2018年3月30日号 Vol.322

ヴェルディが転機むかえた
最初の作品
メトロポリタン・オペラ「ルイザ・ミラー」


A scene from Act I of Verdi's Luisa Miller. All Photos by Ken Howard/Metropolitan Opera.


(l to r) Placido Domingo, Sonya Yoncheva and Piotr Beczala


ドイツ・ロマン派の劇作家シラーの「たくらみの恋」を気に入ったヴェルディは、これまでの「愛国心」や「歴史物語」を題材にした作風から抜け出して、村娘の「悲恋」を取り上げた新しい感覚のオペラに取り組んだ作品。しかし、サンカルロ劇場でこの初演を観た観客は、ヴェルディのオペラの変貌に戸惑ったそうだ。この流れで、ヴェルディ中期の作品「リゴレット」、「トロヴァトーレ」、「椿姫」などの大傑作が次々と生まれることになる。
今シーズンのMETでは、かつてテノールのロドルフォを歌っていたプラシド・ドミンゴが、バリトンの父親ミラー役に初挑戦する。年を重ねても、更に新しい役に挑み続けるドミンゴはまさにオペラ界のレジェンド!そして、ドミンゴからロドルフォのバトンを渡されたのが、METでもお馴染みのテノールのスター、ピョートル・ベチャワ。タイトルロールのルイザを歌うソニア・ヨンチェヴァは、今シーズン、トスカ、ボエームのミミそしてこのルイザと3作品に登場し、さらにこの3作品ともライブHDで世界の映画館に発信されるという快挙を達成。持ち前の美貌に加え卓越した演技と歌唱力でスターの座をゆるぎないものにしている。10数年ぶりの再演となる舞台が豪華なキャストで実現する。

▼あらすじ
17世紀前半のチロルが舞台。退役軍人ミラーの娘ルイザは、カルロという若者と恋仲だった。実は彼は領主ヴァルター伯爵の息子ロドルフォだった。息子の地位を万全にしたい伯爵は、ロドルフォをオストハイム公爵未亡人フェデリーカと結婚させようとするが、恋人の存在を打ち明けられる。
怒った伯爵はルイザを侮辱し、刃向かったルイザの父ミラーは投獄される。ルイザに横恋慕する伯爵の腹心ヴルムは、ミラーを助けたいなら、愛していないという手紙をロドルフォに書けとルイザに迫る。泣く泣く従ったルイザだが、彼女の心を誤解したロドルフォが現れてひと瓶の毒薬をグラスに注ぐ。
彼は例の手紙を手にルイザの前に立つ。ルイザがそれを書いたことを否定できないでいると、ロドルフォは彼女に自分のために一杯注いでくれるように言う。彼がそれは苦い味がすると言うと、彼女もそれを飲む。ロドルフォがその一杯には毒が入っていると言うと、ルイザはもはや宣誓に縛られることはないと思い彼に真実を話す。彼女は父の腕の中に倒れこむ。
そこにヴルムとヴァルター伯爵がやってくる。ロドルフォは力を振り絞ってヴルムを殺し自分も毒薬に倒れる。(針ケ谷郁)

LUISA MILLER
3月29日、4月2日/6日/9日/14日(M)/18日/21日(M)
ジュゼッペ・ヴェルディ作曲 イタリア語上演
原作:シラーの「たくらみと恋」に基づく
初演:1849年12月8日、ナポリのサンカルロ劇場
演出:エライジャ・モシンスキー
指揮:ベルトラン・ド・ビリー
配役:ルイザ:ソニア・ヨンチェヴァ
ミラー:プラシド・ドミンゴ/ルカ・サルシ
ロドルフォ:ピョートル・ベチャワ
ヴァルター伯爵:アレクサンダー・ヴィノグラドフ
ヴルム:ディミトリ・ベロセルスキー
フェデリーカ:オレシア・ペトロヴァ

チケット:212-362-6000
www.metoperafamily.org



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