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 1992 年 10 月、テキサス州オースティンで行われた NAFTA のセレモニーに出席した ヒルズ氏(前列中央)とブッシュ大統領(後列中央)Photo: Public domain
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り、アメリカだけでなく らした私から見ても、日 日本の消費者の利益も 本の諸物価はあまりに高 著しく損なっている」と すぎる、その元凶が何だ 主張したと伝えられてい とお考えになりますか? た。それについて尋ねると、 (現在の「安い日本」とは  「 。新規に参入 真逆の状況があった) する企業は、公正な競  「理由はいくつもあり 争を妨げない限り平等 ます。例えば、大規模 な条件を保障されるべき 店舗規制法という法律
成されてきた。ソニーの ります。同時にアメリカ 盛田さんのような企業 にもやるべきことがある 家も、商品を売り込め でしょう。何らかの産業
 海外出張の機会は、 ェール大学の同窓生で家 年暮れにも訪れた。 族ぐるみの付き合いをし  空前の円高を招いた ていたカーラ・ヒルズと 年のプラザ合意後も、 いう女性弁護士を起用
ジ色のスーツに身を包ん
で待ち構えていた。存在
感がすごい。
 「貿易に関わるすべて
の国が等しく市場を開
放した自由貿易こそが、 で、それが実現すれば、 があるためにアメリカに 世界全体の繁栄を実現 消費者にとって商品の幅、 よくある大型のディスカ する唯一の道だと信じて 品質、デザイン、機能、 ウント・ストアの展開 います」――articulate 価格など様々な面で選択 を妨げ、安価な商品が
国際ジャーナリスト 内田 忠男
る広大な市場があったか ら成功した。それなのに、 世界第2の規模を持つ日 本市場は非常に閉鎖的 です。これを開放すれば、 日本の経済的繁栄はさ らに長期にわたるでしょ う。消費者の選択の幅 が広がり、暮らしが一層 豊かになるのだから自明 のことです」 ――独禁法が十分機能 していないことも挙げら れるのでは?  「既にある法律や制度 を実効あらしめる努力
政策を打ち出すとか......  「そうは思いません。 政府が決める政策より、 市場の力の方がずっと効 果的です。東欧の例をご 覧なさい。政府が経済 を統制してきましたが、 市場の力と人々の意欲で 形成された経済とは勝 負になりませんでした。 だから産業政策を打ち 出す必要はない」  まさに、凛とした答 えだった。  当時と今日では、両 国の経済状況に大きな 違いがあり、対話の中身 を実感するのは難しいか もしれないが、ダンゴウ やケイレツなどの日本語 も織り込んで、日本市 場の構造と政府規制の 不条理を、具体的事例 を挙げてあくことなく指 摘し続けた。  「アメリカには日本に 対する強い不満がある。 ここにはフロンティア時 代から息づくフェアプレ イの精神が強く根付いて いるのです。フェアとは 不公平を排した平等と いうこと。平等を実現 しても日本人の害にはな りません」......この説得 力には脱帽するしかなか
日本の対米貿易黒字は していた。
減るどころか増え続け  ロースクールはイェール
ていた。繊維に始まり、 だが、学部はスタンフォ
鉄鋼、カラーテレビなど ードを優等で卒業した才
の家電製品から自動車 女。ロサンゼルスの連邦
に広がった日米間の貿易 検事補を務めていた時、 という形容詞を実感す の幅が広がり大きな利 出回りにくくなっている。
