2018年6月29日号 Vol.328

在米作家・吉野美奈子の彫刻
世界平和の願い込め
NJ州のシナゴーグに奉納

歴史の本を読む子供たち

吉野美奈子オープニングレセプションで「歴史を学び、みんなで平和な世界を築きましょう」と吉野さん


ニューヨーク在住の日本人彫刻家・吉野美奈子さんによる彫刻作品「歴史の本を読む子供たち」が、ニュージャージー州イングルウッドのシナコーグ「コングリゲーション・アハバス・トラ(CAT)」のホロコースト・メモリアルガーデンに奉納された。6月17日(日)、奉納式典が開催された。彫刻は、シナコーグ正面右手に設置。ダビデの星を型どったベンチに、歴史の本を読む2人の子どもが座る。開かれた本のページにはRemember」とだけ記され、「悲しい過去に学び、二度と繰り返すことの無いよう覚えていて欲しい、そして平和な世界を築くために自分にできることを考えて欲しい」との願いが込められている。

式典には6人のホロコースト・サバイバーを含む約200人が出席。メモリアル彫刻プロジェクトの発起人ヘレン・ゼリグさん、ナーバ・パーカーさん、石材を寄贈したロブ・フリンさん、それに彫刻を制作した吉野さんの4人が、それぞれに挨拶した。
ゼリグさんの両親はホロコーストのサバイバーで、生前このメモリアルの完成を心待ちにしていたという。開会の辞ではゼリグさんがその想いを語り、パーカーさんがメモリアルの意味を説明。ユダヤ人ではないフリンさんは、「ユダヤの人たちに自分ができることをしたかった」と語った。
吉野さんは、制作者として次のように挨拶した。「作品を作ることによって、未来にメッセージを残したいと考えました。彫刻スタジオの埃や騒音に紛れてこの彫刻を彫りながら、ホロコーストで亡くなった子供たちの声を聞きました。この作品には、世界平和への願いがたくさん込められています。歴史を学んで、どうしたら世界平和が達成できるのか一緒に考えていきましょう」
式典後のレセプション会場には、「1940年のリトアニアで、杉原千畝氏から命のビザをいただいた」という女性もいた。彫刻「歴史の本を読む子供たち」の前で記念撮影をする子供連れも多く、国境を超えて平和への想いが詰まったひとときとなった。

■場所:Congregation Ahavath Torah
 240 Broad Ave.,
 Englewood NJ
www.ahavathtorah.org



HOME