2019年8月23日号 Vol.356

盆踊りの起源は平安時代

平安時代に起源を持つという盆踊りは、「お盆に現世へ戻ってきた先祖の霊を慰める」という意味合いがある。鎌倉時代、日本全国へ拡散した盆踊りは、地域の「民俗芸能」となり、「娯楽」へと発展。今では夏の風物詩として、欠かせない習慣になっている。

日本文化の体験促す

「JPA日本三大盆踊りフェスティバル」では、老若男女を問わず、誰でも参加可能な「体験型」のプログラムを用意。それぞれの盆踊りの詳細を口頭で説明した上で実演する。参加者自らが日本文化を満喫できるよう工夫した。

ゴミの対応

日本人が持つ「ゴミに対する意識の高さ」を紹介するため、JPAが用意した分解性のあるゴミ袋を、屋台が食品と共に提供する。各自が責任を持ってゴミを捨てる行為が、ゴミの散乱を防ぐと同時に、環境保護の大切さを訴える。



西馬音内盆踊り(秋田県)
継続と洗練、730年の歴史


洗練された流麗優雅な踊り振り

優雅でしなやかな踊りが特徴の西馬音内(にしもない)盆踊り。文化庁が公開するデータベースには、「洗練された流麗優雅な踊り振りに、すぐれた芸態を示し、盆踊りの一典型としての価値が高い」と評価されている。何百年もの間に、踊りの形態的な変化が見られるものの、最終的には京都出身の踊り手が振り付けをまとめたと言われている。東北と京都は日本海を通じて往来があり、多くの京都人が東北に住んでいた。そんな「京都文化」の影響を感じる踊りだと言えるだろう。
衣装の特徴は、端縫(はぬい)と呼ばれる端布(はぎれ)を縫い合わせた着物と編み笠、または木綿の藍染の浴衣と彦三頭巾という出で立ち。衣装は自前で、ひとりひとりの色や柄は異なるものの、絹地のつぎはぎの配置に一定のルールがあるため、全体的には統一感がある。
盆踊りの輪で踊っている時や輪の中を通る時は、編み笠や頭巾で顔を隠し、見せてはいけないというルールがある。「盆に精霊とともに踊る」という供養踊りの伝承の面影を、現在に伝えている。

山本正俊
NY秋田県人会・会長

秋田県人会では毎年「利き酒会」を行っていますが、常に思うのは日本の伝統の重みです。西馬音内盆踊り(にしもないぼんおどり)は730年という歴史を持ち、盆踊りの重要無形民俗文化財の第一号。730年前には小さな輪から始まったはず。それが今や10万人の観光客が見にくる盆踊りとなったのです。継続と洗練。そんな秋田の盆踊りを是非ご覧ください。

郡上踊り(岐阜県)
「観る」踊りではなく「踊る」踊り


踊りの振付けは日常的な事柄を描写

郡上(ぐじょう)踊りは、盆期間を挟んだ2ヵ月間、町のそれぞれの場所に開催日が割当られ、毎週末、盆踊りが行われる。
江戸時代、城主が士農工商の融和を図るため、藩内の村々で踊られていた盆踊りを城下に集め、「盆の4日間は身分の隔てなく無礼講で踊るがよい」と奨励したことで、盛んになったという。この事から、郡上踊りは「観る」踊りではなく、「踊る」踊りとしてPRされ、地元民だけでなく、観光客も一緒になって踊ることができる無形文化財となった。
基本的な衣装は浴衣だが、何を着て踊ってもお咎めはない。踊りは、日常的な事柄を描写した振り付けで、比較的簡単に楽しく踊ることができる。
以前は「歌」だけだったが、今では大小太鼓・笛・三味線・拍子木の伴奏にあわせて踊る。スピーディーな踊りもあれば、ゆっくりとした演目もあり、バラエティーに富んでいる。
曲目は全10曲。今回のイベントでは、その中でも有名な「かわさき」と「はるこま」を、生演奏で踊る。

高橋愛一郎
NY岐阜県人会・会長

この度、秋田県、徳島県の踊りと並び、岐阜を代表する「郡上踊り」として参加させて頂ける機会を得て、非常に光栄です。まさかここニューヨークで、郷土の「盆踊り」を、皆さんと楽しむ日が来ようとは思ってみませんでした。感無量です。子供の頃の夏休みを思い出すイベントなので、皆さんにも日本文化に触れ、ぜひ楽しんで頂ければと思います。

阿波踊り(徳島県)
「前進」する踊り方は地形に由来


1人の女性が踊りを洗練させた

現在、阿波踊りは日本各地で行われているが、発祥は「阿波の国」と呼ばれた徳島県。徳島県徳島市の「徳島市阿波おどり」は毎年130万人以上の人出がある。有名な阿波踊りだが、それが「盆踊り」であるという事を知らない人も少なからず存在する。
阿波踊りは、盆踊りで見られる櫓(やぐら)やかがり火を囲み、円になって踊るというフォームではなく、団体で前進する。実はこの特徴、徳島市の地形と深い繋がりがあるという。
徳島市は、別名「暴れ川」とも呼ばれる「吉野川」から運ばれてきた土砂でできた島の集まりで、市内には多くの川が網の目のように流れている。江戸時代、川に囲まれた土地は狭く、輪になって盆踊りを踊る広場がなかった。それでも盆踊りを踊りたい人々が、細い道を前に進んで踊り出したのが、現在の阿波踊りの原型だといわれている。また、手を高くあげ、つま先立ちで踊る独特のフォームは、ほんの30年ほど前(1983年)に、一人の女性が踊りを洗練させたことから始まったとされている。

西谷ハリー
ニューヨーク徳島県人会代表

日本三大盆踊りのニューヨークでの挙行、大変な快挙と存じ、誠におめでとうございます。私共も「阿波踊り」を通じて微力ながら協力させて頂き、大変嬉しく思います。この企画推進のお陰で、阿波踊り「ニューヨーク連」の発足に繋がり、厚くお礼申し上げますと共に、今後とも日本の郷土芸能の紹介に努めます。JPA様の益々のご活躍を祈念致します。



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