2018年3月16日号 Vol.321

世界各国の新作紹介
日本から清原監督「わたしたちの家」
「ニューディレクターズ/ニューフィルムズ」


ニューヨークで上映される清原監督の「わたしたちの家」Our House, courtesy of Yui Kiyohara


MATANGI/MAYA/M.I.A., courtesy Cinereach


Hale County, courtesy of RaMell Ross


Makala, courtesy of Kino Lorber


今年47回目を迎える「ニュー・ディレクターズ/ニュー・フィルムズ」が3月28日(水)から4月8日(日)まで、近代美術館(MoMA)とフィルム・ソサエティー・リンカーンセンターの共催で開催される。新作紹介を目的とした映画祭で、今年は世界29ヵ国から長編25本、短編10本を選出。多彩で幅広いラインナップとなり、その多くがニューヨーク初演。

オープニングナイトは、スティーブ・ラブリッジ監督の「マタンギ/マヤ/エム・アイ・エー」。サンダンス映画祭で審査員特別賞を受賞。スリランカの少数民族タミル人を両親に持つイギリス生まれのミュージシャンM.I.A.(エム・アイ・エー)をテーマとしたドキュメンタリー。M.I.A.の父親は、タミル人の独立国家を目指したテロ組織LTTEのメンバーで、家族とは生き別れに。芸名の「M.I.A.」は行方不明兵を意味する「Missing In Action」の頭文字を取ったもの。映画は、M.I.A.が家族や自身の出来事を撮影した700時間もの映像から、ラブリッジ監督が選び編集・再構成したもの。「スティーブは、私のカッコイイ面を全てカットしたのよ」とM.I.A.はサンダンスのインタビューで応えている。「世界中の人権侵害に立ち向かう」という彼女のメッセージが見えてくる作品。

クロージングナイトは、ラメル・ロス初監督作品の「ヘイル・カウンティ ディス・モーニング、ディス・イブニング」。写真家ウォーカー・エバンスと、作家ジェームズ・エイジーが、アメリカ南部で生活する小作人の白人家族を取材し撮影した写真集「Let Us Now Praise Famous Men」を1941年に発行。現在、その地に住むアフリカ系アメリカ人家族の5年間に密着した作品。時を経て、アメリカ南部の変化と現実を情緒豊かに描く。

日本からは清原惟(きよはら・ゆい)監督の「わたしたちの家」(日本語上映・英語字幕)。母親と2人で暮らす13歳の少女・セリと、記憶喪失の女性・さな。別々の物語が同じ家の中で進行する。「ひとつの家」に流れる「ふたつの時間」を描いたスリラー。

その他、リスボン郊外の工場閉鎖によって起きた激しい労働争議の記録「ナッシング・ファクトリ」(ペドロ・ピノ監督)、アフリカのコンゴに暮らす青年カブイタの生きる術を捉えた感動のドキュメンタリー「マカラ」(エマニュエル・グラス監督)、中国の地方都市を舞台に、問題を抱えて行き場を失った4人のある1日を題材にした「エレファント・シッティング・スティル」(胡波監督)などに注目が集まる。ちなみに、胡波監督は昨年10月自殺、29歳だった。「エレファント・シッティング・スティル」は、長編デビュー作と同時に遺作となる。
全作品スケジュールはウェブサイトで。

New Directors/New Films 2018
■3月28日(水)〜4月8日(日)
■会場:Walter Reade Theater
 165 W. 65th St.(@FSLC)
■会場:MoMA:
 11 W. 53 St.(@MoMA)
■一般$17、学生/シニア/メンバー$12
 ※初日/末日は特別料金
 ※3本以上購入割引有り
 ※チケット一般販売は3月16日正午から
www.newdirectors.org


Matangi/Maya/M.I.A.
○3/28:7:00 & 7:30pm @MoMA
○3/29:6:30pm @FSLC

Hale County This Morning, This Evening
○4/7:8:30pm @FSLC
○4/8:2:00pm @MoMA

Our House(わたしたちの家)
○4/6:8:30pm @MoMA
○4/8:3:30pm @FSLC


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