ロシア軍の攻撃を受けた首都キエフにある「キエフテレビ塔」(2022年3月1日) (Photo courtesy of Mvs.gov.ua)
KGB出身のプーチンは、数十年がかりでウクライナ軍や情報・治安当局の内部に密告者やスパイのネットワークを張り巡らせてきた。クリミア半島を併合した14年には、ウクライナから大量の裏切者が出た。前任の親露派に代わって就任したウクライナ海軍司令官が数日後には寝返り、ロシア黒海艦隊のナンバー2に任命された。ウクライナ艦船は、侵攻してきたロシア軍が押収、駐屯していたウクライナ海兵隊の多くもロシアに寝返った。プーチンは、今回の侵略でも同じ事を企んだようだが、これまでのところ成果を得ていない。
そこでプーチンの新たな企みは傭兵の投入である。ロシアにはワグナー・グループと呼ばれる民間軍事会社があり、プーチンと親密な関係にある。シリアやアフリカ各地の独裁者を支援する武装闘争で、同グループの傭兵が主力となる働きをしてきた。ウクライナ軍の捨身の抵抗と、士気の低いロシア兵に業を煮やしたプーチンは、首都キエフ攻略に、シリヤ人傭兵を動員することを決断したと伝えられる。カネが目当ての傭兵たちが市街戦に投入されれば、どれほど残虐な戦をするか、想像するだけで恐ろしい。
決意なきバイデン
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は16日、アメリカ連邦議会向けの演説で、ウクライナ上空の飛行禁止区域設定を改めて強く求め、それができなければ、強力な地対空ミサイルや航空機の支援を要望した。その結びでは、「バイデン大統領、あなたには偉大な国家の大統領であるだけでなく世界のリーダーになってほしい。それは世界平和のリーダーということです」と英語で呼びかけた。声涙倶に下る言葉だ。
残念ながら、ジョー・バイデンには、それに応える決然たる意志がない。キューバ危機に臨んだJFKは、核戦争も辞さずという断固たる決意で、ウクライナ出身のソ連指導者だったニキータ・フルシチョフに、キューバ・ミサイル基地建設を断念させたのである。(一部敬称略)