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  ミネソタのレイク・ポイント・コンドミニアム(2008 年撮影)
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Photo by Ed Kohler
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アメリカは開かれた 国である。ジェンダーや 人種、学歴など完全な 平等が実現していると は言えないにしても、 成功への機会はほぼ均 等に保障されている。 右も左もわからず、親 の転勤に従って連れて 来られた子供たちを、 アメリカの公立小・中 学校は当たり前のよう に受け入れてくれてい たし、ただ受け入れる のではなく、新入りの 児童生徒に英語のクラ スを設けて即成教育も 施していた。先生が話 すことも、友達との会 話もチンプンカンプン、 何もわからないから不 登校になる、などと言 うケースは聞かなかった。
 
そういう国にやってき て、ビジネスをし、暮 らすからには、それな りの作法というものが あろう。私は、その第 一の要件として、地元 への同化、価値観の共
を取得した典型 的 リーガーで、当 時付き合いの多かったス タンフォードやバークレ ー、 出の秀才 とは別種の風格を漂わ せていた。今も投資会
 
Untitled,(Detail 30)
ム、 サウナ。 他にバ ーや来客用の宿泊施設 もあります ......不動 産広告風にするとこん な具合。地価の安いア メリカ(この敷地で1 平方メートル当たり約 一万九千円)では(上物 価格として)決して安 くはない。しかし一戸 あたり面積は日本に比 べ格段に広いし、内容 はもう比較にならない。 衣装部屋と言った方が ピッタリする洋服入れ から小物入れまで、収 納施設はすべて作り付 け。台所には電子レン ジ、オーブン、冷蔵庫、 自動食洗機が完備して いる。 そのうえ、 湖 水のほとりというまた とない立地条件。来年 四月の完成=入居を前 に、すでに七〇%を超 す七十六戸は売約済み ......
鹿島にこの話が持ち こまれたのは、オイル ショック最中の 年だっ た。アメリカでの住宅 開発は未経験、しかも 日本企業には処女地と いえる都市、あまりに リスクが多過ぎたが、 同社トップはあえてゴー サインを出した。 〜
開いているが、不況の 時ほど他州との競争が 激しく、なかなかきて もらえない。とくに日 本企業の場合、ニューヨ ークと西海岸に集中し て、内陸部にはほとん ど関心を示さない。そ んな中、一番難しい時 期に進出してくれた鹿 島には感謝している」 ......いま、鹿島の若手 三人組とオーティスさん の関係は、面倒を見て もらう立場から、相談 に乗る立場に逆転した。
ン氏は、この土地がフ ェニックスより見晴らし がよいこと、フロリダ からカリフォルニアへの びるサンベルトの中で も、フェニックスはとく に成長率が高い都市で、 まだまだ発展の余地が あることを説いた。し かし、何と言われても 第一印象は良くなかっ た。ひどく暑い。日中 は四十度が常識だとい う......プロジェクト担当 を命じられた東洋不動 産の川井今夫氏が、ロ サンゼルスと現地を往 復している間に気づい たのは「ここはアメリ カ。日本人の価値観だ けでははかりきれない ものがあるはず」とい うことだった......この計 画もまた、オイルショッ ク後の“困難な時代”に スタートした。 五百万 ドル(当時の為替レー トで約十五億円)で買 収した九百エーカーの うち百三十エーカーをゴ ルフ場に、残りを千区 画(一区画約千三百〜 一万六千平方メートル) に分割して販売する計 画だ。 さる十月半ば、 ゴルフ場が完成、宅地 も第一期百六十区画の うち、百三十五区画が すでに契 約を完了した。 「あとはもう、押せ押 せで売っていくだけです」 ......
