2021年8月20日号 Vol.404

バンクシーの合意なく企画・運営
「本物認定」100点以上を展示
「バンクシー:天才か反逆者か?」

展示風景(All photos courtesy of Banksy:Genius or Vandal?)

イギリスを拠点に活動を続けるストリート・アーティスト、バンクシーの作品を集めた展示「天才か反逆者か?」が、8月26日(木)から11月28日(日)まで開催される。会場は、ニューヨーク市内の「秘密の場所」で、8月16日時点で未発表。

本展は2018年、モスクワを皮切りに、サンクトペテルブルク、マドリード、香港、ミラノ、リスボン、ラスベガスなど、これまでに世界15都市を巡回。日本でも横浜、大阪、名古屋で開催され、現在は福岡で10月31日まで、東京で8月21日から12月5日まで行われる。



本名や素性を明かさず、1990年代前半から活動を続けるバンクシー。絵の原型となる型紙を作り、その上からペイントする「ステンシル・アート」が主な手法で、世界各地に出没、壁に無許可でグラフィティを描いてきた。いわゆる「落書き」であり、「違法」であるにも関わらず、社会問題をベースにした風刺や皮肉、メッセージ性が、高い評価を受けている。

①「ナパーム(Napalm)」

作品の多くは壁に直接描かれるため、現存するものは少ない。また同展は、バンクシー作品の公式認定機関「ペストコントロール」に許可を得ておらず、キュレーターが世界中の個人コレクターから借り受けた作品群を展示。とはいえ、すべて「本物」と認定されたもので、オリジナル・アートワークや写真、彫刻など100点以上が一堂に会する。さらにビデオやユニークなバーチャルリアリティ体験も用意されている。

ベトナム戦争で、米軍のナパーム弾を浴びて負傷した少女の写真(ピューリッツァー賞受賞作品)を用いた「ナパーム(Napalm)」=写真①=。笑顔のミッキーマウスとロナルド(マクドナルドのキャラクター)が、全裸で泣きながら逃げる少女の手を引いている構図で、反戦、児童労働や搾取、アメリカの資本主義などを皮肉っている。

草原で狩りをする人々が、スーパーマーケットの買い物カート(トロリー)を狙う「トロリー・ハンターズ(Trolley Hunters)」=写真②=。直立歩行を初めた人類は「消費主義」に惹かれ続け、現代人は食料を自力で手に入れることができないことに対する皮肉を表現しているという。

ハート型の風船に手を伸ばす「風船と少女(Girl with Balloon)」=表紙写真=は、201 8年、「サザビーズ」のオークションに登場し、140万ドル(約1億5500万円)で落札された直後、来場者の目前で下半分が自動的に細断された「シュレッダー事件」で有名になった。サザビーズは、「史上初、オークション最中にライブで作品が制作された」とコメントを発表。作品名「愛はゴミ箱の中に(Love Is in the Bin)」と名付けられた。


②「トロリー・ハンターズ(Trolley Hunters)」

入場は時間予約制で、コロナ感染予防としてソーシャルディスタンシングの確保と、マスク着用が義務付けられている。所要時間は60分から80分。チケット購入は専用ウェブサイト(別記)からのみで、モバイルアプリに保存し提示。

バンクシーの合意なく企画・運営されている本展。本人の「ゲリラ活動」とは対照的であるものの、ファンは大喜びだ。これまでに300万人以上が来場し、NY展の8月分チケットも完売している。

Banksy:Genius or Vandal?
■8月26日(木)〜11月28日(日)
■会場:NY市内(8月16日時点で未発表)
■大人$29.50〜、4-12歳$19.90〜、学生/65歳以上$22.10〜
ファミリーパス(大人2人、子供2人)$78.80〜
※VIPチケットも有り
https://banksyexpo.com/new-york


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