Illustration for NYLON magazine June/July 2007
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SVAの卒業生で、今ニューヨークをベースに第一線で活躍するイラストレーターの清水裕子さんに話を聞いた。
清水さんが、SVAの大学院を卒業してプロのイラストレーターとなってから数年がたつ。ニューヨーク・タイムズ紙やニューヨーカー・マガジンなど多数の有名雑誌・新聞にイラストを描く売れっ子だ。ウエストサイドの36丁目にあるスタジオからはニューヨーク・タイムズ紙や大手出版のコンデナスト社にも歩いていける範囲にあり便利だという。しかし、プロへの道をまっすぐに歩んできたわけではない。
大学の商学部を卒業して商社に入り、広報の仕事で11年勤務した。美大に進みたいと考えたこともあったが、両親の反対にあった。たまたま推薦で一流大学に進学できることになり、両親は大喜びした。喜ぶ親の気持を考えるとそれ以上は我がままを通せなかった。大学は商学部に進んだが、一応クリエイティブな雰囲気のある広告を選んだ。制作系ではなくビジネスサイドの広告だった。「入社してからの仕事は面白かったです。広告とも関係している仕事でしたから。でも、大企業のメンタリティーがどうしても性に合わなかった」。
小さいころから好きだった絵は描き続けてきた。それまでは、親思いの優等生だった。三つ違いの姉がアメリカに渡って手の届かない存在になっていたので、両親の関心は裕子さんに注がれた。「でも30歳になってたし、親と一緒に住んで親孝行も充分してきた。もうそろそろ自分の好きな道を」とアメリカ行きを決意する。
ニューヨークでは「自分が学校を選ぶんだ」という気持で、SVAを選択した。大学院を含め4年間通って卒業したのは03年だった。「卒業してもすぐ仕事が来たわけじゃないです。でも、会社勤めを長くやりましたし、学生の間はほんとに切り詰めた生活してたんで、貯金がありました」と比較的余裕のあるスタートを切った。
清水さんのイラストは、インクで描いたあと、スキャナーで読み込んで、コンピューターで色つけをする。仕事が重なると一日中缶詰状態になって描いている。週一回、イラストの講師として学生に教えているのがちょうどいい息抜きとなるという。
デジタル・ファイルで入稿するので、イギリスなどから注文が入っても、取引先の国が遠いということは問題はない。「何でも描くけど、弱いのは政治ネタかな。実際私のところには注文来ないですけどね」と苦笑いする。
「人を描くのが得意なんですけど、フェミニスト・ネタが多いかも。日本人のイラストレーターが少ないんで、アジアものとか中国ネタが多いのも事実。中国経済が発展すると、私の経済も発展するんです」と屈託のない明るさでにっこり笑った。
(塩田眞実記者)
9月12日(水)〜29日(土)
Visual Arts Gallery 入場無料
601 W. 26th St., 15th Fl.
(Bet. 11th & 12th Aves.)
10:00am-6:00pm 日曜・祭日休廊
レセプション9月18日(火)6:00pm-8:00pm
212-592-2145 www.sva.edu
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