映画制作会社「サード・カルチャー・クリエーションズ」を立ち上げた日系二世のフィルムメーカー今村春冬(いまむら・はると)が、短編映画のキャストを募集している。「ミルク&マーマレード」と題したこの作品は、今村自身がシナリオと脚本を書いた。
この映画は、ニューヨークに来たばかりの若い日本人の男性が、自分の肌の色や文化を否定し、コンプレックスに落ち込んでいく一方で、彼の友人の白人男性は麻薬やアルコールで身を崩していく。この二人が、お互いを通して自己のアイデンティティーを探る、という作品。
「日本人の男性と、女性の役を募集中です。オリジナルの脚本は男性がメインですが、キャストによっては女性をメインにもってくることも考えています」。
現在ニューヨーク・フィルム・アカデミーに通い「この作品を学校のプロジェクトとして短編作品に仕上げ、あらゆる短編映画フェスティバルに応募し、将来的には『サード・カルチャー・クリエーションズ』の作品として1時間半くらいの作品にしたい」という。
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今村は79年、東京で生まれた。日本人の父と、ドイツ・アイルランドの血を引くアメリカ人女性を母にもつ。父親が国連勤務だったことから、いろいろな国を転々として育った。
日本、ナイジェリア、ソマリア、バルバドスにそれぞれ2、3年ずつ住んだという。「どこが一番よかったかと聞かれても、答えられない。どこもそれぞれに魅力があるから」と微笑む。中学生のころからワシントンDCに住むようになり、以来アメリカが拠点になった。
「小さいころから、いろんな考え方、文化、宗教、芸術に触れて育ったので、地球上のあらゆるものを、あらゆる角度から経験してみたいと思い、最初は役者になろうと思ったんです」。
ロングアイランドにあるアデルファイ大学に進学し、演劇を専攻、俳優としてのトレーニングを積んだ。しかし、俳優には作品をコントロールする機会が少ないことに気づき、それからフィルムメーキングに方向転換。映画制作会社「サード・カルチャー・クリエーションズ」を設立した。
パートナーの萩原みつも、今村と同じように日本人とアメリカ人の両親を持つ。「お前はハーフじゃなくてダブルなんだぞ、と父に言われて育ちました」という今村は、両親の二つの文化から、自分という3つめの文化が生まれたと考える。映画制作会社の名前も、それを反映したもの。
「たくさんの文化や芸術を融合させ、メッセージ性のある作品を作るのが目標」だと話す。
マイアミでは料理学校にも通ったことがあり「何でもやってみたい」「全部やってみたい」という好奇心旺盛な若者だ。そんな自分の好奇心や情熱を、映画の中で実現し、表現していきたいのだという。
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