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[ 9 ] 07/22/2022 YOMITIME・WWW.YOMITIME.COM・info@yomitime.com・
  1ギャラリー「ルンパルンパ」(石川)で開催された「統合失調」展で 作品「インサイドアウト 05」(後方壁・中央)の前に座る松下
2指紋をモチーフにした「FINGERPRINT」
■ 7 月 22 日(金)〜 8 月 21 日(日) ■オープニングレセプション:
 7 月 22 日 ( 金 )6 〜 9pm ■似顔絵&ライブペインティング実演:  7月 23 日(土)・24 日(日)2 〜 5pm ■会場:Mika Bushwick
21
22 10
 25 Thames St.,Brooklyn ■問合せ:admin@matzu.net
過剰な触覚性を作品に
日本独自の精神世界を追求
アーティスト 松下 竜也
DC G
 05
                                    松山スタジオに所 業し、東京で作家活 ◇ 属しブルックリンを拠 動をスタートさせた。  創作テーマは、視 点に活動するアーティ 個展・グループ展の 覚を通して感じる スト・松下竜也(まつ 他、映像制作にも取 触覚的な感覚、「視 した・たつや)は、「物 り組み、土手に穴を 覚的触覚性」。アー 心ついた頃から絵を 掘って暮らすどぶね ティストの村上隆が 描くのが好きだった」 ずみたちの生活空間 展開する現代美術 という。「幼稚園の と、意外な生態を記 の芸術運動および 頃は『迷路』にハマり、 録したドキュメンタリ 概念「スーパーフラット たくさん描いていた ー映画「どぶねずみ」(Superflat)」のステ ことを思い出します」。 は、2007年東京 ートメントを読んだ
奪胎(かんこつだったい) し、意味を置き換え るやり方が素晴らし
描き方にルールがな
い迷路は自由度が高
く、複雑に込み入っ
た絵が描けた時、喜
びを感じたそうだ。 れまでの作家活動
 解剖学者の三木 せると共に、松下が 茂夫からも影響を受 子どもの頃に熱中し け、「生物としての人 た迷路的な要素も観 間に対する考え方に、 て取れる。
を編み出した抽象画 家の白髪一雄、挑発 的な作風で知られる 前衛アーティストの工 藤哲巳などに、日本 独自の精神世界を感 じます。広いとは言 えない国土で、『共同 体』を維持するため
 7月 日から8月 日まで、松下を含 む松山スタジオ所属 アーティスト 人の作
 両親と妹の4人家 族で、小中高は地元 の愛知県で過ごした 松下。高校進学受 験がきっかけで、「画 家になりたい」と思 うようになり、東京 芸術大学美術学部に 入学。在学中に「高 橋藝友会賞」を受 賞、2006年に卒
に区切りをつけ、3 デザイナーに 転身すると、映像制 作会社で遊技機のビ
目からうろこが落ち ました」と打ち明ける。
ビデオフェスティバルで ことで閃いた。
優秀作品賞を受賞し た。  2013年、そ
 「伝統的な日本画 やアニメのセル画は、 平板で余白が多く
奥行きに欠ける、い
わゆる『平面(フラッ
ト)的』であるのが特 「統合失調」展に展
 「日本画と洋画は
表裏の関係です。日
本美術を海外へ伝え
るための『日本画』、
逆に西洋美術を日
本国内へ浸透させる の同調意識のような ための『洋画』。私は もの。脳で考える『理 元々、油絵科出身だ 念』ではなく、『食べ
品展「DECAGON(十 角形)」が開催(詳細
来が平面から発展す デオプロダクションを る『スーパーフラット』
担当。技術を磨いた ところで作家活動を 再開させ、2022 年、現代美術の中心 地、ニューヨークに拠 点を移した。
ならば、洋画の未来 は『ハイパーテクスチャ
徴です。日本画の未
示され、圧倒的な存
別記)。松下は新作 3点を披露し、似顔 絵イベントに両日共 に参加する。  制作過程において 日本と大きく違う 点を尋ねると、「東
ー(Hypertexture)= 視覚的触覚性』だと
ったこともあり、日 て寝る』という生理
本画だけでなく洋画 現象を基礎にした、 急ハンズがないこと
考えます」  「ハイパーテクスチャ
についても熟考しな 互いの『共感』を大切 ければならないと感 にする思想。それが じたことが、『視覚的 日本特有の精神性で 触覚性』に取り組む はないでしょうか」 きっかけとなりました」  さらに、アメリカ  松下はまた、近代 のアーティスト、ピー 以降、日本美術の多 ターハリーについて「、先 くに共通する特徴と 人たちの作品を換骨
が不便です」と笑う。 自ら迷路を描き、そ れをクリアする。難 解であればある程、 その達成感は計り知 れない。「視覚的触 覚性」という新たな 迷路を創造する松下 は、類例のないゴー ルを目指す。
ー」とは、松下が考 在感を放つオブジェ「イ して、「視覚的触覚
案した造語。「私が ンサイドアウト 」= 性の過剰さ」を挙げ
考える『洋画の特徴』 写真1=には、内臓 る。
とは、パースペクティ を連想させるヌルっ  「ドロドロでぐちゃ い」と評価。温故知 ブよりも写実的な質 とした質感が、「指 ぐちゃした不気味な 新、日本で生まれた 感表現にこだわり、紋」をモチーフにした もの、それが『過剰な「過剰な触覚性」にフ
テクスチャー(触覚性)「FINGERPRINT」= 触覚性』だと考えま を描くこと。そんな 写真2=には、虫が す。例えば、洋画家 特徴部分を抽出し、 這うようなムズムズ の高橋由一や岸田劉 抽象的に表現する、 感が感じられる。三 生が挑んだ写実、フ それが私の作品です」 木の解剖図を想起さ ット・ペインティング
ォーカスする。それが、 特徴的で日本特有の 新しい美術を創造す る、と松下は考える。 ◇










































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