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ジャパン・ソサエティー映画祭「女性映画人の視点」 ジャパン・ソサエティーと文化庁の共催プロジェ クト「THE FEMALE GAZE 〜女性映画人の視点〜 Women Filmmakers from JAPAN CUTS and Beyond」が 11 月 11 日から 20 日まで開催された。来米した 2 人の監督に、制作秘話を聞いた。
  「女性の多様な生き方を滑り込ませ」
 「友達でも家族でもない、でも孤独ではない」
    HN K
「ウェディング・ハイ」大九明子 監督
 「川っぺりムコリッタ」荻上直子監督
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 荻上直子(おぎが 避け、静かな毎日を
み・なおこ)監督が 送りたい山田だが、 原作・脚本も手がけ 無神経な隣人の島田
た「川っぺりムコリッ (ムロツヨシ)、墓石
タ」。塩辛工場で働 販売員の溝口(吉岡
く前科者の青年・ 秀隆)、未亡人で大 山田(松山ケンイチ) 家の南(満島ひかり) は、社長から古い安 たちと次第に関わり
アパート「ハイツ・ム 合いを持っていく。そ
コリッタ」を紹介され んなある日、山田は ックを受けると同時 入居。人との交流を 父が孤独死したこと に、そんな遺骨を題
は、「イタリアの映画 ろもあり、不思議な 祭で偶然お会いした 歌詞からインスピレ ことがきっかけです。 ーションを受けたこと
迷惑行動をとってし り上げた。 だが、場面の転換を  大九監督が結婚を 本は制度としての結 まう状態を表した和  「通常、脚本は自 滑らかに流れる音楽、テーマにした一番好き 婚に問題がありすぎ 製英語。本作「ウェデ 分で書きますが、本 芸術的と言える鮮や な映画はスサンネ・ る」と熱弁する。 ィング・ハイ」は、お 作の企画を頂いた時 かな映像と演出を散 ビア監督の「アフター・  「本作を結婚礼賛 笑いの天才、バカリ 点で既に第六稿まで りばめることで、笑 ウェディング」で、非常 だけにはしたくあり ズムが脚本を担当。のシナリオがありま いのローラーコースタ に暗い作品だと言う。ませんでした。映画
て見える。主人公は この「結婚式」という
結婚式に人生を捧げ した。私の役目は、ーに乗せた観客を、「もし、私が同じテ るウェディングプラン 映画監督として与え 飽きさせることなく ーマで映画を作った ナーに扮する篠原涼 られた隙間に如何に グイグイとエンディン ら、ものすごく重苦 子を始めとした豪華 私なりの笑いと思い グまで引っ張っていく。 しいものになっていた キャストが繰り広げ を滑り込ませていけ  「これまでの制作で と思います」。そんな る笑いと感動のオー るかということでした」 も、少しふざけ気味 「陰」の要素を秘め ケストレーションだ。  結婚式に出席した にアプローチしたり、 た監督と、笑いの王
大河ドラマは、新郎 新婦だけではなく、 未婚、既婚に関わら ず、出席者ひとり一 人が作り出している ものであること。式
 同映画祭でオープ(おおく・あきこ) 「至ってシンプルだ 個性的なキャラクタ 現場や編集でも笑い 様バカリズムが生む ニングを飾ったコメ 監督を温かい拍手で った」というお笑い ーたちが、招待され を織り交ぜようとし 「陽」の脚本が、心 ディ・エンターテイメ 迎えた。 直球ど真ん中を攻 るまでの経緯を写真、たり。自分が笑いた 地良いコントラスト ント映画「ウェディン ◇ めるシナリオに、大 動画、 投稿な いから笑いを探りに を生み出している。 グ・ハイ」。当日は雨  『ウェディングハイ』 九監督は、畳み込む どの回想シーンで巧 行く、という癖があ  現代社会におい にもかかわらず多く とは、結婚式を間近 ような歯切れよいカ みに繋ぎ、次から次 るんです」と話すが、て結婚式とは、男
を見て、怒りを覚え
るとか、主人公が許
せないとか、そうい
う感情が生まれるの
は良いのですが、観
客に、自分との接点
が全くない、つまり
置き去りにされたと
思わせることだけは
絶対に避けたかった」
 そんな監督が描く
キャラクターには、各々
が感じる、悲しみ、婚」は大きな意味を ない宴「ウェディング・ 苦しみ、そして笑いと 持ち、「結婚式」もま ハイ」を楽しむこと
