2022年5月27日号 Vol.422

AMNH最古のホールが最新に!
先住民コミュニティの「声」を反映
アメリカ自然史博物館

①現存するものでは最大の丸木舟「グレイト・カヌー」(Photo by D. Finnin/AMNH)

改装中だったアメリカ自然史博物館の「ノースウエスト・コースト・ホール」が5月13日(金)、一般公開された。

同館内で最も古いこのホールは1899年、人類学者フランツ・ボアズが後援しオープン。当時の研究者たちは「先住民は遅れている」と考える風潮の中、ボアズは「文化相対主義=全ての文化は優劣で比べるものではなく対等である」を唱えていた。



2017年、新たに「先住民の視点」を取り入れることを掲げた改修プロジェクトがスタート。コミュニティの代表者を集め、何を含め、どのように見せるべきかを共に熟考。歴史的な構成を維持しながら新解釈を取り入れて再構成し、太平洋北西部およびカナダ西部に暮らす先住民コミュニティの「声」を届ける舞台が完成した。

②多種多様なマスク(Photo by D. Finnin/AMNH)

1万200スクエアフィートのホールには1000点を超える民芸品や文化財が展示。沿岸セイリッシュ族、ハイダ族、クワキウトル族、ヌートカ族、ヌハルク族、トリンギット族、ツィムシアン族、ギックサン族、ニスガ族、チムシアン族など、地域コミュニティごとに分類し紹介されている。

入り口付近では、タールタン族/ギックサン族の映画制作者、マイケル・バーキンによる短編が上映。先住民の歴史・文化を紹介するとともに、現在の懸念を来場者へ問いかけた内容だ。

③先住民文化を反映させたネイティブ・アーティストの作品(Photo by KC of YOMITIME)

セクション「私たちの声(OurVoices)」では、コミュニティの過去と現在を説明し、未来を予測。環境保全や人種差別など、重要な問題に目を向ける。

ひときわ目を引くのは、天井から吊り下げられた長さ63フィート(約19メートル)の丸木舟「グレイト・カヌー」=写真①=で、これは現存するものでは最大。特徴的な多数のトーテムポール、トリンギット族が再現したビーバー=表紙写真=(オリジナル彫刻はカヌーの船首部分)、多種多様なマスク=写真②=、現在活躍中のネイティブ・アーティストたちの作品=写真③=なども紹介されている。

④ファースト・ネーションのハイウープス氏(Photo by Denis Finnin/AMNH)

キュレーターのひとり、歴史家でアーティストでもあるファースト・ネーション(カナダ先住民族)のハイウープス氏=写真④=は、「我々がどこから来て誰なのか。その歴史、業績、知性、知識、コミュニティの科学を、このホール全体に反映させたかった。あなたをとりまく世界について『別の考え方がある』ということを知って欲しい」と述べている。

■会場:American Museum of Natural History
 200 Central Park West
■開館:水〜日10am–5:30pm
■常設展のみ:大人$23、学生・シニア(60歳以上)$18
3-12歳$13、メンバー無料
※NY州/NJ州/CT州(要ID)在住者は入館料任意(常設展のみ)
www.amnh.org


HOME