セットもなければ、メークもない。舞台にあるのはお地蔵さんとみかん箱だけ。巡礼の白装束に網代笠姿で1時間30分を演じ切る。
俳優座専属の女優として、舞台、テレビ、映画などで活躍している田野聖子によるひとり芝居「花いちもんめ」が7月2日から12日間にわたってウエスト・ヴィレッジの「バンク・ストリート劇場」でスタートした。
この「花いちもんめ」は82年に演出家の木村光一氏が発足した演劇団体「地球人」の公演のために書き下ろされたもので、女優の萩尾みどりや浅利香津代らが演じてきた。日本の童謡からとったタイトルで、敗戦後、満州に幼児を残してきたひとりの母親の悲惨な思いを描いている。20歳から60歳までをメークなし、語りひとつで演じる。バックに流れるピアノ(寺尾のぞみ)と箏(黒澤有美)の音を聞いての「ひとり芝居」。
「相手はいないけれど、劇場に来た人と一緒に芝居を作る空気感みたいなもの大事にしたいですね」。
実は6月中旬、東京の下北沢で「実践」を味わった。若い人の反応、「ショックを受けた」「私たちの祖父母の年齢の人たちががそんな経験してたんだ」と興味を持ってくれたという。
ニューヨークでの公演を決めたのは「女優という仕事をしているのだから、日本人として何か出来ないかと思ってました。朗読でもよかったんですが、この作品に出会い『これだ!』と感じたんです」と話す。
日大芸術学部在学中に劇団「俳優座」に入団。研究生時代はテレビ、映画で活躍。その後、劇作家で演出家の千田是也の目に止まり、遺作となった「カラマーゾフの兄弟」のリーサ役に大抜てきされた。
俳優座に入団後は4年間、全く仕事がなかった。食べていくために、テレビや映画の端役で出演したり、習い事をしてじっと耐えた。
大先輩の女優、杉村春子の「私の女優人生は売れない時に、色んなことを学んだのが肥やしになっている」という言葉が人生訓になっているそうだ。
最近は、映画監督に依頼がきて、幼馴染みの恋愛物語の「秋田の高校生」や沖縄・竹富島の生活を描いたものなどにメガホンをとったり、海外ドラマの吹き替えにも挑戦している。
03年から4年間ニューヨークに住んでいた。「人生の酸いも甘いも噛み締めた時期」だったが、彼女流「芝居の肥やし」になっているという。
ひとり芝居は、相当の演技力がなければ出来ない。「自分の財産に、ライフワークの仕事になっていければ幸せですね」と笑った。(吉)
公演日
7月2日・3日午後8時
7月4日・7日 休み
7月5日 午後2時、8時
7月6日 午後2時、6時
7月8日〜11日午後8時
7月12日 午後2時、8時
7月13日 午後2時
チケット:一般$30(当日$35)
シニア/学生/子ども$20(当日$25)
予約:212-352-3101
www.theatermania.com
劇場:Bank Street Theater
155 Bank Street
問合せ:TKO Entertainment,Inc.
212-206-1878
info@tkony.us
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