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[ 5 ] 08/05/2022 YOMITIME・WWW.YOMITIME.COM・info@yomitime.com・
  オガワは自身の父親(写真上)と自身の息子(写真下)の2役を演じる
All photos : The Nosebleed - Aya Ogawa. Credit to Julieta Cervantes
The Nosebleed - 鼻血
■8月28日(日)まで
■会場:Claire Tow Theater at Lincoln Center  150 W. 65th St.
 (bet. Broadway & Amsterdam Ave.)
■ $30 ■上演時間 70 分(休憩無し)
■ https://www.lct.org/shows/nosebleed
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 父さんを恨んでいるのは誰? 「鼻血」から見えてくる家族の絆
劇作家 / 演出家 アヤ・オガワ
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親が脳裏に浮かん できませんし、私の イレクトに表現して だ。父が他界した時、 記憶も完全ではない。 いる。
人」という子どもた ちの環境は、アメリ カで移民として育っ たオガワのものとは また異なる。文化、 アイデンティティー、 血縁とは何かを改め て自身に問いかけた 時、ひとつの事実を 見つけた。  「すべての人間は誰
ー内「クレア・トウ・ 歳年上の兄がいます
 今回、「鼻血」のキ  「アヤ」の多様な側 ャストはオガワを含 面を形にしたいと思
シアター」で8月 日 が、引っ越しが多かっ (日)まで、劇作家 たため、兄は東京の /演出家/パフォーマ 祖母宅や学校の寮に ーのアヤ・オガワが 住んでいました」。日 手がけた現代劇「The 本とアメリカ、兄妹 Nosebleed―鼻血」は異なる環境で別々
それでも、思い出の  「私はアメリカと
パズルを集め、組み 日本を行き来してい
合わせることで、自 た子ども時代、違和
分の気持ちが整理で 感を感じていました。
きるのではないかと」 どちらの環境もしっ
 自伝を、父親のこ くりこない、自分だ
とを書く、と決めた けが違う、自分には
時点で、「自分が父 『家』(home)が無い
を演じる」ことはオ という感覚。そんな
ガワの既定路線だっ 中で出会った『演劇』 かの子どもであると た。 は、私の『家』であり、 いうこと。どんなに  「誰かを演じるとい 『家族』になった。想 異なる環境で過ごそ う行為は、演じる側 像力だけで他者と深 うとも、これは不変 と演じられる側で最 い関係を生み出せる です。苦手だった父 も親密な関係を持つ 素晴らしい手段です」 も誰かの子どもだっ こと。時には暴力的  息子たちにも日本 た。そんな当たり前 でもあり、時には最 語や日本文化に触れ のコトに思い至った 大の敬意を表す行為 させたいと、毎年夏、 時、コミュニティへの にも繋がる。私の視 訪日していたオガワ。 愛情や責任感が生ま 点から見た『父』では ある年、眠っていた れてきました。同時に、 なく、私が知らなか 長男が寝返りをうっ 私もまた大きな人類 ちに『家族とは何か』 った父を、『父の視点』 た時に次男をパンチ。 の流れに繋がっている
が上演中。 年前に に育った。 死去した父親と、オ   歳で再び来米、 ガワ自身の関係性を 高校卒業までカリフ 掘り下げた自叙伝的 ォルニアで過ごした
を演じている。
 物語は4人の「ア
ヤ」に問いかける=
今、父さんを憎んで として、自らのもろ リカで成長したオガ
な作品だ。 ◇
後、ニューヨークの大 いるのは誰?=。 さを見せないと公平 ワの目に、「人間的に 学へ入学、台本を書  「『鼻血』に登場す では無い、と気が付 欠けている」と映って き始めた。卒業後、るアヤ、つまり私は、いたのです」   いた。そんな彼女が 俳優として映画やテ 過去・記憶・未来の  これまでの人生で 変化したのは、自ら
 「小学生の頃から
演劇に興味を持ち、
舞台に立つことに憧
れていました。高校
で演劇の先生に励ま いがけない現実に直
されたこともあり、 面する。
役者を、舞台の仕事  「アメリカで描かれ
をやりたい、と強く る『アジア人』が、あ メリカ人の自分が日 意識したことを覚え まりにも情けないも 本人の自分に対する ています」 のばかりだったのです。 考え方など、その感  東京生まれのオ 呆れてしまいました」 情は環境、状況、時 ガワは、2歳で両親  これはオリジナル 間によっても異なるも とともにアメリカへ。 作品を作るしかない、 の。そんな複雑で、 6歳で再び東京に戻 と決意。劇作家の道 絶えず変化する『心』
最大の失敗は何か、 が母親になってからだ と振り返った時、父 った。
り、アメリカン・ス を歩み始めた。
を、舞台で表現した
った父との関係を取 と感じています」 でも描いていますが、 り戻したい、父を理  オガワはさらに、 時差ボケで疲れてい
レビ、演劇界へ飛び 込んだが、そこで思
希望という中に存在 する『複数のアヤ』を 示唆しています。現 在の自分が過去の自 分に抱く気持ち、ア
めて6人。オガワは ったキッカケは「、失敗」 自身の父と自身の息 だった。
子の2役。その他、  「『失敗』をテーマ
男性が1人、残り4 に、いろんなコラボ で、私にとっては理解 人が「アヤ・オガワ」レーターたちの『失敗 しがたく、とても『異
物語』を盛り込んだ 色』な存在でした」 作品を作っていた際、  感情を表に出さな 私も責任者・主宰者 い寡黙な父は、アメ
オガワは葬式も何も しなかったという。  「父はいわゆる『無 口な昭和のオヤジ』
 「私には現在、パー トナーとの間にでき た 歳と9歳の息子 がいます。子どもを 産み、育てているう
ということが分かって から見つめ直し、『父 次男が大量の鼻血を きた。父から私、子 を体現』することで、 流したという出来事 どもたちへの繋がり 彼自身の人間性を体 があった。 を考えた時、不仲だ 験することができた  「この様子は舞台
という確信。それが 広い意味での『家族』 だと思っています」  ひとりの娘が、嫌 悪していた父親を理 解しようと書いた「鼻 血」。不可解で不条 理、コミカルでユーモ アと愛情に溢れた家 族の物語だ。
解したいと痛感しま 自分の息子を演じる した。ですが、亡く ことで、「自身」を通 なった父が自らの行 して「父」と「息子」が 動を説明することは 繋がっていることをダ
るところ、夜中に子 どもが血まみれ。日 本に『帰った』とはい いますが、そこには 家族や友人、コミュ ニティーとの繋がりは ありません。それな のに、なぜ大変な思 いをして子どもたち を日本へ連れてきた のだろうと考えてし まいました」  アメリカ生まれで
「アジア系アメリカ





































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