2020年5月8日号 Vol.373

新型コロナウイルスと対策



日本クラブ、ニューヨーク日本商工会議所、米国日本人医師会(JMSA)共催の医療ウエビナー「ニューヨークの医師に聞く 〜COVID-19に関する緊急特別インタビュー」(YouTubeアーカイブ https://bit.ly/3bWb2QE)が、4月半ばに開催された。セミナーに参加したのは、大石公彦医師、安西弦医師、加納麻紀医師、カマール・ラマニ医師。4医師のウエビナーでの発表内容に新たな医療情報を加え、紙面で今一度おさらいしてみよう。


コロナウイルスの基礎知識
大石公彦 医師
小児科、遺伝科、マウントサイナイ病院


■新型コロナウイルスとは?
まず、コロナウイルスは1960年代に発見された、直径約125nm(ナノメートル)程度のウイルスです。Spikeと呼ばれる突起があるのが特徴。内部のRNA(リボ核酸)が変異を起こすことで、これまで様々な型のコロナウイルスが発見されています。その種類によって感染する動物も、症状も異なります。今回の新型コロナウイルスは、以前流行った「SARS-Cov」と同様に重症呼吸器症状を起こすことから「SARS-CoV-2」と呼ばれ、このウィルスによって起こる疾患が「Covid-19」(Coronavirus Diseased 2019)と名付けられました。

■どうやって体内に侵入し増殖しますか?
飛沫感染により粘膜に付着し体内に取り込まれます。体内の細胞の力を借りて複製し、その数を増やした後にその細胞から出て、体外に放出され、他の人に感染というのが一連の流れです。

■どの程度の時間感染能力をもっていますか?
空中で約3時間、銅板の表面で約4時間、ボール紙で約24時間、ステンレススチールで約48時間、プラスチックで約72時間と、比較的長い時間感染能力をもっていると考えられています。
妊婦と新型コロナウイルス
安西弦 医師
産婦人科、レノックスヒル病院、
ニューヨークミッドタウン産婦人科院長


■病院での出産はできますか? 妊婦は重症化しますか?
病院全体がコロナウイルス病棟となる中、産科だけは別で、出産は通常通り行われています。呼吸器系のウイルス感染症は、妊婦の場合症状が重くなる傾向にありますが、コロンビア大学他のデータによると、新型コロナウイルスの感染でICU入院が必要になったのは、妊婦患者の5%で、全体的な数字と大差はありません。今のところ、妊婦さんが特別高リスクではないと考えられています。

■新生児への感染は?
頻度は低いですが起こり得ます。しかし新生児の場合症状は軽く、1週間以内にウイルスは陰性になっています。ウイルスに感染している母親でも、無症状の場合は母乳を続けても構わないというのがアメリカのガイドラインですが、マスクの着用と手洗いは徹底するようにとのことです。

■妊婦が感染した場合の対処法は?
基本的には一般へのガイドラインと同じです。高熱や呼吸困難が続くようなら病院に行くべきですが、軽い症状の場合は自宅待機が望ましいでしょう。妊婦の場合、必ずかかりつけの産科医がいるので、迅速に連絡・相談するのがベストです。ニューヨークの病院では、全ての妊婦に対して新型コロナウイルスの検査をする態勢になってきています。
子どもへの感染と自宅待機の精神的影響
加納麻紀 医師
内科・小児科、東京海上記念診療所


■子どもが感染しているかもしれない場合、どうしたらいいですか?
症状が軽い場合は自宅待機するのは大人も子どもも同じです。家族への感染を防ぐには、現時点ではベストを尽くすしかありません。自宅でもソーシャルディスタンスを徹底し、全員がマスクをしましょう。

■コロナ感染以外の診察、子どもの予防接種は受けられますか?
健康な子どもの定期健康診断と予防接種は、クリニックで行う必要があります。主治医と相談して予約を入れてください。アメリカ小児科学会は、2歳以下の定期健康診断と予防接種は後回しにせず受けるようにと奨励しています。特に1歳以下は、コロナ以外の感染病にかからないためにも、予防接種は大切です。その他の症状での診療には、ビデオ診療が勧められます(別記)。

■自宅待機、遠隔学習でのストレス解消には?
子どもたちは遠隔学習でコンピューターを使うので、その他の時間はテレビやビデオゲームよりも、昔ながらのボードゲームやパズルを家族で楽しんだり、日本の祖父母に手紙を書いたりなど、いろいろなアクティビティーを考えて行ってほしいです。

■新たに認識されたコロナ感染の症状とは?
つい最近まで、高熱と咳、息苦しさ、肺炎が主な症状として発表されていましたが、新たに心臓・腎臓・肝臓の機能不全、また脳への影響、血液凝固異常、味覚・嗅覚異常も言われています。さらに、若年層に見られる症状として、足の指先に起きる皮膚異常について、最近、症例報告が増えているようです。ちょうど霜焼けのように足指の先が赤くなります。こうした患者さんは、それ以外の症状は比較的軽いようですが、この皮膚異常がコロナ感染の症状であることを知っておくことは大事です。


新型コロナ感染の症状と治療体制
カマール・ラマニ 医師
内科、20イーストメディカル院長


■新型コロナウイルスの症状は?
熱と咳が最も顕著な症状で、そのほか体の痛み、喉の痛み、頭痛などがあります(風邪やインフルエンザ、アレルギーとの比較表参照。ラマニ先生のウェビナー発表資料から)。風邪・アレルギーとの大きな違いは、コロナ感染では鼻水・鼻詰まりがないことです。



■診察や治療をする医療機関、救急医療室に行くタイミングは?
症状が出ている人は、主治医(PCP=Primary Care Physician)に連絡するのが先決。ビデオ診療(別記)で主治医と相談し、自宅待機するか、病院のERに行くべきかを判断します。日頃から、自宅に最も近い病院の住所を調べておきましょう。

■検査を受けたい場合どうすれば良いですか?
抗体検査(採血による血液検査)は、主治医に問い合わせ、クリニックかラボ(Quest、Labcorp、Northwellなど)で採血が可能か、またはラボから患者の自宅への訪問採血が可能かなど、相談してください。予約なしでウォークインできるUrgent care center(CityMDなど)などでも検査を行っています。ただ、症状がない人は無理して検査を受けず、自宅待機して感染予防に徹する方が賢明です。

■内科のクリニックへの相談で、コロナ以外で多い症状は?
風邪の症状を訴え、「自分はコロナ感染ではないか」と心配する患者さんが最も多いです。次に多いのが、不安、不眠、飲み過ぎ、胃炎など、ストレスからくる症状や病気。帯状疱疹が出ている患者さんもいます。

【ビデオビジットの予約・問い合わせ】
●東京海上記念診療所(加納先生)
マンハッタン: 212-889-2119
ハーツデール: 914-997-1200
mychart.mountsinai.org

●NYミッドタウン産婦人科(安西先生)
800 2nd Ave., Suite 815
TEL: 646-292-3030
www.nymidtownobgyn.com

●The Mount Sinai Hospital(大石先生)
1428 Madison Ave., 1st Fl.
TEL: 212-241-6947

●The Mount Sinai Hospital(柳澤先生)
5 E. 98th St., 3rd Fl.
TEL: 212-241-3422
www.mountsinai.org/profiles/robert-t-yanagisawa

●20 East Medical(ラマニ先生)
20 E. 46th St., # 202
TEL: 212-557-4646
staff@20eastmedical.com
www.20eastmedical.com



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