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[ 9 ] 5/31/2024 YOMITIME・WWW.YOMITIME.COM・info@yomitime.com・
谷口 恵子 KEIKO TANIGUCHI
茶道アーティスト(出身:鳥取県) ★お茶は「コミュニケーションツール」 高校卒業までを過ごした鳥取での生活が、今の 活動の原点です。実家では家族でお茶を入れ合っ ていました。抹茶ではなく、ほうじ茶や緑茶など、 一般的なお茶を急須に入れて分け合う。誰かが 学校や職場から帰ってくると、家にいた人がお 茶を入れ、週末は1日に5回ほどお茶を入れてい たと思います。お正月には、祖母の和室を茶室 風に改造し、祖母の点てた抹茶を飲むのも家族
の習慣。祖母と母は、裏千家の稽古経験者でしたが、新年のお茶はカジュアルで恒例の楽 しい行事。お茶は、我が家のコミュニケーションツールでした。
★祖母からのプレゼント ジェンダー教育や語学、異文化コミュニケーションに興味があったことから、大学はフェ リス女学院大学に進学しました。学校のカリキュラムで、自分の意見を効果的に伝える トレーニングがあり、「聞く力と伝える力」が同じように大切であることを学びました。 ある日、母からの荷物に森下典子著の「日々是好日」という書がありました。祖母から のプレゼントで、「好きだと思います、ぜひ読んでみてください」と、簡単な手紙が添 えられていました。その本を読んだことから、茶道を通じて季節を感じたり、新しい喜 びを感じたいと思うようになり、2016年に稽古を開始。茶道を始めて良かったことは、 自分の生活に会社や学校と関係ない新しいコミュニティーができたことです。また、稽 古をしていない時でも、季節の植物や季語に敏感になったこと、時の流れを感じながら 過ごせるようになったことが魅力です。 ★ニューヨークで出会った自由なアーティストたち 大学卒業後、仕事で英語を使う場面がどんどん増えていったのですが、調べながら英語 でコミュニケーションをとることがストレスで、「ある程度は英語を話せるようになり たい」と考えるようになっていました。仕事として英語を使いこなすには、日常会話レ ベルでは間に合わないことばかりでしたので、留学を決意。NYに姉夫婦が住んでいた ことから、この街を選びました。NYで、二足の草鞋で、のびのびと表現活動をしてい る人々にたくさん出会ったことで、「アーティスト活動」というものを柔軟に考えられ るようになりました。また、アウトサイダーアートやセルフ・トウト・アーティスト
(Self-taught Artists)を知り、「美術大学を卒業していなくても、製作一本で生活し ていなくてもアーティストと呼べるのか、自由でいいな」と。様々なタイミングが重なり、 友人たちのサポートと応援を受けながら、表現活動を始めるようになりました。 ★「茶道アーティスト」として活動 日本で茶道は「総合芸術である」とされていますが、茶室を作り人を招待してお茶を点 てようとすると、一人の技量ではとても及びません。私はお免状をいただいていないた め、人に教えることは難しく、お茶道具も伝統的な茶室も準備ができません。いろいろ なものが足りない中で、自分の持っているものを活用して人とお茶を楽しみたい。そこ で私は、現代アーティストや建築家の皆さんとコラボレーションすることにしました。 自分なりの表現をしたいと考え、展覧会企画を開始。同時に、協力者を探す際、茶道と は関係のないアーティストと一緒にやりたいという思いがありました。伝統文化として、 歴史とルールがある世界なので、どうしても「やってはいけないこと」に敏感になります。 そういった私の壁を、現代アーティストや茶道関係でない人となら突破できるのではな
いかと考えました。実際、2024年4月に開催した展示「東風床(こちどこ)」でお茶を点ててい ると、子どもの秘密基地にいるように感じました。人が集い、何か楽しい作戦を立てられそうな 雰囲気を持った、私たちの製作過程がストレートに具現化された場所になりました。 ★将来のビジョン アーティストとして、お茶に関わる表現を続けたい。一つはお茶を飲んで話すという日常風景を アートの場で作りたい。もう一つは、茶道のアクセシビリティをあげる活動を続けたいです。お 茶や茶道の、歴史や伝統を勉強し続け、敬意を表しながら、自分も来場者もそこでの体験を楽し める場所を目指したいです。 また、私がプロジェクトやパフォーマンスを続ける中で、来場者が数年後にまた足を運んで、パ フォーマーとしての成長を見届けるだけでなく、参加者自身が境遇の変化に思いを巡らす機会に なればすごく嬉しいです。現在は茶道の稽古を続けながら、夏の野点に関するビデオ作品に取り 掛かっています。音楽家とのコラボレーションや、ニュー ヨークのギャラリーでのパフォーマンスなど、「東風床」を 通じて知り合った人々と、次のプロジェクトを計画中。実
