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Vol.200:2013年2月22日号
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よみタイムVol.200 2013年2月22日発行号

[People in New York: file No.4]
絵本作家
にしの あきひろ

Photo by Tokio Kuniyoshi

実は絵ぇかくの
そんなに好きやないんです。


「自分をイメージして描いた」という1枚

ギャラリーオーナーのダンさん(中央)
キュレーターのエリザベスさん(右)と  =Photo by KC=

 よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のお笑いタレント西野亮廣さん。漫才コンビ「キングコングの西野」として日本で大活躍しているが、もう一つ絵本作家「にしのあきひろ」としての顔を持つ。 
 2月16日から18日まで、「絵本原画展・イン・ニューヨーク」がグリニッジビレッジのギャラリー「ワン・アート・スペース」で開催され、原画140点が壁一面に飾られた。
 「タレント」として成功を収め、小さい頃から「お笑い芸人になることだけ考えていた」という彼を、「絵本作家」の道へと突き動かしたのは一体何だったのだろう。

 「でも俺、実はそんなに絵を描くの好きやないんです」と、絵本作家としては、いきなり意外なコメントだ。
 兵庫県川西市の出身の西野さん。「お笑い芸人」を夢見る少年だったと言う。朝から晩まで、必ずどこかのテレビに「よしもと芸人」が出ている関西地方。そんな生活環境からすれば、何ら不思議はない。
 「小学校の時、クラスの男に『お前ら、女としゃべんな(話すな)』と言うてしもたんです。その手前、自分から話されへんようになってしもて…」。誰にでも覚えがある異性に対する「照れ」で、小学生なら尚更だろう。
 「そのあと、おもろい事をしたら女の子が声をかけて来た。向うから話して来たんやから『セーフ』でしょ(笑)」
 そんなことを続けているうちに、「あ、お笑い芸人になりたい」と思うようになったと言う。
 「昔から絵は得意で、人間をよく描いてました、特に女の裸ばっかり(笑)。好奇心で描いてただけやったんですけど」それが美術教師の目に留まり、美大への進学を勧められた。
 しかし、作品を世に出すより自身が有名になりたかったのだろう。「お笑い芸人」への夢は、揺るがなかった。
 高校卒業後、吉本総合芸能学院に進んだのち、現在のコンビ「キングコング」を結成。その後の成功は言うまでもないが、夢が叶ったにも関わらず、なぜ絵本作家としてデビューしたのか…。
 「タモリさんのクイズ番組に出てた時、解答と一緒に、パネルにイラストを描いてたんです。それを見ていたタモリさんから『描いてみろ』と勧められました」
 きっかけを作ったのは、タモリだった。
 「そんなある日、タモリさんから銀座のバーに呼び出され、あの絵はどう、この絵はこう、と一緒になって絵の批判や悪口ばっかり言うてました。タモリさんと話してるうちに『あ、俺は描くことより、本当は、物語を作るのが好きなんや』と気がついた。そんなら絵本や!と」
 眠っていた創作意欲が覚醒した瞬間だった。
 2009年、初の著書となる絵本「Dr.インクの星空キネマ」を発表。「お笑い芸人」になるのが最初のチャレンジなら、これは2度目のチャレンジだった。
 「最初の本を出したあと、酒の席で『また次の本を描くよぉ〜』と言うてしまってるみたいです。その後、みんなから『次の絵本はどないなってんねん!』と言われて、描かなアカンようになって…」と笑う。 
 2010年に「ジップ&キャンディ〜ロボットたちのクリスマス」、昨年の11月には「オルゴールワールド」と、すでに3冊を発表している。

 西野さんの絵は、緻密にして繊細。細部まで丁寧に描き込まれており、観れば観るほど新しい発見がある。一枚の絵に費やす時間は約一ヶ月。極細のペンを使用し、500本以上使う事もあるという。
 仕事をしながらどんな時に絵本のアイディアが浮かぶのかと問うと、「俺の場合、アイディアは『降って』こないですね。どっちか言うたら独りになってひたすら『掘る!』感じ。最初は見つかるまで掘って掘って掘りまくってました。でも最近は、掘って出てこなかった時は…別のところを掘ってます」
 この独特な発想と表現が、西野作品の「想像力」を生み出している。制作も静かなところで行っていると言い、一般的なイメージの「お笑い芸人」とは真逆の繊細な面がうかがえる。
 「現実の世界では、月にハシゴを掛けることなんか出来へんし、セットを作るとしたら莫大なお金がかかります。でも絵の中やったら、自分が思い浮かべる世界を何でもありで表現出来る。どんな構図にしたらええか、どんなアングルがええかなど、テレビ画面やカメラを想像して描いてます。テレビでの経験ですね」
 ちなみに処女作「Dr.インクの星空キネマ」で最初に描いたキャラクターは、鏡に映る自身がモデルだそうだ。

 ギャラリーオーナーのダン・ギエラさんは「通常、個展開催まで半年程の準備期間を置いているが、今回は一ヶ月で準備をしたよ。彼の絵の中には別の世界があって、我々の想像力がかき立てられるんだ。とにかく絵を早く持って来い!と、急かしたほどだよ」と笑う。原画を拡大してディスプレイに使用するなど、展示方法にも力を入れた。
 キュレーターのエリザベスさんも「大人も子供も同じレベルで鑑賞出来る、素晴らしい作品よ」と絶賛。
 「開催まで時間がなく、最初はどうなる事かと思いました。とりあえず、オーナーのお眼鏡にもかなったようで、ほ〜〜〜んまにホッとしました」と、プレッシャーから解放された様子の西野さん、安堵の表情を浮かべていた。

 現在、4冊目の絵本出版に向けて制作中。最後にお決まりの「今後の目標」を尋ねた。
 「チャンスがあったら、また個展を開きたいですね。もっと『にしのあきひろ』としての知名度を上げたいし、クレイアニメにも挑戦したい。ディズニーとコラボして、映画を作りたいですね」と、壮大な野望を語る。
 「でも、どうやったらディズニーに知ってもらえますかねぇ〜」と、笑いながら冗談めかしてしまうところに、西野さんの謙虚さが見え隠れする。「しらんがな!」とツッコミを入れるべきだったのか…真偽はともかくとして、「大きすぎる夢ではない」と思うのは、私だけではないだろう。
 「絵本の出版や個展開催なんて、芸人風情が調子にのって…」と謙遜する西野さん。「ディズニー乗っ取り」を目指して更なる躍進に期待したい。
(ケーシー谷口)