2019年4月12日号 Vol.347

革新的な作品紹介
松本監督「薔薇の葬列」「修羅」ほか
「アート・オブ・ザ・リアル」

アート・オブ・ザ・リアル
「宇宙市民」Citizens of the Cosmos, Anton Vidokle, USA, 2019

アート・オブ・ザ・リアル
「薔薇の葬列」Funeral Parade of Roses, Toshio Matsumoto, Japan,1969

アート・オブ・ザ・リアル
「修羅」Demons, Toshio Matsumoto, Japan, 1971


今年6回目を迎える映画祭「アート・オブ・ザ・リアル」(主催:フィルム・ソサエティー・オブ・リンカーンセンター)が、4月18日(木)から28日(日)まで、フランチェスカ・ビール・ シアターで開催される。主に、史実や記録に基づいたノンフィクション、ハイブリッド・フィルム(ドキュメンタリーにフィクション要素を加えるなど、2つ以上のジャンルを組み合わせた作品)など、革新的な作品を上映する。

今回は、2017年4月に他界した松本俊夫監督に敬意を表した特集が開催される。
日本の実験映画とビデオアートの先駆者として知られる松本監督。50年代の前衛的な実験映画、60年代の表現力豊かなネオドキュメンタリー、70年代から80年代にかけて急成長したビデオ映像をいち早く取り入れた作品など、日本の映像表現に革命をもたらした。
「エクスペリメンタル・ショート・プログラム」(23日)では、3分から12分までの実験映画6本「バイブレーション」「ディレイ・エクスポージャー」「シフト(断層)」「メタスタシス(新陳代謝)」「アートマン」「つぶれかかった右眼のために」を(全47分)、「ドキュメンタリー・ショート・プログラム」(21日)では、短編3本「西陣」「石の詩」「銀輪」を上映(全62分)する。
松本俊夫の監督デビュー作「銀輪」は、日本自転車工業会のPR用に制作された短編。自転車に憧れる少年を幻想的に描いたシネポエムだ。

松本監督初の劇場用長編映画「薔薇の葬列」(27日)は、ギリシャ悲劇の最高傑作「オイディプス王」がモチーフ。
60年代後半の新宿、原宿、六本木を舞台に、ゲイバーのオーナー、ママ、ナンバーワンの売れっ子(全て男性)の三角関係を軸とした物語。妖艶なゲイボーイとしてデビューしたピーター(池畑慎之介)も話題となった異色作。

松本監督の劇場用長編映画第2作は、鶴屋南北の狂言「盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)」を映画化した「修羅」(20日)。
芸者の小万に魅せられた権五兵衛は、彼女を身請けするため、主君の仇討ち資金100両を持ち出す。ところが小万には夫と子がいることを知り激怒、彼女と子を殺害してしまう。「凄惨な復讐劇をスタイリッシュに描いた」と評される時代劇。

コンテンポラリーアーティストのアントン・ヴィドクルが手掛けた「Citizens of the Cosmos(宇宙市民)」は、日本で撮影した短編(24日、長編「アシッド・フォレスト」と同時上映)。
20世紀初頭に発生した「ロシア宇宙主義」は、革命に湧くロシアで宇宙を哲学的・文化的に捉えようとした運動で、「死」こそが社会平等の根源であると考えられた。映画はこの「ロシア宇宙主義」を現代の日本で展開。墓地や神社を舞台に、日本人が持つ「死」の概念や神秘主義と、「ロシア宇宙主義」を共鳴させた。上映は日本語・英語字幕。

ブルックリンの「バー・ライカ」との共催で、2本が無料上映される。アーティストでフィルムメーカーのエリック・ボードレール(21日)と、学者で批評家のエリカ・バスサム(28日)の作品。
全スケジュール詳細はオフィシャルサイトで。

Art of the Real
■4月18日(木)〜28日(日)
■会場:Francesca Beale Theater
 144 W. 65th St.
■$15、学生$12
 シニア&メンバー$10
www.filmlinc.org

○Experimental Shorts Program
 4//23 (7:00pm)
○Documentary Shorts Program
 4/21(6:45pm)
○薔薇の葬列 4/27 (9:00pm)
○修羅 4/20 (8:45pm)
○Citizens of the Cosmos
 4/24(8:45pm)
★無料上映
○Eric Baudelaire
 4/21 (9:00pm)
○Erika Balsom
 4/28 (9:00pm)
■会場:Bar Laika
 224 Greene Ave, Brooklyn
www.laika.bar


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