。
 3年前は芝居小屋を日本から持ち込んでの文字通り引っ越し公演で全公演完売の大成功を収めたが、今回は、より座席の多いNYフィルの本拠地であるエヴリーフィッシャー・ホールを使用し、長い長い花道が作られる。7月16日の初日には勘三郎、勘太郎、七之助のなんと親子3人による「連獅子」が初お披露目される。「連獅子」は30年前にNYのビーコンシアター、ワシントンのケネディ・センターで先代の勘三郎と共演した思い入れのある演目である。1日限定の公演なのでお見逃しなく。
チケット$25〜$250

 もう1つの演目「法界坊」は平成中村座が結成された時、初めて取り上げられた出し物。前回同様ニューヨークの観客を驚かせるサプライズを用意しているそうだ。
「3年前の公演ではNYタイムス紙のトップに取り上げられ、スパイダーマンより面白いと書かれたお陰で、スパイダーマンに仮装した男が乗り込んで来たそうで、今回の法界坊は悪役なので、バットマンが来てくれたら嬉しい」とコメントした。法界坊は17日から22日までで18、19、21、22日は2時と7時半の2回公演。
チケット$25〜$200
 
 もう1つのハイライトはロシアからキーロフ・オペラによる「ニーベルンの指環」がやって来る。ワーグナー作曲の4部構成(ラインの黄金、ワルキューレ、ジークフリート、神々の黄昏)の長大なオペラで1部ずつ4日で完結する。
 全世界の権力の象徴である黄金の指環をめぐって、天上のヴォータンを長とする神々と、英雄ジークフリートを中心とする地上の人間界、地下の小人のニーベルン族が争い、その果てに全世界は滅亡し新世界の夜明けが暗示されるお話。映画「ロード・オブ・ザ・リング」はこのオペラがモデルになっている。この夏体力と気力に挑戦してみるのはいかが? 
 メトロポリタン・オペラによる「指環」は物語を忠実に再現した伝統的な演出で大好評であるが、キーロフ・オペラはファンタスティックな演出でひと味違った仕上がりになっている。指揮はメトでもお馴染みのゲルギエフ。サイクル1(7月13、14、20、21日)とサイクル2(7月16、17、18、19日)@メトロポリタン歌劇場。
チケット$100〜$800

 また、このオペラにちなんだ様々な催しが企画されている。
メトロポリタン・ギルド主催のシンポジウム「キーロフ・リング・サイクル」14、15日@カプラン・ペント・ハウス。
チケット$25
www.operaed.org/lectures


 ワグナー・ソサエティ主催「ハドソン川でのライン下り」バラライカの演奏を聴きながらディナーを楽しむ4時間のワールド・ヨット「プリンセス号」クルーズ。15日6時からピア-81(W41st)
チケット$200

 ランチョン・レクチャーやロシアのカルチャーの紹介、オニール・レストランの地下での親睦会など。
お問い合わせ:
www.wagnersocietyny.org

 バレエ、ダンス、京劇、民族音楽、演劇など各国の珍しい演目が盛りだくさんに用意されている。
詳細:
www.Lincolncenter.org
Mostly Mozart 2007
モーストリー・モーツアルト2007
7月31日(火)〜8月25日(金)

マーク・モリス・ダンスカンパニー

ゼフィロ(当時の楽器によるアンサンブル)

ジョシュア・ベル(ヴァイオリン)

