2020年8月7日号 Vol.379

野外展示が目白押し
ニューヨークの存在感
パブリック・アート5選

新型コロナウイルス感染予防と拡大を防ぐため、引き続き屋内での飲食やイベントが禁止されているニューヨーク市。美術館が閉鎖されている一方で、野外アートは「今が盛り」とばかりに次々とオープン。ニューヨークの景観に不可欠なアート作品が、その存在感と精神性を伝えている。
イーストリバーに浮かぶルーズベルト島の南端にある「フォー・フリーダムズ・パーク」に、ひまわりのインスタレーション「憲法修正第19条(19th Amendment)」=表紙写真と①=が登場。階段の前面にひまわりの写真を配したもので、何気ない場所がひまわり畑に変化した。今年は、アメリカで性別を理由に投票権を否定することを禁じた条例「アメリカ合衆国憲法修正第19条」可決から100周年で、それを記念して制作。中央にはその条文が記されている。

19th Amendment
■8月20日(木)まで
■会場: Four Freedoms State Park
 ルーズベルト島の南端
www.fdrfourfreedomspark.org


①「憲法修正第19条(19th Amendment)」Photo by KC of Yomitime


韓国のソウル生まれでアメリカ育ちのアーティスト、ジーン・シンによる2つのインスタレーションが、ロウアー・マンハッタンの「ブルックフィールド・プレイス」内に設置。ひとつは、緑色のプラスチック・ボトルを天井から吊り下げた「フローティング・メイズ(Floating MAiZE)」=写真②=で、もうひとつはカラフルなプラスチック・ストローで構成した「ラスト・ストロー(The Last Straw)」だ。これらは共に、プラスチックの消費とその汚染について、地球が直面する環境問題を訴えている。

Floating MAiZE、The Last Straw
■9月18日(金)まで
■会場: Brookfield Place
 230 Vesey St.
bfplny.com


② Jean Shin, Floating MAiZE. Photo by Ryan Muir, courtesy of Brookfield Place


サンフランシスコを拠点に活動する彫刻家、ダヴィーナ・セモの「残響(Rever beration)」=写真③=が、ブルックリン・ブリッジ・パークにお目見えする。蛍光オレンジピンクに塗られた大きなブロンズの鐘5つは、実際に鳴らすことが可能。

その昔、鐘は時刻を告げ、時には注意を促すなど、地域住民との「コミュニケーション」を取る重要なツールだった。セモは、人々が鐘を鳴らすことによって生まれる周囲との「関係性」について、再考させようと試みる。

Reverberation
■8月13日(木)〜2021年4月18日
■会場: Brooklyn Bridge Park(ピア1)
www.brooklynbridgepark.org


③Davina Semo, Reverberation. Photo Courtesy of Public Art Fund, NY


ニューヨークを含むアメリカ国内6つの都市で展開されるパブリック・アート、「自由の鐘(Liberty Bell)」=写真④=。アーティストのナンシー・ベイカー・ケイヒルの作品で、拡張現実(AR)を利用した新しいパブリックアートだ。作品は「地理的」に配置され、無料のアプリ「4th Wall」を通してスマホ上で観賞する仕組み。

フィラデルフィアのひびが入った「リバティ・ベル」に触発され、自由と民主主義の原則に対しての懸念、構造的人種差別、不公平など、現在のアメリカが直面する現実を反映。海上に出現するアートワークは、自由、不正、不平等について考えさせようとする。

Liberty Bell
■会場: Rockaway Beach & The Rockaway Hotel
 ※ビューポイント、および他地域の場所はウェブサイトで確認を
■2021年7月4日まで
www.artproductionfund.org


④Nancy Baker Cahill, Liberty Bell. Photo by Neil Rasmus/BFA.com Courtesy of Art Production Fund, Shirley Chisholm Park


最後に身近なパブリック・アートを紹介。市内のバス停およそ500ヵ所と1700ヵ所以上のLinkNYCのデジタルスクリーンに、ニューヨークを拠点とするアーティスト50人の作品を表示する「アート・オン・グリッド(Art on the Grid)」=写真⑤=。「再接続と更新」をテーマに制作されたアートワークは、新しい形での「都市との関わり」を提案している。

Art on the Grid
■9月20日(日)まで
■NY市内のバス停およびLinkNYCのデジタルスクリーン
www.publicartfund.org


⑤Rafael Domenech, Peripheral poem 68. Courtesy of the artist. Photo: Nicholas Knight. Courtesy of Public Art Fund, NY


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