2019年2月8日号 Vol.343

[連載(3)]
激動する国際社会

内戦、地球温暖化、核兵器拡散

内田忠男
(国際ジャーナリスト / 名古屋外国語大学・大学院客員教授)

内戦、地球温暖化、核兵器拡散<


内戦

国家の領域内で対立した勢力によって起る武力紛争。アフリカ大陸などの新独立国で多発してきたが、21世紀に入ってからアフガニスタン、イラク、シリア、イエメン、リビア、ソマリアなどで特に深刻となり、その結果、大量の難民を生みだした。
アフガニスタンは、アメリカがテロとの戦争で真っ先に攻め込んだが、支配勢力だったタリバンを完全に無力化出来ないまま跳梁を許し、国内はボロボロの状態。
イラクは、アメリカが誤った情勢分析で始めた戦争の結果、サダム・ フセインという独裁者を葬って多数派のシーア派に政権を与えたことでスンニ派との宗派対立が表面化。さらにシリアで力を蓄えたイスラム国が侵入し、統治不全の状態。
シリアは、201 1年に始まった民主化運動「アラブの春」を契機に、独裁者アサド大統領に反対する勢力(アメリカなど有志連合が支援)との間で戦闘が勃発。そこへ2013年4月頃からイスラム国が加わり三つ巴、さらにロシアとイランがアサド政権支援に入ったことで、情勢はより複雑化した。
リビアは、「アラブの春」の反政府運動で独裁者カダフィ大佐を葬ったが、その後の権力空白が続き、様々な宗派、部族、テロリスト集団が入り乱れて抗争、無政府状態。
問題は、これら多くの内戦のタネをまいたのが、アメリカだったということだ。
イラク戦争を始める際、当時の米大統領ジョージ・W ・ブッシュらネオコンが主張したのは「アラブに民主主義を植え付ける」 という尊大な言葉だった。「アラブの春」が起きると、さあ始まったと囃し立てた。しかし結果を見れば、これが如何に誤りだったかは自明である。
これら中東・北アフリカの内戦で大量の難民が欧州に向かい、EUの内部対立を招いている。欧州の人々は、「難民を寛大に受け入れよう」と主張するEUや、自国政府に不信感と反感を募らせている。
そんな状況を招いたアメリカは、「我関せず」と知らん顔。人々はアメリカに対しても不信感を強めている。

地球温暖化

Extreme Weather(異常気象)が急増している。2018年は、日本でも様々な災害が起きた。7月の西日本豪雨、8月の全国的な猛暑、10月には強力な台風が二つ、相次いで上陸。いずれも、人命と財産に大きな被害をもたらした。
日本だけではない。猛烈な勢力の低気圧、集中豪雨、異常高温・低温、竜巻、高潮、洪水、旱魃…。原因は化石燃料の燃焼による温室効果ガスの大量排出とされる。
最近は北極圏の温暖化も顕著で、永久凍土まで溶け出し、温暖化効果がCO2の数十倍とされるメタンガスが大量発生。また、氷の融出に伴う水蒸気の大量化により大規模な低気圧が長期に居座るなどの異常気象も顕著になっている。
この温暖化を防ぐため1994年、「UNFCCC(気候変動枠組条約)」という気候変動に関する国連の枠組条約が発効されたが、各国の国益が交錯し、ほとんど効果を上げていない。2015年暮れ、激しい対立を何とか封じ込め、パリ協定に漕ぎ着けたが、中国に次ぐ2番目の炭素排出国であるアメリカが脱退を宣言した。これは不条理極まりない。

核兵器拡散

1970年にNP T(核拡散防止条約)発効。米ロ中英仏のみを核兵器保有国として公認した。
但し、この時点ですでにイスラエルが保有し、その後もインド(74年)、パキスタン(98年)が保有。北朝鮮は2006年から2017年9月までに6度の核実験を実施し、イランにも核開発の疑惑が持たれている。
ここでもアメリカが、2015年に安保理常任理事国にドイツを加えた6ヵ国とイランとの間で漸く合意したJCPOA(包括的共同行動計画)から離脱し、波紋を生じさせた。
トランプ大統領は、北朝鮮の金正恩委員長とシンガポールで会談し、非核化の約束を取り付けたと強弁しているが、北朝鮮がこの約束を守る可能性は極めて低い。
核廃棄の前提として、北朝鮮がこれまで生産した核兵器や、核施設を包み隠さず全てを明らかにし、透明性の高い査察を受ける必要があるが、これを実行するとは到底考えにくい。朝鮮戦争の終結や、経済制裁の緩和・解除など、様々な条件を小出しにして、結局はどちらかが喧嘩腰になり、その結果、何も進展しない…というのが結末ではなかろうか。
最大の不安は、北朝鮮のような国が核兵器を持つと、国際テロリストの手に渡り易くなることだといえよう。(一部敬称略)
=次号は「中国」 =


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