アリッサ・ウェイラースタイン(チェロ)
 41年の歴史を誇るモーストリー・モーツアルト・フェスティヴァル。7月31日のオープニング・ガラ・コンサートは音楽監督のルイ・ラングレイ率いるモーストリー・モーツアルト・フェスティヴァル・オーケストラによるモーツアルトの交響曲第36番「リンツ」で幕を開ける。ピアニストのポール・ルイス(MMデビュー)を迎えてベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」を演奏する他、アリサ・ウィラースタイン(MMデビュー)のチェロで、ニューヨーク初演のゴリジョフ作曲「チェロとオーケストラのためのアズール」が披露される。この日はディナー付きの$1500と$2500という豪華なガラ・チケットも発売されている。
 この後10時半から「リトル・ナイト・ミュージック」でハドソン川の夜景が楽しめるカプラン・ペントハウスでオープニングを飾った2人のソリストによる1時間のミニ・コンサートが用意されている。
 プログラムはベートーヴェンの最後のピアノ・ソナタ32番とコダーイのチェロのソナタ。「リトル・ナイト・ミュージック」のシリーズはこの他に7回あって、10時半からワイン(1杯無料)片手に、ロマンチックに演奏者と密接な雰囲気で楽しめる。
 オープニングに続いて、今年のモーストリー・モーツアルトの最初の週はベートーヴェンの神髄に迫る特集。晩年の弦楽四重奏やパーヴォ・ヤルヴィーがオール・ベートーヴェンのプログラムを指揮する(8月2日)他、異端のピアニスト故グレン・グールドによるベートーヴェンの名演を集めた2種類の映像が公開される(8月5日2時と4時)。交響曲と合唱曲を集めて8月4日4時から続けて7時半からベートーヴェン・マラソンと銘打って2つのプログラムが用意されている。
 パーヴォ・ヤルヴィの指揮ドイツ・カンマー・フィルのコンサートではベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第1番」(ピアノ:イングリット・フリッター)や『のだめカンタービレ』のオープニング・テーマでお馴染みの「交響曲第7番」が演奏される。
 8月4日のベートーヴェン・マラソンのプログラムは実際に作曲者であるベートーヴェンが1808年に企画したものを再現。当時「交響曲第5番『運命』第6番『田園』」が世界初演された。また「ピアノ協奏曲第4番」はウィーンで初演された際、ベートーヴェン自身が演奏をした作品。
 古楽器による3種類のプログラムでは、イタリアから室内楽団ゼフィロがアメリカで初演奏を行う。彼らはモーツアルトの時代の楽器を用いてモーツアルトの音楽を完璧に再現する(8月11、12日)。更に古い時代(1610年)の当時の楽器を演奏するバロッキスティ楽団とスイス・ラジオ合唱団、10人の歌手によるモンテヴェルディの祈りの歌という珍しい演奏が披露される。中でも当時のカストラート(去勢した男性歌手がソプラノのような高音を歌う)にかわって、カウンター・テナー(通常のテノールより更に高い音域を歌う)が2人登場して歌声を競い合う(8月20日)。
 3つ目は18世紀のオーケストラと言う名前の楽団がシューベルトの交響曲第8番「未完成」と第9番「グレート」をフランツ・ブリューゲンの指揮で演奏する(8月23日)。
 昨年好評だったマーク・モリス・ダンス・グループとピアニストのエマニュエル・アックス、野崎洋子夫妻によるコラボレーションが再演される。モーツアルトの調べに合わせてモリスが振り付けし、ダンサーたちが舞台で舞う。音楽をヴィジュアライズした新しい試みである。曲目はピアノ協奏曲第11番、27番と2台のピアノのためのソナタニ長調(8月15、16、17、18日)。
 また常連の人気ヴァイオリニスト、ジョシュア・ベルが今年はプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番を演奏する(8月21、22日)。
 クロージング・ナイトはラングレイの指揮、メトのオペラ歌手イザベル・バイラクダリアン(ソプラノ)ケリー・オコーナー(メゾ・ソプラノ)マシュー・ポレンザニ(テノール)モリス・ロビンソン(バス)を迎えて不朽の名曲「レクイエム」が霊験あらたかに演奏され幕を閉じる(8月24、25日)。
 お得な情報としては、8月1、8、11日のコンサートをセットで購入するともう1枚ずつチケットが無料になるそうだ。また学割チケットも学生証を提示すると$20で買える。
詳細:Lincolncenter.org