2019年1月25日号 Vol.342

レアで興味深いリサイタル
名ピアニスト、フライシャー ほか
2月のカーネギーホール

レオン・フライシャー
レオン・フライシャー  Leon Fleisher (Photo ©Chris Hartlove)

クロノス・カルテット
クロノス・カルテット Kronos Quartet (Photo ©Jay Blakesberg)

ジョルディ・サバール
ジョルディ・サバール  Jordi Savall (Photo © David Ignaszewski)

ル・コンセール・デ・ナシオン
ル・コンセール・デ・ナシオン Le Concert des Nations (Photo © Chris Lee)


この2月、カーネギーホールでは、いくつかの珍しく興味深いコンサートが行われる。その中から三つのイベントを紹介したい。ちなみに、これらのコンサートは奇しくも全てザンケルホールで行われる。

2月5日(火)は、「レオン・フライシャー・アンド・フレンズ」と銘打ち、名ピアニスト、レオン・フライシャーの90歳誕生日記念コンサートが行われる。
フライシャーは、8歳でデビュー、16歳でニューヨーク・フィルハーモニックと共演するという神童だった。華々しい活躍を続けながら1952年には最も権威のあるコンクールの一つ、エリザベート王妃国際音楽コンクールのピアノ部門で第一位入賞を果たす。
しかしその後、局所性ジストニアを患い、右手の機能がほぼ全て失われてしまう。以来、左手のみでの演奏活動を強いられるが、幸運なことに、1990年代にボトックス治療法を行なった事により右手が回復、両手を使っての演奏活動の再開を果たす。
このコンサートでは、友人ピアニストであるジョナサン・ビスとイェフィム・ブロンフマン、そしてドーヴァー弦楽四重奏団らと共にバッハ、モーツァルト、ベートーベン、ブラームスら作曲家による名曲を演奏する。

次にザンケルホールに登場する注目のアーティストは、クロノス・カルテット。中世の音楽から実験音楽まで、時代様式やジャンルを一切問わず、ありとあらゆるスタイルの音楽を演奏し続けている弦楽四重奏団だ。今年でデビューしてから46年となるが、その人気は日本を含め、世界的に極めて高い。
彼らが2月8日(金)に行うのは、「Music for Change: The Banned Countries」と題したコンサート。シリア、イラク、イラン、イエメン、ソマリア、スーダン、リビアといった、いわゆる「イスラム国家」にゆかりのある作曲家等の作品を演奏する。また、イランのテヘラン生まれで、ペルシャの古典音楽を歌い続けているヴォーカリスト/詩人のマーサ・ヴァーダットが共演。普段はなかなかライブで聞くことのできない楽曲を聴くチャンスだ。

2月21日(木)にはスペイン、カタルーニャ出身の名ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者/指揮者のジョルディ・サバールが、自ら創設したアンサンブル、ル・コンセール・デ・ナシオンと共に登場する。
主としてルネサンス期やバロック期の音楽を演奏しているサバールとル・コンセール・デ・ナシオン。彼らは1991年に、17世紀後半から18世紀前半にかけてフランスで活躍した作曲家/指揮者/名ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者のマラン・マレーの生涯を描いた映画、 「巡り逢う朝」(アラン・コルノー監督の最高傑作と評されている)のサウンドトラックを担当した。このコンサートでは、それらのサウンドトラックに収められている美しいフレンチ・バロック音楽の数々が生で披露される。演奏される楽曲の作曲家はマラン・マレーの他にリュリ、クープラン、ラモー、サント=コロンブ、ルクレールなど。非常に貴重なコンサート。(木川貴幸)

Leon Fleisher and Friends
"A 90th Birthday Celebration"
■2月5日(火)7:30pm
■$83〜

Kronos Quartet
"Music for Change:
The Banned Countries"
■2月8日(金)9:00pm
■$63〜

Jordi Savall / Le Concert des Nations
"Tous les matins du monde"
■2月21日(木)7:30pm
■残券わずか、カーネギーに電話で問合せを

■会場:Zankel Hall
 @ Carnegie Hall
 881 Seventh Ave
■212-247-7800
www.carnegiehall.org


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