2019年5月31日号 Vol.350

ジャズの聖地・NYに響く
日本人のジャズ魂
「ニューヨーク・ジャパニーズ・ジャズ・フェスティバル」

Vincent Herring
Vincent Herring

RINA YAMAZAKI
RINA YAMAZAKI

The Maguire Twins
The Maguire Twins


日本にジャズがやってきたのが、ほぼ一世紀を遡る1923年。以来、アメリカのアートフォームは時代を超えて日本人に愛されてきた。
6月25日から3日に渡り開催される「ニューヨーク・ジャパニーズ・ジャズ・フェスティバル(NYJJF)」は、最上級の日本人ジャズアーティスト9組が集結。アッパーウエストサイドにある名門ジャズクラブ「スモーク」で、その才能を披露する。

裏舞台で指揮をとるのは、発案者でもある米国人サックス奏者のヴィンセント・ハーリング。
ケンタッキーに生まれたヴィンセントは、3歳でカリフォルニアへ移住、11歳でサックスを始めた。母が熱狂的なジャズファンという家庭に育ったせいか、楽器を始める前からジャズは体に染み込んでいた。「プロになることを一度も意識したことがない」という彼が、長年ジャズメンとして第一線で活躍を続ける秘訣は、才能と技術だけではなく「幸運」だと断言する。
自分の気持ちに正直に生き、先入観をなくし、より広い選択肢と行動力がチャンスを引き込んでいく。著名ジャズアーティストとの「幸運」な出会いの連続が、ヴィンセントのキャリアを確固たるものにしていった。然るべき時と場所と出会いがシンクロする時、「幸運」は訪れる。
そのヴィンセントが、何故ジャズフェスティバルを主催するのか。
ヴィンセントは90年代後半から大学などで音楽を教え始めるが、とりわけ目を引いたのは日本人だった。世界中で愛されるアメリカ生まれのジャズ。そのメッカ、ニューヨークで日本人のジャズをプレゼンテーションすることは、リスクを背負っても挑戦すべきことであり、文化交流の発展、若手アーティストの育成、有能な日本人ジャズミュージシャンの輩出など、ジャズ界にとっても非常に意味のあることだという。

今回の出演者には、日本人という枠を超えてジャズ界で活躍する、敦賀明子(オルガン)、早間美紀(ピアノ)、宮嶋みぎわ(ピアノ)など錚々たるミュージシャンたちが名を連ねている。中でも、寺久保エレナ(サックス)とナナ(トロンボーン)の2人の北海道出身女性ホーンプレイヤーが率いるクインテットや、海野雅威(ピアノ)は、ヴィンセントが称賛するハイライトのアーティストだ。
米国ではジャズの高齢化が進み、若手ミュージシャンの出る幕が十分ではないと、その未来が懸念される。その点でもヴィンセントは思慮深く、未来を担う優秀な若手を2組を選出している。
昨年、名声高きエリス・マルサリス国際ジャズ・ピアノ・コンペティションで第2位に選ばれ、最優秀作曲賞も受賞した山崎梨奈(ピアノ)がその一人。もともとエレクトーンから始めた山崎は、東京で小曽根真の教えの元、ジャズピアニストとしての才能を開花させ、米国に拠点を移してからも、飛ぶ鳥を落とす勢いでその名を馳せている。
テネシー州メンフィスからはマグワイア・ツインズが登場。瓜二つのカール征太郎(ドラム)とアラン秀太郎(ベース)のマグワイア兄弟は、プロデューサーに大御所ドナルド・ブラウンを迎え、これまで2枚のアルバムを制作。4月にはアルゼンチンタンゴの巨匠パブロ・シーグレルとも共演し、そのスポンジのような吸収力は、スタイルを選ばず、今後の活躍が期待される有望株だ。

「僕の願いは、このフェスティバルを成功させること。だが、主役は僕ではなく、才能溢れる日本人ジャズミュージシャンたちだ。『ジャパニーズ・ジャズ』を通して祝う音楽と芸術の祭典。今年は3日間だが、来年は1週間開催したいね」と早くも未来へと目を向ける。

ジャズを知らない人に、ジャズの素晴らしさを伝え、認知度を高めることで、日本と米国の文化交流と発展を促す。その役目を担うのが日本人ジャズミュージシャンたち。NYJJFは、才能溢れる日本人ジャズメンがスポットライトを浴びる唯一無二のジャズフェスティバルだ。(河野洋)

NewYork Japanese Jazz Festival
■6月25日(火)〜27日(木)
 7:00pm / 9:00pm / 10:30pm
■会場:SMOKE Jazz Club
 2751 Broadway
■ミュージックチャージ$20
 ※3-Course Dinner Prix-Fixe $42
smokejazz.com


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