の映画ファンが集結、に控えた新郎新婦が ットと鮮やかな映像 へと語り繋いでいく。実際のところ単にお 上映後には日本から 幸せのあまりハイテン で、結婚式を舞台に テンポの速さに置い 笑いが好きなだけで 駆けつけた大九明子 ションになり、周囲に した人生ドラマを作 てけぼりになりそう はないようだ。
女だけではなく のカップ ルでも行われるが「、日
「栄光」が共存、誰 た、人生の重要な一 ができるだろう。
を知らされる。  「元々のアイデアは、
の番組『クロ ーズアップ現代』で見 た孤独死についての ドキュメンタリー。引 き取り手のない遺骨 が市役所にたくさん
富山の「黒い塩辛」が
有名だったことから
選んだという。タイ
トルの「川っぺり」につ
いて監督は「、私自身、
川沿いに 年程住ん
でいます」と話す。
 「私の周囲の時間は
川の流れのようにゆ
ったりとし、リラック
スできていると感じ
ます。やはり川がそ
うさせてくれているの
でしょう。川っぺりに
はいろんな顔があり、 同作には豪華キャ「知久さんの曲『夕 です」 ホームレスのおじさん、ストが集結。 暮れ時のさびしさに』 そしてペットにヤ 川沿いを歩く人、ジ  青森出身で津軽弁 が大好き。本作の世 ギが登場する。「ココ
あることを知り、ショ
さが主人公のイメー けました」。 ジにぴったりでした」  子役の2人(南の と説明。 娘、溝口の息子)は  「島田」探しは難航 全くの素人を富山 したそうだが、「ムロ でキャスティングした。 さんは根がチャーミ 「好奇心からカメラ ングな方。どこか憎 を必要以上に見つめ めない、という島田 ていたり、セリフも
材に物語を作りたい 皆の生活の一部になっ
と思いました」 ていると考えていま
 映画の舞台は富 す」。水の流れを見て
山、とある川の近く。 いると「心が休まる」 好青年で、その純朴 で、一気に脚本が書
元へ強引に押しかけ た島田は、「ご飯って ね、ひとりで食べる より誰かと食べたほ うが美味しいのよ」と、 子どものような笑顔 を見せる。
そうだ。
 一方、心地よい川 沿いでも、ひとたび 自然災害が起きれば 危険なエリアに変貌 する。劇中で「川べ りに住むことで生命 のギリギリを感じて いたい」と話す山田 から、川とは「生と死」 たと思います」
の両面を合わせ持つ 存在であることに気 付かされる。
 フォークロック・バ ンド「たま」で活動し た知久寿焼は、ホー ムレス役として出演。
◇ ぺりのムコリッタで出  荻上監督作品の特 会った人々は、友達 徴とも言える「食卓」 でも家族でもない他 は本作でも健在。ご 人、だが皆、孤独で 飯を焚き、おかずは はない。そこには短 塩辛だけという質 いながらも、ささや 素なものだ。ひとり かな「幸せ」が満ちて で食べていた山田の いる。(ケーシー谷口)
◇
ョギングする人など、 を話す松山ケンイチ 界観と一致するとこ にヤギが居たら面白
のキャラクターに合っ
普通に忘れてしまっ たり(笑)。いわば演 技をしようとする役 者さんとは真逆の立 場で、その佇まいが とてもナチュラルなん
もが少なからず輝い ページを担っている。
(河野洋)
バツイチ・独身とい
う設定だ。
 「結婚式の仕事を
しているからと言っ
て、決して結婚が全
てと言うわけではな
く、女性の生き方の に出席していない人 多様性を滑り込ませ 物でさえも、ウェディ たいという思いがあ ング・プランナーが りました。この作品 プランしきれないハ は、披露宴という特 プニングを引き起こ 別な一日の為だけに、 すことがあることを、 全力で頑張っている人 大九監督は実にドラ たちの物語でもあり マチックなコメディと ます」 して再構成。監督が
◇ 意図した通り、誰も  人生において「結 取り残されることが
いなと(笑)。役者さ
んたちが演技中、状
況に拘わらず突然ヤ
ギが鳴く。皆で一つ
の物語を作ろうと演
技する中に紛れ込ん
だ『自然体』の存在。
松山さんは『ものす  タイトルにある「ム ごく刺激を受けまし コリッタ(牟呼栗多)」 た』と言って下さいま とは、仏教における した」。ヤギをキャス 時間の単位のひとつ ティングしたことで、 で1/ 日、 分程 作品にさらなる深み 度だ。ゆったりとし が生まれたようだ。 た時間が流れる川っ







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