摩擦は、 年代後半に ニクソン政権で独占禁 は半導体など先端技術 止法担当の司法次官補 分野にも広がり、アメリ に抜擢され、フォード政 カ連邦議会は、強力な 権では住宅都市開発長 報復制裁を課す新通商 官として入閣した。民 法・スーパー301条を 間に戻って弁護士開業後 通過させ、政府に対日 は、 の社外役員 強行措置を迫っていた。 や、女性弁護士会の会 レーガン政権を引き継い 長を務めた。 だブッシュ(父)政権も就  そのヒルズ代表に直に 任早々から、対日貿易 会って、アメリカ側の本 赤字が減らないのは日本 音を聞き出そうと考え 側の非関税障壁など市 た。 場自体の構造的な閉鎖  「ホリデイの後なら良 性に起因するとして、日 いでしょう」――ホリデ 本経済の抜本的構造改 イはむろん、クリスマス 革を迫る「構造協議」な を指す。この年、クリス るものを 年7月の日米 マスは月曜日で、金曜日 首脳会談で提案、宇野 の 日にアポイントメン 宗佑首相が呑まされた。 トが取れた。例によって  構造協議のアメリカ側 ギリギリの日程で、 日 の主役は =通 だけスタジオ出演を休む 商代表部である。総勢 ことにしてワシントンに 150人足らずのこじ 飛んだ。 んまりした役所だったが、  ヒルズさんは私より5 そのトップはレッキとした つ年長の当時 歳。閣 閣僚の身分を持つ。ブッ 僚の執務室としては簡素 シュ大統領は、ここにイ な部屋に、明るいオレン
る明快な語調で自らの 益になる。売り手の間に 土地政策の貧困は、非 信念を披瀝する。 競争が起きれば価格は 常識としか言いようのな  これまでに開かれた日 下がるのだから、これ一 い地下の高騰をもたら 米構造改革協議の場で、 つとっても消費者には大 し、それがあらゆる商
「日本政府の干渉や規 変な朗報になるでしょう」  品に転嫁されるから、そ 制がフェアな貿易を阻害 ――前年9月まで 年 れだけでも高物価の原因 する基本要因になってお にわたってアメリカで暮 になるが、それだけでな
のダンゴウを例にとっても、 年に刑事告発(石油闇 カルテル事件を指す)さ れて以後は、告発事例 が1件もない。アメリカ では、毎年160件前
ヒルズ女史が指摘した 日本市場の構造と政府規制
日本の消費者は一度も、 王様になったことがない んです。こうした構図を 打開するのに、良いお考 えがありますか?  「日本経済の成功は、 世界中とりわけアメリカ の開放市場を前提に達
な競争原理が働かなく なっている。日本にとって 最良の選択とは、企業の 未来を保証することであ り、同時に消費者の未 来を保証することです」 ――日本がなすべきこと が沢山あるのはよくわか
った。
(つづく)
く、新たにビジネスを始 めようとする人や企業に とっては、地価高騰が大 きな障害になる。その結 果競争が阻害され、高 い価格で売る業者がヌク ヌクと暴利を貪り続ける のです。政府の規制や意 味のない繁雑な手続きが 新たに市場に入ろうと する企業の前に壁となっ て立ちはだかるケースも 多い。これら反競争的な 要因を洗い出し、改善 すれば日本の物価はかな りやすくなるはずです」
 当時の私には、彼女の
言い分の方が日本の官僚
の言うことよりずっと実
態を映していると感じた
ものだった。そこでさら
に質問を続ける。
――日米共同調査の結
果を見ると、東京の物
価はニューヨークより 同士の共謀や反競争的
 「ここで強調しておき
たいのは、すべてが市場
開放という一点に結びつ
くこと。日本は世界第
二位の大きな市場を持っ
ている(当時はまだそう
だった)が、そこに参入
するのは本当に至難の業
なのです。私自身、日本
とアメリカでいろいろな
店を回って体験したこと
だが、日本国内で提供
されている日本製品の種
類が、ニューヨークで売ら
れている日本製品の種類
より少ないんです。ご存
じでしたか? 日本製を
買うのに東京よりニュー
ヨークの方が3倍も選択
の幅が広いなんて......」 も必要です。業界内部
取引を排除する背景にな っている。もう一つ、日 本特有のケイレツ取引の ために、系列外の会社と 中で除け者にされてきた。 の関係が阻まれ、正常
%高い......日本の消費 者は長いこと官僚、政 治家、そして一部企業の もたれ合いという構図の
後が刑事事件になって、 そうした厳しさが業者

























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