2022年1月14日号 Vol.413

ジャパニーズSHARE
「日米・患者と医師の関係」ウェビナー報告
求められるコミュニケーションスキル

「日米・患者と医師の関係」ウェビナー画面から

アメリカ在住の乳がん、卵巣がん、子宮がん患者を日本語でサポートする非営利団体ジャパニーズSHARE(ブロディー愛子代表)が12月末、「日米の視点から見る 患者と医師の関係」と題したウェビナーを開催した。

日米から350人以上の参加申込があり、1月10日まで配信された録画再生も900回を超えた。パネリストとしてウェビナーに参加したのは、▽高部和明医師(ロズウェルパーク総合がんセンター乳腺外科主任教授)、▽中川俊一医師(コロンビア大学メディカルセンター緩和ケア専門医)、▽鈴木幸雄医師(同産婦人科博士研究員)、▽三宅亜紀子さん(NYU病院オンコロジーソーシャルワーカー)、▽河面育子さん(メモリアルスローンケタリングがんセンター、クリニカル・ナース・スペシャリスト)の5人。司会はブロディー代表が務めた。

ウェビナーではまず、NYU病院腫瘍内科のジェームズ・スパイヤー医師と、乳腺外科のデボラ・アクセルロッド医師へのインタビュー動画を流した。

両医師は、アメリカでは医師と患者の関係が昔と比べて大きく変わり、今は対等の立場で話し合い、共同作業で治療法を決めることや、医師が患者をよく知り理解することの大切さを語った。

スパイヤー医師はまた、現代のアメリカの医学学校では、医師のコミュニケーション教育を重要視していることにも言及。「日米で文化は異なれど、医師は皆、患者の話に耳を傾けるべき」と話した。

アクセルロッド医師は、「代替治療や各種セラピーなどの治療オプションについても、理解を深める必要がある」とも。二人はSHAREの活動支援者。患者支援団体と協力して治療を進めることもあると話した。



このインタビュー動画を受け、5人の医療専門家が日米医療の検証を試みた。中川・高部両医師は、スパイヤー医師が指摘した「医師のコミュニケーションスキル」の重要性をさらに訴えた。「悪いニュースを患者に伝えることは、医師なら避けて通れない。コミュニケーションは、訓練することで向上するスキル。医学教育過程で、もっと時間を割くべき」と中川医師。高部医師は、「患者も医師任せではなく、積極的に意思表示をすること。話しやすい医師を選ぶことも大事」と話した。

がん患者の精神ケアに携わる三宅さんは、「あらゆる分野の専門家がチームとなって、一人の患者をケアするアメリカのチーム医療が、日本でも導入されることを願う」と話した。看護師の河面さんも、「アメリカのナースプラクティショナーといった専門看護職が日本にないために、医師に負担がかかっている。協調性に優れた日本の国民性を生かしたチーム医療の導入に期待する」と述べた。

鈴木医師は、「患者と医師の関係の改善や、2024年からの医師の働き方改革の法律化など、日本の医療は過渡期にある。今後少しずつでもいい方向に変わっていくことを期待する」と話した。

ブロディーさんは最後に、患者会の育成の必要性について触れた。「アメリカの患者会は寄付で活動資金が賄われているが、日本ではその多くが会費制。払えない患者とその家族は参加できない。そうした患者が取り残されないよう日本の患者会を育ててほしい」と訴えた。

ジャパニーズSHAREは、女性のがんのサポートを日本語で行っている(無料)。問合せ・詳細は別記。

ジャパニーズSHARE
日本語ヘルプライン/問合せ
TEL: 347-220-1110
https://sharejp.org


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