2017年5月12日号 Vol.301

[第77回]
僕は走る国際親善民間大使?


オマワリには目の敵にされ、マナーの悪い一般車には絡まれ、客には何度も乗り逃げされ、運が悪けりゃ客に襲われて大怪我する。イエローキャブドライバーはある意味命がけですが、悪いことばかりじゃありません。
特に、数少ない日本人ドライバーとして、母国日本を、そして日本人である自分を誇らしく思うことが、実は少なくないのです。
この2月、アッパーイーストからハーレムにお客さんを乗せた時のこと。夜中で暗かったので、後部座席がよく見えなかったのですが、感覚として黒人の男性だったと思います。実は声も雰囲気もユニセックスで、女性だったかもしれないのですが…。それはいいとして、降りる段になって突然「アー・ユー・ジャパニーズ?」と聞かれ、びっくりしました。「そうだ」と言ったら、「ワオ!」と驚かれ、俄然会話が弾みました。
「北は北海道から南は沖縄まで、日本中を旅行した」そうです。こんなことを言うと人種差別だと叱られそうですが、この人が黒人男性だったので余計にびっくりしたのかもしれません。何しろ、黒人男性には乗り逃げなんかの被害によく遭うので。人を見た目で判断しちゃいけませんね。
それから、東52丁目あたりの日本食レストランから出て、僕のキャブに乗ってきた白人女性は、「日本に住んでいる弟を訪ねて、つい最近2週間ほど行ってきたの」と言っていました。思い切って数日国内をひとり旅した時、日本人に親切にしてもらったことが印象に残っているそうです。
ある時は、携帯で話し出した白人男性がいました。深夜1時とかですよ。会話の感じから息子さんと話していたようで、電話を切ってから「こんな時間に?」と聞くと、「息子は商社マンで、日本の西麻布ってとこに住んでるから、今あっちは昼。最高の国だっていつも言ってるよ」と。
こうしたお客さんが異口同音に言うのは、日本は国土が美しく、街中にゴミがなくて清潔、そして人々が親切だと。嬉しいじゃないですか。
余談ですが、僕が仲良くしているパキスタンやエジプト人のドライバーがかなり頻繁に、「今、空港から日本人の客を乗せたところだ。話せ」と言って僕の携帯に電話してきます。彼らのキャブの後部座席にいる日本人のお客さんが、突然電話口に出て、お互いにびっくりして大笑いすることもしばしばです。
とにかく今回僕が言いたいのは、僕は心がけとして、「走る国際親善民間大使」くらいのつもりで運転しているってことです。(白石良一)



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