2019年8月6日号 Vol.355

1930年代から現代まで
没入型インタラクティブ展示
エンパイア・ステート・ビル


①ハインの写真にインスパイアされた「建設」セクション All photos © 2019 Evan Joseph, Empire State Building Observatory


②ビルの中を覗くキングコング!


③展望デッキを訪れた有名人のスナップショット


ニューヨークを代表する建造物、エンパイア・ステート・ビル(以下ESB)の2階に7月29日(月)、新しい展示スペースがオープンした。広さ約1万スクエアフィート、1億6500万ドルを費やしたプロジェクトで、ESB建設当時から現在までの歴史や物語を、没入型インタラクティブ展示で紹介する。

年間およそ400万人が訪れるというESB。ニューヨーク屈指の人気スポットのため、展望デッキへ登るエレベーターは常に長蛇の列。そんな長い待ち時間を、少しでも楽しく、有意義に過ごしてもらおうと企画された。展望デッキへ登る前の「予習」といったところだろう。

ESBの物語は1920年代から始まる。建築が始まった当初の街並みをとらえた写真、設計図などが来場者を出迎える。

建設中、高所で命綱なしに働く労働者たちをカメラに収めた写真家のルイス・ハイン。その写真にインスパイアを受けた「建設」セクション=写真①=では、当時の作業現場を再現。窓の外で働く人々の映像に加え、等身大の彫刻や桁(けた)を設置。建築中の様子を目の当たりにしていているような「現実感」を作り出す。

1931年4月11日に竣工、同年5月1日にオープンしたESB。それまで「世界一、高いビル」はクライスラー・ビルディングだったが、ESBがその名誉を奪った。「オープニング・デー」セクションでは、その日の興奮を伝えている。

「モダン・マーベル」セクションでは、ESBが取り組んできたサステナビリティ(環境や社会に優しく次世代のニーズを損なわないと同時に、現代のニーズを満たすこと)について解説。2007年に開始された改装により、年間38パーセントの省エネを実現、440万ドルが節約できると推定されている。

ESBの高さを可能にしたひとつの要因が、オーチス・エレベーター・カンパニーの画期的な技術だった。「オーチス・エレベーター」セクションでは、当時のエレベーターがどのように機能したか、また最新のエレベーターに搭載されているテクノロジーについても説明する。

「アーバン・キャンパス」セクションでは、ESBのテナントスペース、設備、ハイテク企業など、観光客が知らない「日常的なESB」を紹介。

「世界で最も有名なビル」セクションでは、ESBが舞台となった映画、コミック、テレビ番組、ビデオゲームなどを紹介。70以上のスクリーンに、ポップカルチャーとしてのESBが映像で表示される。

最も有名なESB映画は、ずばり「キングコング」だろう。1933年から制作された特撮映画は、空前の大ヒット。リメイクやコミック、ゲーム、ミュージカルなど様々なジャンルに発展。「キングコング」セクション=写真②=では、等身大(おそらく!)のコングの指が、壁を突き破り室内へ。窓の外には、こちらを覗き込んでいるキングコングと、ビンテージの戦闘機が空を飛んでいる様子が見える。

展示最後は、ESBの展望デッキを訪問した有名人を紹介する「セレブリティ」セレクション=写真③=(ここまで来れば、展望デッキへのエレベーターまであと少し!)。サッカーの王様のペレ、歌姫のマライア・キャリー、俳優のジョージ・タケイとウーピー・ゴールドバーグ、テニスプレーヤーのノヴァク・ジョコビッチ、ミッキーとミニーマウス、ミリオンズなどの記念画像がずらり。これから登る展望デッキへの期待を膨らませる。

会場には要所要所に8ヵ国語で書かれた解説パネルも設置されているが(日本語有り)、「言葉を使わずに物語を語りたかった」という制作チーム。説明なしで楽しめるよう工夫された空間で、ESBの歴史を「体験」したい。

The Empire State Building
■オープン:8:00am〜2:00am
■会場:The Empire State Building
 20 W. 34th St.
■料金(一例)メインデッキ(86階):
大人$38〜、子供$32〜、シニア$36〜
www.esbnyc.com


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