......ミネソタとアリゾ ナ、二つの現地を間近 に見て痛感したのは、 両者に共通した“心”が あることだ。 それは、 日本企業固有の価値観 をいっぺん白紙にして、 アメリカ人の物の見方、 考え方、さらにミネソ タやアリゾナの特性を 虚心に受け止め、そこ から事業の方向づけを していったことである。 その上で、日本人らし いキメ細かな出来栄え を追求している。だか ら、地元には日本企業 の進出という違和感も 反発もない。 それは、 素材とアイデアをすべ て“現地調達”したこと によるものではないか ......
国際ジャーナリスト 内田 忠男  
先にも述べたように、 有が必要ではないかと 紹介した二つのプロジ   
ロサンゼルスではアメ 考えた。そのような視 リカに進出した日本企 点から、日本企業の行
ェクトとは、ミネアポ リス郊外の湖水のほと りに 階建て、107 戸のコンドミニアムを建 設した鹿島建設と、ア リゾナの州都フェニック ス郊外の砂漠に東洋不 動産と日綿實業が開発 したゴルフ場付き宅地 開発だった。
業の行動にも注目した。 かつての繊維や鉄鋼、 この当時の家電や自動 車のように日本製品を 洪水のように売り浴び せていれば、やがては 反感を買う。
動を見つめるうち、二 つの企業に注目し、ミ ネソタとアリゾナの現 場を訪ねた。その成果 は、1977年 月 日付朝刊解説面の最上 段に4段ぶち抜きの大 型記事となる。
代の若いスタッフ3人
に大幅な権限を与えて
スタートさせた。 記事
本文の続きーー。
......真っ先に注目した
のは州政府の経済開発
局だった。「不況脱出に
は機関車がいる。沈滞
したミネアポリスに、
クレーンを掲げ、ツチ
音を響かせてくれよう
というんだから、これ
こそ景気の機関車だ」
......州政府で外国企業
誘致を担当するジェーム
ズ・オーティスさんは「ど へ約五十キロ......ここ
『歓迎される企業進   
出の道 現地の心と価  
「日本人の関心を引く にはどうすれば良いか」 から「脈のありそうな 会社」の紹介まで助言 を求められている......
値観で 米で成功した  
住宅開発』の見出し。 ......カラーテレビ、鉄 鋼、自動車......怒涛の ような日本製品の洪水、 拡大する一方の貿易収 支の赤字にイライラが つのるアメリカでは、 メード・イン・ジャパン への風当たりが強まっ ているが、そんなアメ リカにも、笑みを浮か べて、ひたすらニッポン 歓迎の一角がある。北 米大陸のほぼ真ん中に あるミネソタ州と、サ ンベルトのアリゾナ州。 ここでは住宅開発に進 出した日本企業の、ま じめでキメ細かい仕事 ぶりが地元の人々をと りこにした。日本品締 め出しの嵐の中で、こ の二つのプロジェクトは、 これからの企業進出の 一つの方向を暗示して いる......
もう一つはアリゾナ の砂漠の中。 ......発展めざましい州 都フェニックスから北東
本文の一部をたどる と...... 全戸ベランダ 付き眺望絶景◆住居専 有面積=九二・九平方 メートル―二〇四・四 平方メートル◆販売 価格=千五百万円― 四千七百五十万円◆最 多価格帯=二千五百万 円◆駐車場=一戸に二 台まで無料◆共有施設 =屋内温水プール、ジ
現地の心と価値観を共有
米国で成功した住宅開発
社Stratford Capital グ ループの総帥として健
 
の国の企業にも門戸を
に三和銀行グループの 東洋不動産と日綿實業 が地元ディベロッパーと の合弁で、ゴルフ場付 きの分譲宅地を開発し た。近くにスコッツデー ルという高級住宅地が あるが、ゴツゴツした 岩山と、なだらかな砂 の山を見た時、ここに 人が住む町を作ろうと いう気が起こっただろう かと首を傾げてしまっ た......事実、話が持ち 込まれた時、親銀行の 三和を含めて尻込みし た......開発権利を握っ ていたジェリー・ネルソ
 
在のようである。 ばれている。 (つづく)
 
記事は次のように結
やがて日本の自動車 メーカーが現地生産に 乗り出した時、アメリ カ側が特にこだわったの は、部品などの“現地 調達率”だった。
 
追記すれば、アリゾ ナのプロジェクトを提案 したネルソン氏は、エ ール大からハーバードの
 

































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