2019年4月26日号 Vol.348

安珍・清姫の恋物語
コメディーと情念絡めた野心作
チェンバーオペラ「道成寺」

道成寺

道成寺

道成寺
脚本と音楽を手掛けた斎藤氏


修行僧・安珍と、真砂庄司の娘・清姫の悲恋をチェンバー・オペラで描いた「道成寺」が5月14日(火)、カーネギー・ワイルリサイタル・ホールで上演される。
手掛けたのは、緑内障研究所で働く人々をサポートする傍ら、音楽プロデュースも行うリヨ・斎藤氏。同氏2作目となる野心作だ。公演準備に追われる斎藤氏から、あらすじに添った「みどころ」が届いた。

5日間の熊野本宮大社への参拝に出た安珍。日が暮れはじめ、清姫の家に一夜の宿を乞う。清姫は若くてハンサムな安珍に一目惚れ。安珍が寝静まった頃、清姫は安珍の寝室に忍び込み、一夜を過ごす。翌朝、清姫と5日後の再会を約束し、安珍は出立する。
2日目、日が暮れはじめ、安珍は障子越しに見る鈴に思いを寄せ、一夜の宿を乞う。翌朝、安珍は鈴と4日後の再会を約束する。
「安珍はまるでモーツアルトのジョン・ジオバンニのようなプレイ・ボーイ。ここではアリア2曲で心の動きを表現しました。1曲目はデュエットで愛する気持ちを唄う『ワァウ、ワァウ、ワァウ』。2曲目は鈴のアリアで『私の秘密の日記帳』。アカペラで唄うシーンも聴きどころです」
無事に大社へ到着した安珍。老僧は安珍の乱れた行動を見抜き忠告する。改心した安珍は2人と再開する約束を破り、家路につく。
それを知らない清姫。安珍を待ちかねた末に、魔法の鏡で安珍と鈴の浮気に気付き、復讐へ向かう。
「清姫が唄うアリア『5日過ぎたけど』は、ピアノとクラリネットとの掛け合いが醸し出すリベンジソング。清姫の喪失感と怒りを感じてください」
清姫は鈴を誘い、2人で安珍に復讐しようとするが、鈴は鏡に映らない清姫が魔物だと気付き、女中頭の高子にメモを残す。
「ここで高子が登場、アリア『なんでいつもこの甘ったれ娘(鈴)は私を呼ぶの?』を歌います。バリトンの男性が高子、老僧、ボートマンの3役を演じます」
鈴のメモに気づいた高子は、彼女を救おうと、清姫の後を追う。
一方、日高川に到着した安珍。船頭に「酒がいくらでも飲める分を払うから」と、向こう岸に渡るよう頼む。それを見た清姫、着物を脱ぎ捨て川に飛び込み、安珍を追う。
第1のクライマックス。心から安珍を愛した清姫は大蛇に変身。角を出し火を吐きながら、安珍に迫る。疲れ果てた船頭の代わりに船を漕ぐ安珍は、寒さを訴える船頭に自分の上着を差し出す。大蛇と化した清姫は、僧侶の上着を身につけた船頭を安珍だと思い、絞め殺す。
「必死で岸にたどり着いた安珍は、アリア『自分も死ぬのか?』を歌います。哀愁に満ちたピアノと歌が聴きどころ。安珍の後悔や不安が、心に響くでしょう」
道成寺への矢印を見つけた安珍は、最後のチャンスに賭ける。大きな鐘の中に隠れようと一気に62歩の石段を駆け上るのだった。
「ここではピアノのソロが、安珍の波打つ鼓動と気持ちをドラマティックに表現します」
第2のクライマックス。大蛇が火を吐き、龍頭となり、鐘の中に隠れた安珍を探し出す。涙した龍頭は、安珍の心を取り戻そうと最後のチャンスに賭ける。
「恋慕、哀愁、憎悪、殺意そして怨念。ピアノとクラリネットとともに、大蛇となった清姫が最後の魔力を絞り出します」

日本の寓話にコメディーと情念を絡み合わせた、斎藤氏の「道成寺」。
「物語から千年が経ち、笑いが欲しくなりました。オリジナルは悲劇ですが、同作では聴衆から最後の一瞬の、『笑い声』を聞いてみたい」と、話す.。
さて、安珍と清姫の運命や如何に…。

チェンバーオペラ「道成寺」
5月14日(火)7:00pm
会場:カーネギー・ワイルリサイタルホール
チケット
バルコニー:$50
オーケストラ:$120
カーネギーチャージ:Tel 212-247-7800
www.carnegiehall.org


ニューヨーク緑内障リサーチ・インスティチュートのための
ファンドレイジング公演/緑内障のための基金
Knachshon@nyee.edu (担当者:Kay)

★公演後、日本クラブでキャストを囲んでレセプションを行います。
 参加希望者はチェックを添えて下記までお申込みください。
●日本クラブ:145 W. 57 St.(カーネギーホール向かい)
●参加費:$50
●申込み:New York Glaucoma Reseadch Instutite
 310 E. 14th St., Suite 304 South, New Yok, NY10003

道成寺


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