2020年4月3日号 Vol.371

自宅でミュージカル!
名作舞台をネット配信
ブロードウェイHD


「王様と私」は渡辺謙とケリー・オハラのコンビで日本公演も Photo by Matthew Murphy


「オペラ座の怪人25周年記念公演」も見られます Photo by Joan Marcus


「キンキー・ブーツ」はシンディ・ローパー作曲で話題に Photo by Matt Crockett


今やニューヨークの日常は、完全に様変わりした。
3月12日にブロードウェイが公演中止になったことが遠い昔に思えるほど、日々状況の深刻化が続く。新型コロナウイルスの猛威は収まる気配もなく、ブロードウェイも4月13日からの再開は現実的に難しいだろう。例年3月と4月は開幕ラッシュの時期だけに、6月のトニー賞も延期または中止か…とため息ばかり出てしまう。
が、嘆いていても免疫力が落ちるだけ。そこで、前から気になっていた会員制の舞台映像配信サービス「ブロードウェイHD(broadwayhd.com)」を試したところ、新しい楽しみが見つかった。
ネットフリックスやアマゾンプライム、Huluなどの配信サービスはミュージカルでも映画が中心であるのに対し、ブロードウェイHDは実際の舞台の映像が見られるのが特徴。ニューヨークでは上演されなかった公演、もう一度観たかった舞台など、気付いたら「あっ!」という間に時間が過ぎていた。
最初の7日間はトライアルで無料。その後の会費は月毎(8ドル99セント)または年間(99ドル99セント)から選べる。
「先駆的」「必見」「古典」「ファミリー向け」などのカテゴリーがあり、外国作品まで網羅している。日本の舞台作品もいずれ配信して欲しいものだ。
実際に視聴した中で、いくつかオススメを紹介。

▼ラブ・ネバー・ダイズ
「オペラ座の怪人」の続編で10年後の怪人とクリスティーヌを描く。日本では上演されたが、ブロードウェイには未上陸。2011年のメルボルン公演。

▼レ・ミゼラブル25周年記念コンサート
2010年のロンドン公演。歌えるキャストが素晴らしい(マリウス役以外)。アルフィー・ボーのジャン・バルジャン、ノーム・ルイスのジャベール、ラミン・カリムルーのアンジョルラスの顔合わせは貴重。

▼キンキー・ブーツ
ドラァグクイーンとコンサバ男性の友情物語のフィールグッドなミュージカル。2018年のロンドン公演のため、ローラ役がビリー・ポーターではないのは残念だが、ライブステージの雰囲気を捉えたカメラワークが見事。イチオシは主人公チャーリーに恋するローレンの爆笑シーン。

▼レディ・デイ
ジャズシンガー、ビリー・ホリデイの1959年の死の数ヵ月前のコンサートを描く。ソプラノで知られるオードラ・マクドナルドがビリー・ホリデイそのものの歌唱を披露。冒頭の「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」から引き込まれる。

▼王様と私
渡辺謙主演の2015年のブロードウェイ公演を見逃した方はぜひ。
2018年のロンドン公演でブロードウェイのキャストではないが、渡辺謙とケリー・オハラが舞台中を踊り回る「Shall We Dance?」はうっとりする名シーン。

とても紹介し切れないが、B級映画を下敷きにしたミュージカル「悪魔の毒毒モンスター」まであるのにはのけぞった。バレエ、リバーダンス、シルク・ド・ソレイユ、オペラもあり、イヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出の「ブロークバック・マウンテン」を見つけて小躍りした。
贅沢を言うならば、出演者やクリエイティブチームの名前での検索機能なども欲しいところだが、「臨時休業」期間の娯楽と心の栄養に、ブロードウェイHDは自信を持ってオススメする。
生の舞台が上演できなくなった今、オンラインで様々な試みが行われている。メトロポリタン・オペラは無料配信を行い、視聴に待ち時間が出るほどの人気だ。オン、オフのブロードウェイの俳優やクリエイターも、オンラインのコンサートやトークを通して、救済基金への寄付の呼びかけを行っている。
再びライブの舞台が楽しめるようになる日まで、ファンの一人として支援を続けたい。(高橋友紀子)

BroadwayHD
■月額$8.99
 年会費$99.99(税別)
broadwayhd.com



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