2021年2月12日号 Vol.391

新型コロナの特徴やリスク再確認
外務省が在米邦人に向け情報発信

日本政府外務省が、1月末から2月11日(木)深夜(米東部時間)にかけて、米国在住の日本人を対象にした安全対策ウェブセミナーを無料配信。内容は、全米での新型コロナウイルスの感染状況と対策から、在米日本企業のコロナ対策ケーススタディー、米国全体とニューヨークの治安情勢まで幅広いものだったが、ここでは新型コロナウイルスについての発表内容をおさらいする。

「安全対策ウェブセミナー」のスクリーンショット

家庭内の濃厚接触
感染率は10%以上


全米での新型コロナウイルスの感染状況と対策について発表したのは、インターナショナルSOS社(本社・東京)リージョナル・メディカル・ディレクターの野村亜希子医師。現在第3波と闘う米国の現状を説明するとともに、新型コロナウイルスの感染力についてのデータや、CDC(米疾病管理予防センター)発信の情報・定義の変化についてなど、米国在住者が意外に聞き漏らしている内容も指摘された。

まず、濃厚接触者の定義について、当初CDCは「6フィート以内の距離に15分以上一緒にいた場合」としていたが、今は「24時間以内に、合計15分一緒にいた場合」と改定されている。「つまり、24時間以内に5分間ずつ3回に渡って一緒にいた場合も、濃厚接触とみなされます」と野村医師。目安として覚えておくといいだろう。参考までに日本の場合は、1メートル以内で15分間会話をしても、双方がマスクを装着していれば濃厚接触とはみなされないそうだ。

朗報は、症状がある感染者から濃厚接触者への感染率は0・45%と意外に低いこと。が、同じ世帯に住んでいる場合の濃厚接触になると、感染率は一気に10%以上に上がるので、家庭内にウイルスを持ち込まないことが、いかに大切かがわかる。



ロングCOVID
潜伏期間まちまち


新型コロナウイルスに感染してから発症するまでの潜伏期間は、平均5〜6日間だが、70歳以上の高齢者の平均は8日間だ。長い人で12日間かかることもある。

特徴の一つはその感染力。発症2日前から感染力があると言われるので、やはり全員がマスク着用を徹底しなければならない理由はここにある。野村医師は、「アメリカではまだマスクを拒否する人がいるそうですが、世界保健機関(WHO)もCDCも、現在はマスクの予防機能を大変重視しています。もしマスクをしていない人が近くにいたら、遠ざかるようにした方がいいと思います」と話していた。

そして、発症後10日以内には感染力が下がると言われている。重症化し、集中治療室で呼吸管理をするような場合でも、20日以内には感染力が下がるという報告があるそうだ。

もう一つの特徴は、「ロングCOVID」と言われる、症状が長引くケース。4、5日で回復する通常のインフルエンザと異なり、新型コロナはもともと回復に時間がかかる疾患。4週間以上症状が続く患者が全体の13%以上、8週間続く人が4・5%以上、12週間続く人が2・3%以上と、かなりのケースで長期化が見られる。ロングCOVIDのリスク因子は、肥満、女性、高齢、発症直後に症状が5つ以上ある場合だ。



絶対的な高リスク
相対的な高リスク


重症化する条件として、CDCが示す「絶対的な高リスク因子」と、「相対的な高リスク因子」がある。「絶対的」には、がん、慢性腎疾患、慢性閉塞性肺疾患、臓器移植による免疫不全、BMI30以上の肥満、重度の心疾患、鎌状赤血球症、2型糖尿病、がもともとリストされていたが昨年11月、妊婦と喫煙が加わったことを野村医師は強調していた。「相対的」には喘息(中程度)、脳血管疾患、高血圧、認知症等の神経学的疾患、肝疾患、BMI25〜30の肥満、1型糖尿病などがある。

「新型コロナ、行動別感染リスク」※オンライン情報サイト「information is beautiful」に掲載されたグラフを日本語訳にしたもの

感染リスク低下には
日常の行動見直そう


野村医師は、日常のどんな行動が感染リスクを上げるかについて、オンライン情報サイト「information is beautiful」に掲載されたビジュアル(左上グラフ)を示し、解説した。例えばスポーツ・アクティビティ(緑の円)で低リスクなのは、野外での接触が少ないテニスやゴルフ。屋内でのバスケットボールは中リスク。スタジアムでのスポーツ観戦は、長時間不特定多数の人と同じ空間を共有するので高リスクになる。

次に、食事に関する行動(赤い円)では、アウトドアダイニングは低リスク(換気が万全)、個人宅(屋内)での少人数での食事は中リスク、レストランでのインドアダイニングは高リスク。「同じ屋内でも、レストランは不特定多数の人と、マスクを外して同じ空間を共有するからです」と野村医師。屋内のバーはさらにリスクが上がり、ナイトクラブは問題外と言ったところか。

職場や通勤に関する行動(黄色い円)では、歩いての通勤通学は低リスク、地下鉄に乗っての通勤や職場内を歩き回るのは中リスク。同じ中リスクでも飛行機内は、密封空間で長時間になるので少しリスクが高い。高リスクになるのは、対面会議などで握手をしたりすること。

「すべてマスク着用、ソーシャルディスタンス、手洗いといった基本的な予防手段を組み合わせて行うことで、リスクを下げることが可能です。予防対策を心がけ、感染を防いでください」と野村医師は呼びかけている。


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