現に向けて努力を続けていきます。
Christine Kozel, Sostis
Miho Hiranouchi, Dreamy Seed
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Ayane Kurai,
Patience, Courage, Grit and Tenderness
Ayakoh Furukawa-Leonart, The Wisdom of Water (detail)
■6月4日(火)〜 15 日(土) ■オープニングレセプション:8日(土)4 〜7pm ※ 5:30pm からバーチャルライブ配信:要登録 sjacny.org/contact
■会場:Gallery Max New York
552 Broadway #401, Buzz #9
■ TEL: 212-925-7017
■問合せ:SJAC HP から www.sjacny.org
第7回 SJAC 年次展
日米親睦と交流
ギャラリーマックスで
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contact
SNS @keiko_taniguchi_
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ニューヨークを拠点 とする日米のアーテ ィスト・コミュニティ ー「SJAC(エス
SJACは20 17年6月発足。 以来、年次展を軸 に毎年いくつかの個 展・グループ展を企 画・運営し、日米 芸術家の親睦と文 化交流を図っている。
大野廣子、及川ひ ニューヨーク育英学園 ろみ、奥村泰子、 英語で学ぶ米建国の歴史
統領になったことに、 の教科書に基づいて
ジャック:Society of Japanese and American
大槻素子、佐治宣 子、鈴木克美、竹 田あけみ、イズ・ワ タナベ、由賀子ほか。 日本からはシアカ章 子、行近壯之助が
学習するために毎年 行っている恒例行事 だ。 これに先立ち育英 学園は、移動教室で の学びがより有益な ものになるよう、英 語の授業で2時間の 事前学習を行い、米 国の初代大統領ジョ ージ・ワシントンにつ
とても驚いていた。 訪問先となる国会 議事堂や、その周辺 のナショナルモールに ある記念碑、戦争慰 霊碑についても、ス ライドを見ながら学 習し、アメリカ合衆 国政府の三権分立や 議会の仕組みについ ても学んだ。 育英学園では、小 学校3年生から日本
社会を学習している が、アメリカならで はの英語による生き た社会科は育英なら ではのカリキュラムだ。 ワシントンDCの 移動教室の報告会 は、6月2日(日)の 日曜参観日に実施さ れる予定。この日は オープンハウスも行 われる。
Creators)」の第7 回年次展覧会が、今回のグループ展は、出品する。
6月4日(火)から 日(土)まで、ソー ホーのギャラリーマッ クス・ニューヨークで
ニューヨーク在住作 家 人(そのうち初 参加が5人)と、日 本からのメンバー2 人が参加する。 このうち日本人 作家は、板東綾 子、古川レオナー ト文香、平之内美 穂、廣瀬公美、百 田和子、鞍井綾音、 久住真理子、神舘 美会子、永野みき、
ニューヨーク育英学
開催される。 オープニングレ セプションは6月8 日(土)午後4〜7 時。5時 分からは、 アーティスト・イン タビューなどのバーチ
園全日制部門小学部 (ニュージャージー州 イングルウッドクリフ
ャルライブも配信さ れる。
ス、岡本徹学園長) いて学んだ。 の5、6年生が5月 生徒らは、ワシン 日から 日まで、 トンが自分たちと 移動教室(修学旅行) 同じ年齢の 歳の時 で米国の首都ワシン に、父親の死で退学 トンDCを訪れた。しなければならなか この国の歴史や伝統 ったこと、そのワシン を、実体験を通して トンがのちに初代大
日常風景をアートの場で作りたい