2017年1月27日号 Vol.294

ロックの真髄聴かせる
究極のツーピースロックバンド
TORANAVOX


Photo © Walter Wlodarczyk


鳥居の中から聞こえて来る騒めきの声。大地を揺るがすドラム、天を引き裂く入魂の叫び声、ハードにヘヴィに掻きむしるギター・リフ。イスラエルの血を引くイーライ・ハルフィ(ドラム/ボーカル)と大和魂の南ケン(ギター/ボーカル)が変幻自在の千手観音の如くロックの真髄を聴かせる究極のツーピースロックバンド、TORANAVOX(トラナボックス)。崖っぷちのハードロックが炸裂する。

ロックトリオ「宙ブラリ」を経て、南ケン(ギター、ピアノ、ボーカル)は、相棒に女性ドラマー、GRACEを迎え、デュオ「ヌー」を結成する。かき鳴らすエレキギターと、歪み(エフェクト)をかけたピアノ、さらにシャウトするハードボイルドな男性ボーカルと、ぶっ叩きのドラムに女性コーラスという最高のコンビネーションに「いーぞ、これは!」とバンドの成功を直感する。
しかし一年もしないうちに、「このまま南くんとバンドをやっていたら病気になる」と、あまりにも過酷で体当たりの演奏を強要されたGRACEは脱退を希望、バンドは解散した。
日本ではいいドラマーを見つけるのが難しいと判断したケンは、ギターを担いで2010年にニューヨークへ渡り、新境地に立つ。シンガーソングライターが入れ替わり立ち替わり演奏できる「オープンマイク」が存在することを知ったケンは、連日連夜、ニューヨークの音楽クラブでオープンマイクを歩き渡る。「毎晩、あちこちのライブハウスで弾き語りができるのは夢のようで楽しくてたまらなかった」と当時を振り返る。
「イーストヴィレッジにサイドウォークカフェって有名なところがあって、最初のうちは会場に着いてサインアップして名前を呼ばれるのを待ち、40番目に演奏したりしてたけど、何度も通ううちに担当者の心意気一つで好きな順番に出させてもらえるようになったんだよね。『おいケン、今日は何番目にやりたい?』ってね」
そんな毎日を過ごしていたある日、「感覚の優れたパワードラマー」アダム・アーロン・アムラムに誘われ、ケンサウスロック(Ken South Rock) を結成する。新たなツーピースバンドだった。2011年から2014年の間に、米国ツアーを6回、日本、中国、台湾を含むアジア・ツアーを行い、台湾タイムズの表紙になる程、有名に。
「ツアーは楽しいんだけど、とにかく金がなくて、ボロボロのホテルに泊まってた。アダムも俺も、ライブで稼いだお金を先のこと考えずに酒とかに使っちゃって、夜が更ける頃にはお金がなくなっていて喧嘩ばっかりだった」と苦笑いするケン。そんな月日を経て、バンドは終止符を打つ。

「しぶとい男」ケンはロックをやめない。ケンは、クレイグリストで知り合ったイーライ・ハルフィと再びツーピースバンドを結成する。それが、「TORANAVOX」だ。ヒンドゥー語の鳥居(TORANA)から聞こえてくる声(VOX)という造語のバンド名だ。歌詞は日本、ヘブライ、英語の3ヵ国語。「自分が英語のロックを歌っていたように、米国人に日本語を歌わせたい」というケンは日本語にも拘る。ストレートに理解してほしい部分には英語を使い。そしてイーライのルーツでもあるヘブライ語が入り乱れ、曲のタイトルはコンセンプトを簡潔に伝えるために、すべて「一語」。2016年10月に発表された2枚目の7曲入りEP「HAI」に収録された曲は「Kill / Hai / Anonym / Junk / Quit / Frustrate / Ash」と、聴く前から歌詞のメッセージが伝わってくる。
演奏する時はギターアンプとベースアンプの2台を使い、エッジーなギター・サウンドとボトムの効いたべース・サウンドとケンは一人二役をこなす。また、ベーシストがいるとリズムを刻まないといけないという観念にとらわれ単純になりがちだが、ベースがないため、ドラマーは自由奔放に叩くことができることがツーピースのメリットの一つだと言う。ギャラは山分け、スケジュールがすぐに合わせられることなど、二人組のメリットは他にも色々とあるようだ。

2月4日と10日、ブルックリン公演を行うTORANAVOX。日米英問わず80年代のヒットチャートに聞かれるポップでキャッチーなメロディーに、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、レッドツェッペリンなどの60~70年代のバンドの影響が土台になり、ニルバーナに代表されるグランジのエッセンスが加わったハードエッジなヘヴィロック。ケンとイーライが繰り広げる熱いステージと究極のツーピースバンドの醍醐味が体験できるチャンスだ。

「俺の英語の先生はバーテンダー」と笑うケン。現在、ブルックリンにある某ライブ会場の階上に住んでいて、下に降りればバーで酒が飲めるという最高の環境で毎日を送っている。目標はバンドが有名になることではなく、一ヵ所でも多く、一つでも多くの国でライブをやること。ライブを続けること以外は、今のところ考えられず、バンドで旅を続け、世界を駆け抜けることがケンのライフワークであり、TORANAVOXの果てしないロック道なのだ。(河野洋)

■2月4日(土) 8:00pm〜11:00pm
※Toranavoxは10pm頃出演予定
※他出演アーティスト:American Anymen / Sic Tic / Current Ex / Toranavox
■会場: The Gateway
 1272 Broadway, Brooklyn
■$5
https://www.facebook.com/toranavox

■2月10日(金) 7:30pm〜0:00am
※他出演アーティスト: Nuke (Japan) / Toranavox / Old Monk / Skull Practitioners / Unconditional Love
■会場: Bar Matchless
  557 Manhattan Ave, Brooklyn
■料金: $8(年齢: 21+)
www.barmatchless.com


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