2024年3月15日号 Vol.465

日本禅画の概念めぐる
「無功徳:ギッター・イエレン・コレクションの禅画」

ジャパン・ソサエティー(JS)ギャラリーで、展示会「無功徳:ギッター・イエレン・コレクションの禅画」が3月8日(金)から始まり6月16日(日)まで開催される。400年以上にわたる禅画の概念をめぐるもので、水墨画や書画を通し、仏教の教義を教化することに貢献した画僧たちの作品を紹介する。

展示風景© Naho Kubota. Courtesy of Japan Society

ニューオリンズ在住のカート・ギッターとアリス・イエレン・ギッター夫妻が所有する禅画は、世界でも有数の禅画コレクションとして知られる。江戸時代から近代にかけて日本の禅僧によって描かれた禅画は、他の仏教絵画とは異なり、独自の位置を占める存在だ。表現主義的で大胆な躍動感のある日本の禅画は、単色で比較的シンプルなデザインが多いのが特徴。 一般的な仏教絵画に観られるような緻密な構図や鮮やかな色彩、神秘的な題材とは対照をなしている。
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本展タイトル「無功徳 (むくどく) 」は、「功徳なし」の意味。中国の皇帝が、僧侶の目から見た自分の善行について質問したのに対し、僧侶は無愛想に 「なんの功徳もありゃしないよ」と返答。一見、さりげなく不愛想でありながら、革命的で深いこのやりとりは、禅宗の師弟関係の象徴となった。

Yamaoka Tesshū, Talismanic Dragon, 19th century. The Museum of Fine Arts, Houston, the Gitter-Yelen Collection

会場では、過去500年間で最も重要な禅僧として広く認められている独学の禅僧、白隠慧鶴(1685〜1768)とその弟子たちによる傑出した絵画の数々を展示。仏教の伝統的な四象や恐ろしい神々ではなく、遊び好きで風変わりな僧侶を描き、時には土着の民話に登場する人物を描いている。

白隠禅師から始まる本展は、禅画家たちがいかに周囲の現代世界の幻想に満ちた心配事や制約を超越しようとしたかを示すため、過去と未来の両方に目を向け、検証する。続いて、禅画の先駆者である僧侶の風外慧薫(1568〜16 54)、茶人の松花堂昭乗(1584〜1639)、白隠の遺産を19世紀、20世紀へと発展させた中原南天棒(1839〜1925)、最後は日本の近代書家作品で締めくくられる。

(左)Nakahara Nantenbō, Snow Daruma, 1921. The Gitter-Yelen Collection: Kurt A. Gitter, M.D. and Alice Yelen Gitter (右)Hakuin Ekaku, One Hundred “Kotobuki” (Longevity), 1767. The Museum of Fine Arts, Houston, The Gitter-Yelen Collection, gift of Dr. Kurt Gitter and Alice Yelen Gitter, 2021.205

開催に合わせ、ギャラリー内での瞑想、書道ワークショップ、茶道のデモンストレーションなども開催される予定。禅画への理解をさらに深めるまたとない機会を提供する。

詳細および最新情報はウェブサイトで確認を。

■3月8日(金)~6月16日(日)
■会場:Japan Society Gallery
 333 E. 47th St.
■ 一般$12、シニア/学生$10
 JS会員/16歳以下:無料
japansociety.org/gallery


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