2018年1月12日号 Vol.317

残酷な表現もある
ヴェリズモ・オペラの代表作
「カヴァレリア・ルスティカーナ&道化師」


Eva-Maria Westbroek as Santuzza in Mascagni's "Cavalleria Rusticana." Photo by Cory Weaver/ Metropolitan Opera.


Roberto Alagna as Canio in Leoncavallo's "Pagliacci." Photo by Marty Sohl/Metropolitan Opera.


A scene from Leoncavallo's "Pagliacci." Photo by Marty Sohl/Metropolitan Opera.


「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「道化師」は、1幕オペラの代表作としてペアで上演されることが多い。
マスカーニは1888年ソンツォーニソンツォーニョ音楽出版社の懸賞オペラに「カヴァレリア・ルスティカーナ」で応募し、1等に当選。ローマのコンスタンツィ劇場での初演が大成功、その後世界中で成功し、一躍有名人となった。この作品は、19世紀末から20世紀初頭の頃の新思潮でもある庶民生活を生々しく描くヴェリズモ(現実主義)オペラの代表作である。悲惨な物語とは裏腹に、この上なく美しい間奏曲がとくに有名。
そんなマスカーニの成功に刺激されたレオンカヴァッロは、前述のヴェリズモ・オペラとして「道化師」を作曲。作品は1892年、ミラノで上演されると大成功を収め一躍名声を博した。「道化師」は、判事をしていた自分の父親が実際に扱った事件を題材として作曲されたもので、カニオが歌うアリア「衣装を着けろ」は、このオペラの悲惨さをドラマティックに表現した名曲だ。
ロベルト・アラーニャは、この2作品どちらも主役を演じる。演出は、今シーズンのオープニングを飾った「ノルマ」の新演出を手掛けたデイヴィッド・マクヴィカー。

●あらすじ
▼カヴァレリア・ルスティカーナ

舞台は1890年頃のシチリア島のある村、復活祭の日。兵隊に行っている間に恋人ローラを馬車屋アルフィオに奪われた若者トゥリッドゥは、彼を慕う村娘サントゥッツァの止めるのも聞かずローラとの密会を繰り返していた。トゥリッドゥに冷たくされたサントゥッツァは、アルフィオにトゥリッドゥとローラの関係を告げ口する。ミサのあと居酒屋に集まる村人たち。顔を合わせたトゥリッドゥとアルフィオは決闘をすることに。トゥリッドゥは母親ルチアに、自分が戻らない場合はサントゥッツァの面倒をみて欲しいと頼み決闘場に走り去る。母ルチアが心配気に待っていると遠くで悲鳴が聞こえ、「トゥリッドゥが殺された」と叫びながら一人の女が駆けこむ。

▼道化師
道化師のトニオが登場し、「これから始まる芝居は実話。道化役者であっても喜びや悲しみを感じるのは普通の人と変わらない」と口上を述べる。舞台はイタリア南部のとある村。旅芝居の一座の座長カニオは、女優で若くて美しい妻でもあるネッダが、村の若者シルヴィオと駆け落ちしようとしている事を座員のトニオから聞かされ絶望する。胸が張り裂けそうなほど苦悩しても道化を演じなければならないカニオ。出し物の劇中劇の中で演ずるネッダとカニオの役が、あまりにも自分たちの立場に酷似している事から、芝居であることを忘れ、ネッダに愛人の名を明かすよう迫るカニオ。一方、何とか芝居を続けようとするネッダ。観客は迫真の演技に魅了されるが、カニオはついに激昂し本当にネッダを刺してしまう。さらに彼女を助けようと駆け寄ったシルヴィオも刺す。恐怖におののく観客に向かい、カニオは喜劇が終わったことを告げる。(針ケ谷郁)

CAVALLERIA RUSTICANA / PAGLIACCI
■1月8日/13日(M)/17日/20日(M)/25日/29日、2月1日


CAVALLERIA RUSTICANA
■ピエトロ・マスカーニ作曲 イタリア語上演
■初演:1890年5月17日 ローマ、コンスタンツィ劇場
■原作:ジョヴァンニ・ヴェルガの同名の小説
■演出:デイヴィッド・マクヴィカー
■指揮:二コラ・ルイゾッティ
■配役:(サントゥッツァ)エカテリーナ・セメンチャク/エヴァ=マリア・ウエストブルック
     (トゥリッドゥ)ロベルト・アラーニャ
     (アルフィオ)ジェリコ・ルチッチ/ゲオルグ・ガグニーゼ

PAGLIACCI
■ルッジェーロ・レオンカヴァッロ作曲 イタリア語上演
■初演:1892年5月21日 ミラノ、ダル・ヴェルメ劇場
■原作:実際に起きた事件
■演出:デイヴィッド・マクヴィカー
■指揮:二コラ・ルイゾッティ
■配役:(ネッダ)アレクサンドラ・クルザック
     (カニオ/道化師)ロベルト・アラーニャ
     (トニオ)ゲオルグ・ガグニーゼ
     (シルヴィオ)アレッシオ・アルドゥイーニ
■チケット:212-362-6000
www.metoperafamily.org


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