2019年6月28日号 Vol.352

リンカーンセンター夏の恒例芸術祭
モリス新作「スポーツ」、斬新な「魔笛」
「モーストリー・モーツアルト」(前編)

モーストリー・モーツアルト
「グレイト・バスター」The Great Buster in Sherlock Jr.

モーストリー・モーツアルト
「魔笛」Magic Flute, Komische Oper Berlin (Photo by Iko Freese)

モーストリー・モーツアルト
「ブラック・クラウン」Black Clown (Photo by Maggie Hall)

モーストリー・モーツアルト
「アンダー・シージ」Under Siege (Photo by LI Yi Jian)


リンカーンセンターが主催する夏の恒例イベント「モーストリー・モーツァルト」(以下MMF)が、7月10日(水)から8月10日(土)まで開催される。音楽のみならず、演劇、ダンスなど、世界中から一流のパフォーマーがニューヨークに集結する「夏の芸術祭」だ。よみタイムでは、パフォーマンスを中心とした「前編」と、音楽を中心とした「後編」の2回に分けて紹介する。

オープニングは、ニューヨークを拠点に活動する「マーク・モリス・ダンス・グループ」(MMDG)が登場。ワシントンポスト紙から「モダンダンスのモーツァルト」と評されたMMDGは、世界初演となる「スポーツ」に加え、「エンパイア・ガーデン」、「V」の3演目を披露する。「スポーツ」は、エリック・サティ作曲のピアノ小曲集「スポーツと気晴らし」を背景に12人のダンサーが踊る。

ニューヨーク生まれのピーター・ボグダノヴィッチ監督の「グレイト・バスター」は、伝説の喜劇役者バスター・キートンを綴ったドキュメンタリー。モーツァルトのオペラ・ブッファ(喜劇オペラ)「マジック・フルート」(魔笛)で見られる顔の白塗りは、キートンに影響を受けたといわれている。

そんなモーツァルトの最高傑作「魔笛」が、「ベルリン・コーミッシェ・オーパー」(KOB)の新演出で上演される。舞台全体に設置された白いパネルにアニメーションを投影。無声映画のモチーフなどを散りばめ、非現実的で斬新な世界観を作り上げている。
 KOBのディレクターで演出家のバリー・コスキーと、ロンドンのシアターグループ「1297」がタッグを組んで制作した作品で、世界各地で賞を獲得するなど絶賛された。演奏は、指揮者ルイ・ラングレ率いるモーストリー・モーツァルト・フェスティバル・オーケストラ。

「アメリカン・レパートリー・シアター」(ART)の「ブラック・クラウン」は、アメリカの作家、ラングストン・ヒューズの詩を基に描かれたミュージカル。ヒューズは、白人作家が描く「ステレオタイプの黒人」ではなく、黒人自身の視点からその文化や習慣を掘り下げたことで知られている。
「ブラック・クラウン」は、バス・バリトンのダヴォン・タインズを主役に、出演者全員が黒人。アメリカにおける黒人の歴史を、迫力ある歌とダンスで旅する。

中国が世界に誇るダンサーで振付け師のヤン・リーピン率いる「ヤン・リーピン・コンテンポラリー・ダンス」による「アンダー・シージ」(邦題:ヤン・リーピンの覇王別姫 十面埋伏)が上演。中国で秦王朝滅亡後の政権を巡って勃発した楚漢戦争を題材にしたオペラ。戦闘、権力、裏切りを、伝統芸能と現代感性を融合させて描く。

その他、コンサートも多数あり、次号では音楽を中心に紹介する。全演目はウェブサイトで確認を。

Mostly Mozart Festival
■7月10日(水)〜8月10日(土)
■会場/ 料金:演目により異なる
■212-721-6500
MostlyMozartFestival.org

Mark Morris Dance Group
■7月10日(水)〜13日(土)
■会場:Rose Theater
 Broadway at W. 60th St.
■$40〜


The Great Buster:A Celebration
■7月16日(火)7:30pm
■会場:Walter Reade Theater
 165 W. 65th St.
■$15


The Magic Flute
■7月17日(水)〜20日(土)
■会場:David H. Koch Theater
 20 Lincoln Center Plaza
■$85〜


The Black Clown
■7月24日(水)〜27日(土)
■会場:Gerald W. Lynch Theater
 524 W. 59th St.
■$25〜


Under Siege
■8月8日(木)〜10日(土)
■会場:David H. Koch Theater
 20 Lincoln Center Plaza
■$35〜


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