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よみタイムVol.120 2009年9月4日発行号
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僕たち都会のトラック農民!
「食生活を根本から考えてみようよ」
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トラックの荷台で野菜栽培を試みる二人
(photo: Nobutoshi Mizushima) |
ニューヨーク市ブルックリンの路上に出没する「トラック農場」が、市内のメディアで取り上げられ、話題になっている。ブルックリン在住のドキュメンタリー映画監督、イアン・チェニーさん(29)と、カート・エリスさん(29)が、今年5月から始めた。トラックの荷台で育ったオーガニック野菜の収穫高は、すでに大きなショッピングカート2個分の量。
パークスロープの外れにある彼らの映画制作会社を訪ねると、付近の路上にトラック農場が何気なく停められていた。荷台にはプチトマトが赤々となり、バジルがうっそうと茂り、レタスが芽を出し、ピーマンが収穫間近だった。
イエール大卒の秀才二人が、なぜトラックの荷台で野菜を作っているのか。実はこのトラック農場には、「環境や、健康な食生活について考えようよ」という彼らのメッセージが託されている。彼らが作るドキュメンタリー映画のテーマも環境保護。遺伝子組み換え食品を取り上げた作品「キング・コーン」は評価も高く、日本でも劇場公開された。
とはいえ、二人には気負った様子はない。あくまでも野菜作りを楽しんでいるだけだ。「近所の子どもがバジルを盗んでいくんだよね」とカートさんは笑う。映画制作の合間を縫って、トラックごと売りに歩くこともあるが、注文がくると配達もするし、近所の人が買いに来るなど、「いろいろさ」。
「僕たちがトラックの荷台で野菜を育てられるんだから、だれにでもできるよって、言いたいんだ」とイアンさんは言う。現在、次のドキュメンタリー作品にと、このトラック農場をフィルムに記録中。
「食べてみる?」とイアンさんが真っ赤なプチトマトを枝からもぎ取った。「ね、悪くないだろう? トラック農場はデトロイトの最後の望みだと思うんだけどなあ。アメリカのオートメーカーは、荷台に農場施設を完備したトラックを売り出すべきだよ」と冗談を飛ばす二人だった。
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映画「KING
CORN」
遺伝子組み換えコーンを追って
大学の研究所で、髪の毛を分析してもらったイアンとカートは、「君たちの体はコーンでできている」と言われ、当惑する。スーパーマーケットの食品の成分をチェックし、ほとんどにコーンスターチやコーンシロップ、コーンミールなどの精製コーンが入っていることに気付くと、二人のコーン追跡が始まった。1年間アイオワ州に移住。畑を借りて、遺伝子組み換えのコーン栽培を試みた。収穫したコーンは、人間が食べられるようなものではなく、すべてが家畜の飼料や、コーンシロップ、コーンスターチなどの精製食品の原料になる。遺伝子組み換え食品世代のアメリカを、たんたんと描いた作品だ。一見の価値あり。
www.kingcorn.net
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